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当院のAGA(男性型脱毛症)治療は安全性と効果の両立を目指します

ミノキシジル・プロペシア・ザガーロ・ケトコナゾールシャンプー

AGAは、日本皮膚科学会が出している男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版​1​ の推奨に沿って診療をする限り、重篤な副作用は起こりにくいです。薄毛で悩むくらいであれば早く治療を始めていただいたほうがQOL(生活の質)は高まると思います。

しかし、「マネーファースト」の一部のAGA専門クリニックでは、ガイドラインで非推奨の治療を半ば公然と行っており、循環器(心臓や血管)に副作用が出てしまい大きなトラブルになることもありますので注意が必要です。

患者さんが日本刀を持ってクリニックに乗り込んで警察に逮捕された事案も実際に起こっています

ミノキシジル経口薬は処方いたしません

当院ではAGA専門クリニックで処方されている、通称「ミノタブ」と呼ばれる飲み薬タイプのミノキシジルタブレット剤は処方しておりません。

ミノキシジルタブレット
ミノキシジルタブレット剤

この薬は、ファイザー製薬のLoniten(ロニテン)という血管拡張薬と同一成分で、本来の目的は高血圧患者に対する降圧効果を狙ったものです。

臨床試験で高血圧患者の髪の毛を含めた全身の毛が濃くなるという副作用が確認され、「発毛治療に使えるのでは?」と研究が始まりました。

こういった、副作用を逆手にとって治療に使用するという発想自体は医師としてとても興味深いと感じるのですが、問題なのはその安全性に関してです。

ミノキシジルの副作用の代表的なものとして、

・動悸がする
・息切れする
・血圧が下がりフラフラする
・四肢や顔が浮腫(むく)む
・胸が痛い
→ ひいては、不整脈、心筋梗塞、肥大型心筋症、心不全といった命に関わる状況にまで進展し得る

といった、心臓に関連したものが主です。こういった副作用は、非常にざっくり言うと

全身の血管が拡張し、血管の内腔の容積が増える

心臓から見た時には、血液を満たしてあげなければならない空間が増える

心臓の仕事量が増える
*血管抵抗が下がりますので、そこまで単純には言えませんが、大筋の理解としてはこのような感じで良いと考えます

というような理由で、心臓にかかる負担が増える事などで起こります。

とは言え、多くの人間はいつも心臓の機能ギリギリいっぱいの状況で生きている訳ではなく、予備能などと言ってある程度の負担増には代償が効くようになっていますので、ミノキシジルを服用した人全員が、すぐにこういった副作用を来すという事では必ずしもありません。

しかし、もともと心臓の機能に余裕がない方はやはりこのような薬剤の内服はリスクが高いものと考えられますし、また内服開始時には心機能に問題がない健康な方でも、長期の内服によって心臓に負担がかかり続け、上記のような副作用に陥り健康を害する可能性は決して甘く見てはいけないものと考えます。

内服を中断すると髪はもとに戻ってしまいますので、髪を維持するに半永久的に飲み続ける他ありませんが、年単位でのミノキシジル長期内服の安全性を検討した論文は探した限り見つかりません。

そういうわけで、

  • 発毛剤として頭皮にふりかけるのはOK
  • 発毛目的で飲むのはNG

日本のAGA診療ガイドライン​1​にもこのように記載されています(はっきりと、ミノキシジル内服は推奨しない・・・、と言い切りの形で記述されています)。

当院でもミノキシジルタブレットの処方は行いません。

どうしでもミノキシジルタブレットを飲みたい方へ

「大きな副作用が出たとしても薄毛の悩みから解放されるならリスクは承知でミノキシジルタブレットを飲みたい」

このような希望をされる方もいらっしゃると思います。そのようなお気持ちで、いわゆるAGA専門クリニックへ通われる方も大勢いらっしゃいます(ミノキシジル内服薬を処方されるところが殆どです)。

結局のところAGA治療は保険診療ではありませんので、効果とリスクに関してきちんと説明を受け、自分でしっかりと理解し、納得の上で内服する事を選択されるのであれば、誰もそれを禁止する事は出来ません。

ただし、基本的に全国でチェーン展開しているようなAGA専門クリニックは回転重視、かつ可能な限りコストを削減し利益を最大化する戦略を採っていますので、こういった重要な説明に関しても基本的には医師などの国家資格所持者ではなく、事務スタッフがその多くを行います。

一人ひとりのスタッフの方はもちろん一生懸命仕事をされていると思いますが、マニュアル通り以上の知識や経験は持っておりませんので、こういったリスクなどに関して現実感を持った説明を出来ているかと考えると、やはり不十分だと考えざるを得ません。

