こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
息苦しさや咳が続くとき、「喘息かどうか調べるにはどんな検査をするの?」と気になる方は多いと思います。本記事では、役割の異なる次の4つの検査を取り上げます。モストグラフ・スパイロメトリー・FeNO(吐いた息に含まれる一酸化窒素の濃度を測る検査)・胸部CT(X線で肺や気道の断面を写す画像検査)です。各検査が何を確かめるものか、結果が正常でも喘息を否定できない場合があること、診察で何を伝えるべきかを解説します。名取市・仙台周辺で暮らす患者さんとご家族向けに、喘息の検査の役割を整理して説明します。
喘息の検査とは?モストグラフとスパイロの違いは何?
喘息の検査は、1つで確定するものではなく、検査ごとに確かめる点が違います。喘息は、気道に慢性的な炎症が起きやすい呼吸器の病気です。咳や息苦しさが出たり引いたりし、人によって現れ方が異なります[1]。診断では、症状の経過に加えて、吐く息の流れが変化することを検査で確かめる必要があります。これは2026年の国際的な喘息指針で示されています[1]。
スパイロメトリー(強く息を吐いたときの空気の量と速さを測る検査)は、診断の中心です。モストグラフは安静呼吸中の呼吸器全体の抵抗などを、FeNO検査は気道の炎症の一部の目安を見ます。胸部CTは気道や肺の構造や、ほかの病気の有無を見る検査です。欧州呼吸器学会(ERS)の成人向け指針でも、まずスパイロメトリーから始める流れが示されています(2022年)[2]。国や医療機関によって方針が異なります。
| 検査の名前 | 主に分かること | 体への負担 |
|---|---|---|
| スパイロメトリー | 強く息を吐いたときの空気の量と速さ | 強く息を吐く労力が必要 |
| モストグラフ | 安静呼吸中の空気の通りにくさ(気道の抵抗)や、肺や胸のかたさなど | 普通に呼吸するだけ |
| FeNO検査 | アレルギーなどに関わる気道の炎症の一部の目安 | ゆっくり息を吐くだけ |
| 胸部CT | 肺や気道の構造、ほかの病気の有無 | X線による被ばくがあり、撮影時に息止めが必要 |

院長蒲生「どの検査が一番すごい」ではなく、検査ごとに見たいものが違う、と覚えておくと結果の話が聞きやすくなりますよ。
検査を勧められたら、その検査で何を確かめるのかを尋ねてみてください。
モストグラフとはどんな検査?何が分かる?
モストグラフは、安静に呼吸しているだけで測れるオシロメトリー(呼吸に小さな圧のゆらぎを加えて調べる検査)です[3][4]。胸郭(肋骨などで囲まれた胸のかご)や上気道(口やのどなど、胸の外にある空気の通り道)を含む、呼吸器系全体の力学的な性質をまとめて測ります[4]。空気の通りにくさ(気道の抵抗)に加え、肺や胸の広がりにくさや空気の動きのしにくさ(慣性)も見ます。マウスピースをくわえて普通に呼吸するだけで、強く息を吐く必要がありません。気道の閉塞部位を直接写す画像検査ではなく、末梢(奥の細い部分)の気道を直接観察する検査でもありません。
測定値は気道だけでなく肺や胸郭、上気道の影響も受けるため、測定の質や機器の違い、基準値の扱いも考慮が必要です[3][4]。単独で喘息を確定診断したり、重症度を判定したりする万能な検査ではありません。実際、基準値から外れた項目の数だけでは、喘息の人と、呼吸器の病気がない人をうまく区別できませんでした(2023年)[3]。深層学習(大量のデータから特徴を自分で学び取る技術)で複数の測定値をまとめて判断した報告では、喘息の人と呼吸器の病気がない人を約78%の精度で区別できました(2023年)[3]。これは研究の中での結果であり、日常の診察で同じ精度が出るとは限りません。



マウスピースをくわえて普通に呼吸するだけなので、小さなお子さんや強く息を吐くのがつらい方にも負担の少ない検査です。
モストグラフを受けるときは、当日の咳や息苦しさの有無を職員に伝え、結果を聞くときは数値が症状とどう関係するかを尋ねてください。
スパイロメトリー(呼吸機能検査)は喘息診断に必要か?
スパイロメトリーは喘息の診断で中心になる検査です。強く息を吸って思い切り吐き切ったときの、空気の量と速さを測ります。喘息では気道が狭くなって空気が吐きにくくなるため、吐く速さの指標が低下していることがあります。診断の助けとして、気管支拡張薬(狭くなった気道を広げる薬)を吸う前後で検査を比べる方法が、国際的な喘息指針で示されています(2026年)[1]。
欧州呼吸器学会(ERS)の成人向け指針では、気道の閉塞が見つかれば拡張薬を吸った前後の変化を確認する流れが示されています(2022年)[2]。ただし、検査の時点で気道が狭くなっていなければ正常な値になることもあり、喘息でも一度の検査で異常が見つかるとは限りません。その場合は症状のある時期に再検査したり、別の検査を組み合わせたりします[1]。
| 場面 | スパイロメトリーの意味 |
|---|---|
| 喘息かどうか調べるとき | 空気の量と速さの低下と、薬で改善するかを確かめる |
| 治療中の経過を見るとき | 治療開始時やその後定期的に肺の機能を確認する |
| 正常だった場合 | 喘息を否定できないので、症状に応じて再検査を考える |



