お急ぎの方へ
- 食物アレルギーがある子が発熱したときは、熱の高さより「食べた後に出た症状」を見る。息苦しさ、繰り返す嘔吐、ぐったりがあれば、熱の有無にかかわらずアナフィラキシーを疑う
- 意識がもうろうとしている、けいれんしている、息がしにくいなど、アナフィラキシーのサインがあればすぐ119番。エピペンを使った後も必ず119番と受診
- 一度反応が出たら、原因の見直しと、エピペンが必要かどうかを主治医に相談する
おはようございます。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
お子さんに食物アレルギーがあり、熱が出たときに「これはアレルギーの反応なのか、かぜなのか」と迷われたことはありませんか。実は、発熱をともなう感染症は、アナフィラキシーを強める要因の一つとして知られています[1]。
結論から申し上げると、原因の食べ物を食べたあとに、息苦しさ、繰り返す嘔吐、ぐったりといったサインが出ていれば、熱があってもなくてもアナフィラキシーと考え、119番を選んでください。皮膚症状だけのときも、急速に広がる場合は急いで相談してください。
本記事では、日本アレルギー学会のガイドラインをもとにしたアナフィラキシーの基準、エピペンを使った後の対応、熱とアレルギー反応の見分け方、発熱や運動が反応を強めるしくみを、保護者の方に向けて解説します。
その前に、日曜・祝日の発熱外来のご案内です。インフルエンザやコロナのPCR検査(ピーシーアール検査:ウイルスの遺伝子を増やして見つける検査)は、当日中に結果が分かります。
2026年10月4日から、日曜・祝日も発熱外来を行っています
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【結論】子どもが食物アレルギーで発熱したとき、まず何を見る?
まず見ていただきたいのは、熱の高さではなく、「原因の食べ物を食べたあとに、どんな症状が、どれくらいの速さで出たか」です。
ガイドラインの基準では、食べたあとの症状は数分〜数時間で急速に出るものとされています[1]。アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応で、急速に発症し、死に至ることもあります[1]。
一方で、発熱そのものがアレルギー反応の症状とは限りません。熱があっても、食べた後の息苦しさや繰り返す嘔吐、ぐったりがなければ、まずは落ち着いて受診していただいてかまいません。ただし、これらのサインが一つでもあれば、熱の有無にかかわらず119番が原則です[1][2]。
院長蒲生「熱のせいかな」と思っても、食べたあとの様子がいつもと違うなら、その変化を優先してください。迷ったら、そのまま受診して大丈夫です。
アナフィラキシーの基準は?日本アレルギー学会のガイドラインでは
日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドライン2022では、次の2つの基準のどちらかを満たすと、アナフィラキシーである可能性が非常に高いとされています[1]。
| 見るポイント | 基準1 | 基準2 |
|---|---|---|
| 皮膚・粘膜症状 | 全身の蕁麻疹、かゆみ、紅潮、唇・舌・口蓋垂の腫れなどが数分〜数時間で急速に出る | なくてもよい |
| そのほか | 次の1つ以上を伴う:重度の呼吸器症状/血圧低下や臓器不全の症状/重度の消化器症状 | 既知のアレルゲンなどに曝露後、血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状が急速に出る |
ここで大切なのは、呼吸の項目が「重度の呼吸器症状(呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など)」という表現であることです[3]。この表現は、2023年3月1日の修正で改められました[3]。
この基準は、もともと医療者向けに作られたものです。保護者の方が血圧を測って判断する必要はありません。ご家庭では、後で紹介する症状のリストで「一つでもあれば急ぐ」と覚えてください[1][2]。
エピペン(アドレナリン自己注射薬)を使ったら、その後どうする?
エピペンを使ったら、たとえ症状が落ち着いて見えても、必ず119番で救急車を呼び、医療機関を受診してください[1][2]。
ガイドラインの図14でも、注射のあとは「救急車を呼び、医療機関を受診する」とされています[1]。厚生労働省の保育所向けガイドラインも、実際に使用した後は速やかに救急搬送し、医療機関を受診する必要があるとしています[2]。
アナフィラキシーの第一選択薬はアドレナリンで、抗ヒスタミン薬やステロイドは補助的な位置づけです[1][4]。ですから、エピペンが処方されているお子さんでは、息苦しさなどの症状が出たときに迷わず使うことが大切です[4]。
エピペンは、保護者の方が練習用のトレーナーで使い方を練習しておくことが勧められています[4][5]。注射のあとは医師の指示どおりに行動し、使用期限が近づいたら未使用の製品を持って受診し、新しい製品の処方を受けます[5]。
なお、エピペンは体重15kg未満のお子さんには処方されません[2]。うちの子に必要かどうかは、小児科やアレルギー科などの主治医に相談してください[6]。
熱とアレルギー反応は、どう見分ける?
