こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
咳や息苦しさが続くとき、「喘息かどうか」を確かめるために呼気の一酸化窒素(FeNO)検査を受けることがあります。本記事では、FeNOが低くても喘息を否定できるのか、検査値で何が分かり何が分からないのかを解説します。検査結果を受け取ったときの判断の助けになれば幸いです。名取市・仙台周辺で検査を予定している方や、結果について不安がある患者ご家族向けの記事です。
FeNO検査とは?呼気の一酸化窒素で何を調べるのか

FeNO検査とは、息を吐いた空気の一酸化窒素の濃度を測る検査で、気道(空気の通り道)の炎症の一側面を知るためのものです。FeNO(呼気一酸化窒素)は、特に「2型炎症」と呼ばれる気道の炎症と関連して高くなりやすいとされます[1]。2型炎症は、好酸球(アレルギーや喘息に関わる白血球の一種)などが関わる気道の炎症のタイプです。検査は息を吐くだけで済み、体への負担が少ないのが特徴です。
ただし、FeNOは気道の炎症の一面を見る指標であり、喘息そのものを診断する単独の検査ではありません。喘息の診断では、症状の経過に加えて、呼吸機能検査(スパイロメトリー。息を力強く吐いたときの空気の量と速さを測る検査)などで気道の通り具合を確かめることが大切です[1]。検査を受けるときは、なぜFeNOを測るのか(何を確かめたいのか)を医師に聞いておくと結果を理解しやすくなります。
院長蒲生息を吐くだけの検査なので、体への負担が少ないのは安心ですね。
FeNOが低くても喘息の可能性はある?低い値の意味
FeNO(呼気一酸化窒素)が低くても、喘息の可能性は消えません。国際的な喘息の指針(GINA 2026)でも、FeNOが低い値なら喘息を否定できないと明記されています[1]。米国胸部学会(ATS)の2011年の臨床実践ガイドライン(専門家の指針)では、大人で25ppb未満、子どもで20ppb未満を低値としています[2]。ppbは濃度の単位で、数値が大きいほど一酸化窒素が多いことを示します。国や医療機関によって目安が異なります。
低値は、現在、好酸球による気道の炎症が目立ちにくいことを示します[2]。喘息は好酸球性の炎症を伴うことが多いものの、いつもそうとは限らず、喘息と好酸球性炎症は同じものではありません[2]。喘息には複数の炎症タイプがあります。好酸球が関わる好酸球性、好中球(細菌と戦う白血球の一種)が主の好中球性、混合型、顆粒球(白血球の一種で、好酸球や好中球を含む)が乏しい型などがあります[2]。好中球性など、好酸球性の炎症が目立たない型では、FeNOが低くなることがあります[2]。低FeNOだけで、Th1型(免疫の分類に使われる用語の一つ)など特定の型と決めることはできません。また2型炎症は、IgE(アレルギー反応に関わる抗体の一種)が関わるアレルギーと同じ意味ではありません。
低値は、ステロイド治療の効果が出にくい可能性の手がかりにはなりますが、「喘息ではない」という証明にはなりません[2]。この読み方は主に、まだ治療を受けていない症状のある人を対象にしたものです。吸入ステロイド薬(気道の炎症を抑えるために吸い込んで使う薬)やたばこでも、FeNOは低めに出ることがあります[2]。治療中で症状が落ち着いている人の低値は、吸入薬がきちんと使えていることを示す場合もあります[2]。
低値のときは、症状の経過と呼吸機能検査で気道の通り具合の変動を確かめることが大切です[1]。検査時に使っている吸入薬と喫煙の有無を伝え、処方薬は数値だけで自己判断でやめず診察で相談しましょう。