強く息を吐く検査は少し疲れますが、吐き出す空気の量や速さのパターンこそが大事な情報になります。当日の体調や使っている吸入薬を職員に伝えると、結果を正しく読み取りやすくなりますよ。
スパイロメトリーを受ける予定があるときは、検査当日に体調(風邪の有無など)を職員に伝え、指示された準備があれば守って臨んでください。
FeNO検査(呼気一酸化窒素)は喘息の何を見る?
FeNO検査は、吐いた息に含まれる一酸化窒素の濃度を測る検査です。2型炎症(アレルギー反応などで起こる特定の種類の気道の炎症)の一側面を見る目安になります。ゆっくり息を吐くだけで終わる、負担の少ない検査です。喘息の典型的な症状がある人で、スパイロメトリーやピークフロー(息を吐く速さの最大値)で確認できない、または使えないときに、FeNOが高めなら診断を支える情報になります[1]。
FeNOが高めとされる目安は、成人・思春期で50ppb超、小児で35ppb超です(2026年)[1]。ppbはごく薄い濃度を表す単位です。ただし、喘息以外の病気でも高くなることがあります。値が低くても喘息を否定できるわけではありません。この数値は国際的な指針で示された補助的な目安です。国内の診断基準や医療機関の運用とは異なる場合があります。
FeNOの値は、性別や年齢、喫煙の有無、測定する時間帯などによっても変わります[1]。この検査は気道の炎症の一側面の目安であり、これだけで喘息の診断や重症度を決めるものではありません。スパイロメトリーで異常が見つからなかったときや、診断を確かめたいときに組み合わせて使われる位置づけです[1][2]。



「炎症の目安が高い=喘息」「低い=喘息ではない」ではない、と覚えておくと、結果の数字に一喜一憂せずに済みます。
FeNO検査を受けるときは、喫煙の有無など値に影響する情報を伝えられるよう、事前にメモしておいてください。
胸部CTは喘息の検査として必要か?
胸部CTは、喘息そのものの診断というより、肺の構造の確認やほかの病気を探すために使われる検査です。X線を使って肺や気道の断面を詳しく写します。CTが正常だからといって喘息を否定できるわけではなく、また喘息の疑いがある人全員にCTが必要なわけではありません。
喘息の診断で中心になるのは、症状の経過とスパイロメトリーなどの機能の検査です[1][2]。CTは、症状の原因が喘息だけとは言い切れないときなどに、ほかの病気を調べるために役立つことがあります。つまり、CTは「喘息の検査」というより「ほかの原因を見つけるための検査」と考えると分かりやすいでしょう。
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| CTが正常なら喘息ではない? | いいえ。喘息は気道の炎症や狭窄(気道が狭くなること)による機能障害が主な病気で、CT画像に異常が見つかるとは限らないため、CT正常でも喘息は否定できません |
| 喘息の疑いなら全員CTを受ける? | いいえ。必要かどうかは症状や経過に応じて医師が判断します |
| CTで喘息の重症度が分かる? | いいえ。重症度は、治療を続けたうえで、症状や発作を抑えるのにどの程度の治療が必要かで判断されます |