発熱そのものをアレルギー症状と決めつけることも、逆に「熱があるからアレルギーではない」と決めつけることもできません。見るのは、食べた後に出た症状と、その時間の経過です。
子どもは大人のように症状をはっきり訴えられません。なんとなく不機嫌、元気がない、寝てしまう、といった変化がアナフィラキシーの症状であることもあります[6]。また、重篤なアナフィラキシーでも皮膚症状を伴わないことがあります[6]。
似た症状との違いも参考になります。
| 状態 | アナフィラキシーと違う点 |
|---|---|
| 喘息発作 | かゆみ、蕁麻疹、血管性浮腫、腹痛、血圧低下は生じない[1] |
| 血管迷走神経反射 | 横になると軽減し、通常は蒼白と発汗を伴う。蕁麻疹、皮膚紅潮、呼吸器症状、消化器症状がない[1] |
国内の調査では、即時型食物アレルギーの症状は皮膚症状が90%以上で最も多く、次いで呼吸器症状が約30%、ショックが約10%でした[7]。皮膚症状が多いからといって、皮膚症状だけで安心できるわけではありません。
蕁麻疹と熱が同時にあるとき、「熱があるからアレルギーではない」と自己判断しないでください。息苦しさや繰り返す嘔吐、ぐったりが加わったら、アナフィラキシーとしてすぐ119番です[1][2]。
発熱や運動で、アナフィラキシーは起こりやすくなる?
はい。発熱をふくむ感染症や運動は、アナフィラキシーを増幅させる「促進因子(そくしんいんし)」として知られています[1]。
ガイドラインには、運動、急性感染症(感冒、発熱など)、情動性ストレス、非日常的な活動(旅行など)、月経前状態が促進因子として挙げられています[1]。
- 除去を解除して少量なら食べられるようになった食物でも、感冒や疲労、運動、入浴に伴って反応が誘発されることがあります[1]
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、原因食物を食べてから2時間以内の運動で起こることが多く、最大4時間後とする報告もあります[1]
- 小児の食物アナフィラキシーでは、促進因子が14〜18.3%にみられ、運動と感染症が最も多いと報告されています[8]



「前は大丈夫だったから今回も大丈夫」とは言い切れません。発熱や運動が重なった日は、いつもより注意して見てあげてください。
【受診を急ぐサイン】119番・救急外来・その日のうちに
すぐに119番
次のどれか1つでもあれば、熱の高さにかかわらず、迷わず119番に電話してください[2][9]。夜間・休日でも同じです。
- 意識がもうろうとしている、ぐったりしている[2][6]
- けいれんしている、手足が硬直している[9]
- のどや胸が締めつけられる、声がかすれる、犬が吠えるような咳、息がしにくい[2]
- 繰り返し吐き続ける、持続する強い(がまんできない)おなかの痛み[2]
- 唇や爪が青白い、脈が触れにくい・不規則、尿や便を漏らす[2]
- 激しい咳やゼーゼーで呼吸が苦しそう、唇の色が紫色[9]
厚生労働省の保育所向けガイドラインでも、食物アレルギーのある子に緊急性の高い症状が一つでも見られたら、エピペンの使用や119番通報による速やかな対応が求められています[2]。
夜間・休日でも、その日のうちに受診
119番を呼ぶほどでなくても、食物アレルギーで何らかの症状が出たあとは、できるだけ早く医療機関を受診してください(薬によるアレルギーの資料でも、症状が出たら早めに受診するよう示されています[6])。
- 蕁麻疹や腫れが出て、いったん落ち着いても、数時間後に再び悪化することがある(二相性反応)[4]
- 二相性反応は小児の最大11%にみられ、約半数は最初の反応から6〜12時間以内に現れる[1]
- エピペンを使ったときは、症状が改善しても必ず119番で救急搬送し、医療機関を受診する[1][2]
夜間に判断がつかないときは、小児救急電話相談(#8000)や、お住まいの地域の救急相談も利用できます。ただし、上の119番のサインがあるときは、相談をはさまず119番です。
受診するとき、医師に伝えてほしいこと
原因を確かめ、これからの対応を決めるために、次のことを伝えてください[1]。
- 食べたもの、量、時刻と、症状が出た時刻[1]
- 出た症状(皮膚、呼吸、消化器、意識)と、その後の経過[1]
- そのとき発熱があったか、運動したか、疲れていたか[1]
- エピペンを持っているか、使ったか、使い方に慣れているか[4][5]
- これまでのアレルギー歴、アナフィラキシーの既往[6]
一度反応が出たお子さんでは、原因の見直しとあわせて、エピペンが必要かどうかを専門家に相談することが勧められています[6]。
よくある質問(FAQ)
- 熱が高いだけのときは、アナフィラキシーを心配しなくていいですか?
-
発熱そのものだけでは判断できません。大切なのは、原因の食べ物を食べたあとに出た症状です。息苦しさ、繰り返す嘔吐、ぐったり、意識がもうろうとするなどがあれば、熱の有無にかかわらず119番です[1][2]。
- 蕁麻疹と熱が同時に出ました。かぜと考えていいですか?