そういった説明で、皆さん本当にご自身でしっかりと理解し、納得の上で治療を受けられておりますでしょうか。今は特に症状がなくとも、年単位の治療後に取り返しのつかない重大な心疾患を発症された場合、あとあと本当に後悔しないと言い切れますでしょうか。

加えて、こういったAGA専門クリニックは、治療コースによっては血液検査は行いませんし、心臓の副作用の有無を確認する上で不可欠な心電図検査は機器自体置いていないところが殆どです。心電図だけで副作用を全て発見出来る訳ではありませんが、副作用が起きてもそれを早期に発見し対処するような仕組みが物理的にそもそも出来ておりません。
※血液検査も当然コストがかかりますので、安いコースだと本当に一度も検査をせずに延々と薬を処方するという、臨床医の感覚からするととても恐ろしい事態も横行しております

などなど、理由を挙げればキリがありませんが、このようにミノキシジルの服用はリスクが高い行為です。

どうしても、と思ってしまった方は来院された際にぜひ一度ご相談下さい。噛み砕いてきちんと説明致します(繰り返しますが、ミノキシジル内服薬の処方は致しません)。

当院のAGA治療は3段階

前置きが長くなってしまいましたが、当院のAGA治療の流れを説明いたします。大きく3段階に分かれています。

第1段階はミノキシジル外用薬と育毛シャンプーを処方

市販の育毛剤以外に薄毛対策を行ったことがない治療初級者の方は、ミノキシジルを主成分とした外用薬(発毛剤とも言います)から薄毛治療を開始いたします。

ミノキシジル外用薬

夜のお風呂上りと朝起きてからの1日2回、頭皮の気になる部分にふりかけていただき、軽く指でもみ込み馴染ませます。

ミノキシジル外用薬は、大正製薬のリアップや、元SMAPの草彅剛さんや香取慎吾さんのCMでおなじみのスカルプDメディカルミノキ5とほぼ同じ製品になりますが、これら市販の発毛剤と違い当院で処方するものはミノキシジルの濃度が6%以上の医療用発毛剤になります。

市販品の濃度は法律で5%までに制限されています

ケトコナゾール配合の育毛シャンプー

シャンプーを変えたからと言って発毛するわけではありませんが、抗真菌薬であるケトコナゾール配合シャンプーを使用することで発毛促進効果が出る場合があります。

ケトコナゾールシャンプー

過度な効果が期待できないとは言え、ケトコナゾールは「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版​1​」で発毛効果を一部認められている成分ですので、ミノキシジル発毛剤とともに処方し、発毛を促していきます。

なお、ケトコナゾール配合シャンプーは医療用ですので市販では手に入りません。

血液検査と心電図検査(必要に応じてレントゲン写真なども)を行います

医療用発毛剤はミノキシジル濃度が高いため、極まれとはいえ循環器(心臓や血管)に副作用が出る患者さんがいますので、心電図検査を3か月に1度の割合で行います。加えて、心臓に負担がかかっていないかは胸部のレントゲンを撮ると心肥大の有無や胸水が溜まってきていないかなどで察知できる場合がありますので、必要に応じ検査を行う体制を整えております。
※とは言え、塗り薬ですので、あまり心臓への負担が大きいとは考えにくく、逆に必要ない検査もどんどん行うような事は致しません。内科医としての判断で、必要十分な検査を行います。

心電図検査

また、マイクロスコープで頭皮を診察し、薬品負け(ただれ)していないかどうかも確認いたします。

にんにく注射

AGA治療で来院された方に限定して「にんにく注射」を無料サービスしております。
※来院の都度毎回無料で摂取いただけます

当院の「にんにく注射」はビタミンB群を中心に成分構成されていますが、「育毛 ビタミンB」でGoogle検索すると「ビタミンBには育毛効果がある」的な記事がたくさんヒットすることで分かるとおり、髪の毛にとって大切な栄養素の一つと言われています。

にんにく注射
画像はイメージです。実際ににんにくを打つわけではありません。

実際、血中のビタミンB2やB7、B12が男性型、および女性型脱毛症の方で低下していたとする報告はいくつか散見されます​2–5​

薄毛中級者はフィナステリドを処方(第2段階)

濃度6%以上の医療用発毛剤を使っても効果が確認できなかった場合、あるいは来院時点である程度AGAの進行が認められる場合は、ミノキシジル発毛剤とケトコナゾール配合シャンプーにプラスして、脱毛予防薬であるフィナステリド(飲み薬)を処方いたします。

プロペシア(フィナステリド)
フィナステリド

実は、このフィナステリド処方のタイミングは医師の間でも意見が割れています。

  • 少しでも薄毛が始まっているならフィナステリドを処方すべき
  • 肝臓や男性器等に負担がかかる薬なのでフィナステリドは治療のファーストチョイスではない

当院の考えは後者になります。塗り薬だけで発毛効果が出るのであれば、それに越したことはありません。医療用の濃いめのミノキシジルを使用したとしても、塗り薬であれば全身性の副作用が出ることはあまり考えにくいです。