数値の意味は、診察で遠慮なく聞いてくださいね。
FeNOが高いときに分かることは?数値の目安
FeNO(呼気一酸化窒素)の高値は、典型的な喘息症状がある場合に、2型炎症が関わる喘息の可能性を示す手がかりになります[1]。GINA 2026では、典型的な喘息症状がある人で、大人・思春期で50ppb超、子どもで35ppb超の高値は2型喘息の診断の根拠の一つになるとされています[1]。FeNOの高値は喘息以外の状態でも起こるため、喘息に特有の数値ではありません[1]。
表のうち、低い値と中間の値は米国胸部学会(ATS)2011年の指針、高い値はGINA 2026の目安によるものです[1][2]。国や医療機関によって目安が異なります。
| FeNOの値の目安(ATS 2011年・GINA 2026) | 意味すること |
|---|---|
| 大人25ppb未満・子ども20ppb未満 | 現在、好酸球による気道の炎症が目立ちにくい。ただし喘息を否定できない[2] |
| 大人25〜50ppb・子ども20〜35ppb | 症状やほかの検査の結果と合わせて慎重に判断する[2] |
| 大人50ppb超・子ども35ppb超 | 典型的な症状がある場合に、2型炎症が関わる喘息の可能性を示す手がかりになる。喘息以外の原因もある[1] |
治療中なのにFeNOが高い値が続くときは、吸入薬を続けて使えているか、吸い方が合っているかを診察で一緒に確認しましょう[1][2]。



数値はあくまで手がかり。症状の変化を一緒に観察していくのがポイントです。
FeNOと呼吸機能検査は何が違う?それぞれの役割
FeNOと呼吸機能検査は、見ているものが違います。FeNOは気道の「炎症」の一側面を反映します。スパイロメトリーなどの呼吸機能検査は、吐く空気の量と速さを測り、気道の通りやすさを評価する検査です[1]。FeNOと呼吸機能検査は別の軸なので、片方が正常でももう片方に異常が出ることがあります。
喘息の診断では、症状の特徴(夜間や運動・冷気・ウイルス感染で悪化しやすいなど)に加え、気道の通り具合の変動を客観的に確かめることが重視されます[1]。FeNOは補助として使われる位置づけです。
| 検査 | 見ているもの |
|---|---|
| FeNO(呼気一酸化窒素) | 気道の炎症の一側面(特に2型炎症との関連)[1] |
| スパイロメトリー(呼吸機能検査) | 吐き出す空気の量・速さと気道の通りやすさ[1] |
FeNOと呼吸機能検査の組み合わせについて不安があれば、診察のときに「それぞれの検査で何を確かめていますか」と尋ねてみてください。



「炎症」と「空気の通りやすさ」は別物。二つの検査は補い合う関係と覚えておくと良いですよ。
FeNOの値に影響するものは?ステロイド・喫煙・アトピー
FeNO(呼気一酸化窒素)の値は、喘息以外の要因でも変わります。吸入ステロイド薬はFeNOを下げる方向に働くため、喘息かどうかを調べる目的では、治療中の人の値は低めに出ることがあります[2]。たばこを吸う人もFeNOが低めに出やすく、アトピー(アレルギー体質)のある人は高めに出やすいことが知られています[2]。FeNOは性別や年齢でも大きく変わります[1]。
| 要因 | FeNOへの影響 |
|---|---|
| 吸入ステロイド薬の使用 | 下がる方向に働く[2] |
| 喫煙 | 低めに出やすい[2] |
| アトピー(アレルギー体質) | 高めに出やすい[2] |
| 性別・年齢・測定機器・測定場所 | 値が変動する[1] |
受診前には、使っている吸入薬・飲み薬の名前と喫煙の有無をメモして持参しましょう。



薬やたばこの影響で数値は変わります。受診前に服用中の薬を整理しておきましょう。
FeNOの検査条件は?測る時間や機器で変わる
FeNO(呼気一酸化窒素)の値は、測る条件によって大きく変わります。測定機器や測定する施設によっても変動します[1]。時間帯でも値が変わり、FeNOは早朝に低くなります[1]。前回とできるだけ同じ時間帯で測るよう、医療機関に相談しましょう。