-
「熱があるからアレルギーではない」とは言い切れません。蕁麻疹だけでも、急速に広がる場合や、息苦しさ・繰り返す嘔吐・ぐったりが加わる場合は急いでください。気になるときはその日のうちに受診してください[1][2]。
- エピペンを持っていません。どうすればいいですか?
-
エピペンは、食物アナフィラキシーを経験したお子さんに処方が検討されます[1]。必要かどうかは主治医が判断しますので、小児科やアレルギー科に相談してください[6]。自己判断で用意したり、使ったりしないでください。
- エピペンを使っても、救急車は必ず呼ぶのですか?
-
はい。エピペンは緊急の補助治療で、医療機関での治療に代わるものではありません[5]。注射した後は必ず医療機関を受診してください[5]。症状が改善しても、二相性反応で再び悪化することがあるためです[4]。なお、世界では発症時のアドレナリン使用が十分でないと報告されています[10]。
- これまで食べられていたのに、今回反応が出ました。なぜでしょうか?
-
除去を解除して少量なら食べられるようになった食物でも、感冒や疲労、運動、入浴などに伴って反応が誘発されることがあります[1]。小児の食物アナフィラキシーでは、運動と感染症が最も多い促進因子です[8]。
- 食物アレルギーの子どもは、何に気をつければいいですか?
-
子どものアナフィラキシーは食物が主な原因で、東アジアでは鶏卵と牛乳が多いと報告されています[11]。原因の見直しと、エピペンの要否、緊急時の行動計画を主治医と相談しておくことが大切です[11]。
まとめ【熱より「食べた後の症状」を見て、サインがあれば119番】
- 食物アレルギーがある子が発熱したときは、熱の高さより「食べた後に出た症状」を見る。息苦しさ、繰り返す嘔吐、ぐったりがあれば、熱の有無にかかわらずアナフィラキシーを疑う
- 意識がもうろうとしている、けいれんしている、息がしにくいなど、アナフィラキシーのサインがあればすぐ119番。エピペンを使った後も必ず119番と受診
- 一度反応が出たら、原因の見直しと、エピペンが必要かどうかを主治医に相談する
- 発熱をふくむ感染症や運動は、反応を強める促進因子になる[1][8]
- 反応が出たあとは、症状が落ち着いても、その日のうちに受診する[6]
お子さんの「いつもと違う」に最初に気づけるのは、そばで見ているご家族です。食物アレルギーのことで気になることがあれば、どうぞ受診してご相談ください。医療は私達におまかせください。
以上
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- 日本アレルギー学会 Anaphylaxis対策委員会. アナフィラキシーガイドライン 2022. 日本アレルギー学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.jsaweb.jp/uploads/files/Web_AnaGL_2022_1201.pdf
- 厚生労働省. 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版). こども家庭庁 すこやか21. 参照 2026年10月. https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s04_nyu_gail029.pdf
- 日本アレルギー学会. 「アナフィラキシーガイドライン 2022」修正 2023年3月1日. 日本アレルギー学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.jsaweb.jp/uploads/files/shusei_Ana2022_1MAR23.pdf
- 日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版 第7章 即時型症状の重症度判定と対症療法. 日本小児アレルギー学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_7.html
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 患者向医薬品ガイド エピペン注射液0.15mg/エピペン注射液0.3mg. PMDAウェブサイト. 2024年7月更新. 参照 2026年10月. https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/671450_2451402G2020_4_00G.pdf
- 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)ウェブサイト. 令和8年2月改定. 参照 2026年10月. https://www.pmda.go.jp/files/000279383.pdf
- 日本アレルギー学会. アレルギーの手引き 2025~患者さんに接する医療従事者のために~. 日本アレルギー学会ウェブサイト. 2025年3月. 参照 2026年10月. https://www.jsaweb.jp/huge/JSA_tebiki2025.pdf
- Mohta A, Narvaez E, Mir-Ihara P, Bartra J, Muñoz-Cano R. Pediatric cofactor-enhanced food anaphylaxis: a narrative review of epidemiology, pathophysiology, and clinical phenotypes. Pediatr Allergy Immunol. 2025 Sep;36(9):e70194. doi:10.1111/pai.70194 PMID: 40910423
- 厚生労働省. こんな時は迷わず119へ(子供の症状). 上手な医療のかかり方.jp. 参照 2026年10月. https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/urgency.html
- Miles LM, Ratnarajah K, Gabrielli S, Abrams EM, Protudjer JLP, Bégin P, et al. Community use of epinephrine for the treatment of anaphylaxis: a review and meta-analysis. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jun;9(6):2321-2333. doi:10.1016/j.jaip.2021.01.038 PMID: 33549844
- Sato S, Kodachi T, Yanagida N, Ebisawa M. Recent insights into the epidemiology and management of anaphylaxis. Balkan Med J. 2025 Sep;42(5):393-404. doi:10.4274/balkanmedj.galenos.2025.2025-5-86 PMID: 40719286
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