「CTで異常がなかったのに喘息?」と不思議に思う方は多いです。見る対象が違う、と押さえておくと納得しやすいですよ。
CTを勧められたときは、喘息以外のどんな病気を調べるための撮影かを尋ねてみてください。
喘息の検査結果はどう受け止める?受診で何を伝える?
喘息の検査結果は、1つの数値だけでなく症状の経過と合わせて受け止めるのが大切です。受診のときは、症状のパターンと環境、これまでの検査結果を具体的に伝えてください。
息苦しさが非常に強く、話せない・水を飲めない・横になれない、意識がぼんやりする、唇が青い、といった場合は、命に関わる可能性のある重篤なサインです(2026年)[1]。その場合は119番に電話するなどして、検査を待たずに救急を要請してください。
受診のときに伝えると役立つ情報は、症状が出るタイミングです。夜間や明け方、運動、寒い日、風邪のときなどを思い出してください。症状が続いている期間も伝えましょう。たばこやペットなどの環境、今までに受けた検査とその結果も伝えるとよいでしょう。喘息の診断と治療では、吸入薬の使い方や使い忘れがないかの確認も大切な評価項目とされています(2026年)[1]。すでに吸入ステロイド(気道の炎症を抑える吸い薬)を使っていると、検査結果が正常に近く出ることがあるため、使っている薬は必ず伝えてください[1][2]。
受けられる検査は医療機関によって異なるため、事前に電話で確認してください。
| 診察で伝えるとよいこと | 例 |
|---|---|
| 症状のパターン | 朝方・夜・運動後など、いつ悪くなるか |
| 期間と変化 | いつから続き、良くなったり悪くなったりするか |
| 環境の特徴 | たばこ、ペット、ほこり、職場や学校の環境 |
| 使っている薬 | 吸入薬の名前、使っている頻度、使い忘れ |
| これまでの検査 | 受けた検査の種類と、言われた結果の内容 |



検査の数値は「点数」ではなく、あなたの症状の話と合わせて初めて意味を持つものです。メモを持参すると話がスムーズです。
次回の受診前に、症状のパターンと気になる検査結果をメモして持参し、診察で伝えてみてください。
まとめ
- 喘息の検査は1つで確定するものではなく、検査ごとに確かめる点が違います[1]。
- スパイロメトリーは診断の中心で、気管支拡張薬の前後で比べる方法が推奨されています[1][2]。
- モストグラフは安静に呼吸するだけで測れるオシロメトリーで、呼吸器全体の抵抗などを調べられますが、単独での確定診断や重症度判定ができる万能な検査ではありません[3][4]。
- FeNOは2型炎症の一側面の目安、胸部CTは構造とほかの病気の確認であり、CT正常でも喘息は否定できず、全員にCTが必要なわけでもありません。
- 話せない・水を飲めない・横になれない、意識がぼんやりする、唇が青いなどの重篤なサインがあれば、119番に電話するなどして検査を待たずに救急を要請してください。
- 検査結果は症状の経過と合わせて解釈し、受診時には症状のパターンと環境を具体的に伝えましょう。
よくある質問
- モストグラフは痛いですか?小さい子でも受けられますか?
針を使わないため、痛みはありません。息止めや強く吐く動作も要らないので、小さなお子さんにも負担が少ない検査です。受けられる年齢や機器は医療機関によって異なるので、受診前に確認してください。結果の数値の意味は、症状と合わせて医師に尋ねてください。
- スパイロメトリーで正常だったら喘息ではないということですか?
いいえ、喘息は症状が出たり引いたりする病気なので、検査の時点で気道が狭くなっていなければ正常な値になることがあります。その場合は症状のある時期に再検査したり、FeNO検査など別の検査を組み合わせたりして判断します。症状の経過を医師に詳しく伝えることが大切です。
- 喘息の検査にCTは必要ですか?
喘息の診断の中心は症状とスパイロメトリーなどの機能検査で、全員にCTが必要なわけではありません。CTは肺の構造を確認したり、ほかの病気を調べたりするときに役立つことがあります。CTが正常でも喘息は否定できないため、必要かどうかは症状に応じて医師が判断します。
- 検査の数値が基準から外れていたら、すぐ治療が必要ですか?
ふつうは1つの数値だけでなく、症状の経過と組み合わせて判断します。ただし、話せない・水を飲めない・横になれない、意識がぼんやりする、唇が青いなどの重篤なサインがあるときは、数値にかかわらず119番に電話するなどして救急を要請してください。気になる数値があれば、その意味を診察で尋ねてみてください。
【免責事項】
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、個々の患者さまの病態や背景によって適切な対応は異なります。
症状にご不安がある場合は、かかりつけ医や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
- Global Initiative for Asthma. “2026 Summary Guide for Asthma Management and Prevention.” 2026. https://ginasthma.org/wp-content/uploads/2026/07/GINA-Summary-Guide-2026-WEB-WMS.pdf
- Louis R, Satia I, Ojanguren I, et al. “European Respiratory Society guidelines for the diagnosis of asthma in adults.” The European respiratory journal, 2022. DOI: 10.1183/13993003.01585-2021 PMID: 35169025
- Funaita C, Furuie W, Koike F, et al. “Pattern recognition of forced oscillation technique measurement results using deep learning can identify asthmatic patients more accurately than setting reference ranges.” Scientific reports, 2023. DOI: 10.1038/s41598-023-48042-3 PMID: 38062060
- King GG, Bates J, Berger KI, et al. “Technical standards for respiratory oscillometry.” The European respiratory journal, 2020. DOI: 10.1183/13993003.00753-2019 PMID: 31772002