数値は測った条件とセットで読むもの。次に測るときは、時間帯を相談しておくと安心です。
FeNO検査の結果を受け取ったら?家族が見るポイント
FeNO検査の数値は、まず医師にその意味を尋ねるところから始めましょう。FeNO(呼気一酸化窒素)は炎症の一側面を示す補助指標で、単独で喘息の診断や治療変更を決めるものではないからです[1][2]。
ご家族が家庭で見てほしいのは、数値よりも症状の変化です。息苦しさで話せない、水が飲めない、横になれないといったサインがあれば、すぐに救急車(119番)を呼んでください[1]。唇が紫色、ぼんやりしている場合も同様です[1]。
咳や息苦しさが急に悪化したときや、いつもの吸入薬で良くならないときは、夜間でも医療機関に連絡しましょう[1]。
夜間や早朝の咳、運動や冷たい空気で悪化する息苦しさ、風邪で長引く咳があれば記録し、次の診察で伝えましょう。喘息の診断がついている場合は、悪化したときの対応を医師と決めておく計画(喘息アクションプラン)に従いましょう[1]。
診察で伝えるとよいのは、症状が出る場面と頻度、使っている薬、たばこ環境の有無、アレルギーの既往です。症状メモと服用中の薬を準備して受診しましょう。



「いつ・どんなときに症状が出るか」のメモ一枚が、診察をぐっと助けてくれます。
まとめ
FeNO(呼気一酸化窒素)は、気道の炎症、特に2型炎症の一側面を知るための補助検査です。大人・思春期で50ppb超、子どもで35ppb超(GINA 2026)の高値は、典型的な症状がある場合に2型喘息の可能性を示す手がかりになります[1]。ただし高値は喘息特有の数値ではなく[1]、低値でも喘息を否定できません[1][2]。吸入ステロイド薬・喫煙・アトピーなどでも値が変わります[1][2]。数値は症状の経過や呼吸機能検査と合わせて医師が総合的に解釈します。気になる数値が続くときは、症状の記録を持って診察で相談しましょう。
よくある質問
- FeNOが低ければ喘息ではないと断定できますか?
断定はできません。低値は現在、好酸球による気道の炎症が目立ちにくい目安ですが、喘息には炎症のタイプが異なるものもあり、低値でも喘息の可能性は残ります[1][2]。症状の様子やほかの検査の結果も大切にしてください。
- FeNOが高いという結果は、喘息の診断と同じですか?
同じではありません。典型的な喘息症状がある場合、大人・思春期で50ppb超、子どもで35ppb超(GINA 2026)の高値は2型喘息の診断の根拠の一つになります[1]。ただし喘息以外の状態でも高値になることがあります[1]。診断は症状と他の検査を含めて総合的に行われます。
- 吸入ステロイド薬を使っていますが、FeNO検査の前に伝えるべきことはありますか?
使っている薬は必ず伝えてください。吸入ステロイド薬はFeNOを下げる方向に働くため、治療中の数値の解釈に影響します[2]。喫煙の有無やアレルギーの既往もあわせて伝えると、数値を正しく読み取る助けになります。
- 子どもがFeNO検査を受けられますか?
FeNOは息を吐くだけで測る検査で、子どもでも体への負担が少ない方法です[2]。米国胸部学会(ATS)2011年の指針では、子どもの低値は20ppb未満、高値は35ppb超です[2]。12歳未満では年齢による違いも考えて読みます[2]。検査を実施しているかどうかは、受診予定の医療機関で確認してください。
【免責事項】
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、個々の患者さまの病態や背景によって適切な対応は異なります。
症状にご不安がある場合は、かかりつけ医や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
- Global Initiative for Asthma. “2026 Summary Guide for Asthma Management and Prevention.” 2026. https://ginasthma.org/wp-content/uploads/2026/07/GINA-Summary-Guide-2026-WEB-WMS.pdf
- Dweik RA, et al. “An Official ATS Clinical Practice Guideline: Interpretation of Exhaled Nitric Oxide Levels (FENO) for Clinical Applications.” Am J Respir Crit Care Med, 2011. DOI: 10.1164/rccm.9120-11ST PMID: 21885636