しかし、飲み薬であるフィナステリドは多少なりとも肝臓をはじめとした内臓に負担がかかる薬ですし、催奇形性や性欲減退の副作用が出る可能性がありますので、薄毛の最初の段階で飲むべきではない、健康を害してまで薄毛治療を優先すべきではない、というのが当院の考え方です。

また、PSAという前立腺癌の腫瘍マーカーとして用いられる検査項目が、フィナステリドやデュタステリドによって見かけ上低下してしまうという現象が認められ、仮に前立腺癌だったとしてもPSAが高値とならず、がん検診などでひっかかりにくくなる(早期発見されにくくなってしまう)というリスクも知られています。

しかし、ミノキシジルの塗り薬で効果が出ていない場合、薬の副作用を十分に説明した上で、まずは濃度0.1 ~ 0.2 mgのフィナステリドを処方し、段階的に濃度を上げていって治療効果を丁寧に観察していくのが当院の治療の進め方です。

もちろん、PSAも含めた各種血液検査を定期的に行い、重大な副作用が起こっていないかは都度きちんと確認しながら治療を行って参ります。

少しじれったいかも知れませんが、開業準備中に修行の一環も兼ねてAGA専門クリニックでも非常勤勤務をしていた際、見たくないものも見てきました。当院では安全優先で治療を行いたいと思っております。

最終段階はデュタステリドを処方

治療の最終地点とも言える第3段階では、デュタステリドという強めの脱毛予防薬を処方いたします。

ザガーロ(デュタステリド)

フィナステリドと同じく精子の奇形や性欲減退、肝機能障害などの副作用がある薬ですので、インフォームドコンセントをしっかり行った上で患者さん同意の元で服用を開始していただきます。

頭皮の状態にもよりますが、ミノキシジル発毛剤の濃度も限界ぎりぎりの10%(市販発毛剤の倍の濃度)まで上げて発毛を促します。

治療効果が現れなかったら別の薄毛対策を提案

当院で薄毛治療を行っていただき、最終段階であるデュタステリドを服用して半年経過しても発毛効果が現れなかった場合に限り、自毛植毛の名医や幹細胞移植の最新情報などをお伝えした上で、当院を卒業していただきます。

自毛植毛は、日本で多く行われているFUEという術式に大きな問題を抱えていますので、リスクを最小に抑えるための自毛植毛の進め方などをレクチャーさせていただきます。

また、幹細胞移植(皮下脂肪を使います)で発毛する場合がありますので、希望があれば東京にある幹細胞移植の第一人者とも言えるクリニックを紹介いたします。

情報を得ることだけを目的にした来院は丁重にお断りいたします。当院で治療を続けていただいた信頼ある患者さんに限って上記情報をお伝えするに留めていることをご理解ください。

まとめ

「じれったい治療方針だなあ」
「最初から発毛効果が高い方法で治療してくれよ」

との感想を持たれたかも知れません。このようなことを考える方がおられることを否定もいたしません。

しかし、冒頭のほうで申し上げましたが、AGA治療の不都合な真実をこの目で見てきましたので、「しっかりとした根拠をもって、できるだけ身体にやさしい治療」から順序立てて行うのが当院の治療方針です。

当院は全国展開しているわけではなく、私の地元である仙台空港近くで根を下ろし地元の方のために地域医療を行っております。従って、地元への責任という意味でもこの方針は変えずに丁寧な治療を行っていく所存です。

以上

参考文献

  1. 1.
    日本皮膚科学会 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン作成委員会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 日本皮膚科学会; 2017. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
  2. 2.
    Thakur K, Tomar SK, Singh AK, Mandal S, Arora S. Riboflavin and health: A review of recent human research. Critical Reviews in Food Science and Nutrition. Published online March 30, 2016:3650-3660. doi:10.1080/10408398.2016.1145104
  3. 3.
    Durusoy C, Ozenli Y, Adiguzel A, et al. The role of psychological factors and serum zinc, folate and vitamin B12levels in the aetiology of trichodynia: a case-control study. Clinical and Experimental Dermatology. Published online October 2009:789-792. doi:10.1111/j.1365-2230.2008.03165.x
  4. 4.
    Cheung E, Sink J, English I. Vitamin and Mineral Deficiencies in Patients With Telogen Effluvium: A Retrospective Cross-Sectional Study. J Drugs Dermatol. 2016;15(10):1235-1237. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27741341
  5. 5.
    Almohanna H, Ahmed A, Tsatalis J, Tosti A. The Role of Vitamins and Minerals in Hair Loss: A Review. Dermatol Ther (Heidelb). 2019;9(1):51-70. doi:10.1007/s13555-018-0278-6