こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
秋になり、インフルエンザの予防接種と一緒に、肺炎の予防も考えたい季節です。実は、大人の肺炎球菌ワクチンは、2026年度に定期接種(国の制度に基づいて自治体が行う予防接種)で使う種類が変わりました[1]。
結論から申し上げると、65歳の方は定期接種の期限を確認し、持病がある方は年齢だけで判断せず相談することが大切です。
本記事では、肺炎球菌ワクチンの種類、インフルエンザワクチンとの同時接種、接種歴や持病があるときの考え方を解説します。制度の記載は2026年10月22日時点です。
肺炎球菌ワクチンは、どんな病気を防ぐ?
この注射で備えるのは、肺炎球菌(はいえんきゅうきん:肺炎などの原因になる細菌)による感染症です[1][2]。
肺炎球菌は肺だけでなく、血液など、本来は菌がいない場所に入り込むこともあります。これを侵襲性肺炎球菌感染症(しんしゅうせい:体の内部へ菌が入り込む重い感染症)と呼びます[1]。
ワクチンに含まれない型の肺炎球菌による感染症は防げません[2]。インフルエンザや新型コロナなど、別の原因による肺炎への備えも別に必要です。
ざっくり言えば「肺炎への備えを一つ増やす」ものです。インフルエンザの予防接種や持病の治療も合わせて考えていきましょう。
院長蒲生「肺炎のワクチン」という名前でも、予防する相手は肺炎球菌です。それぞれの感染症への備えを組み合わせる、と考えると分かりやすいですね。
65歳の肺炎球菌ワクチン、定期接種はいつ?
2026年度に使うのは、PCV20(20種類の菌の型に対応するワクチン)で、接種は1回です[1]。
定期接種の年齢枠は、原則として65歳の間です。66歳になる前に、お住まいの自治体の案内で期限と手続きを確かめてください[1]。
PCV20は20価の結合型(菌の成分にたんぱく質を結びつけ、体が菌を覚えやすくした仕組み)です[3]。
| 確認する項目 | 2026年度の基本 |
|---|---|
| 65歳の方 | 定期接種の年齢対象。過去の接種歴も確認します[1][3]。 |
| 60〜64歳の一部の方 | 心臓・腎臓・呼吸器の障害で生活が極度に制限される方などが対象です[1]。 |
| 使用するワクチン | 20価結合型のPCV20(プレベナー20)。1回の筋肉注射です[1][2]。 |
| 実施場所・自己負担の扱い | 自治体の指定医療機関や助成条件を接種前に確認します[1]。 |
60〜64歳では、ヒト免疫不全ウイルス(めんえきふぜん:体を守る免疫の細胞に感染するウイルス)による免疫機能の障害で、日常生活がほとんど不可能な方も対象です。単に持病があるだけで定期接種になる、という条件ではありません[1]。
70歳、75歳などを対象にした過去の経過措置は終了しています。65歳を過ぎた方は、任意接種(定期接種の枠外で受ける接種)や自治体独自の助成について確認しましょう[3]。
長期療養のため対象期間中に接種できなかった場合には、特例が適用されることがあります。該当する病気や期間は、主治医と自治体に確認してください[1]。



案内が届いたら、「あとで」としまい込まずに期限を確認しましょう。接種したことがある方は、その記録も一緒に用意しておくと安心です。
肺炎球菌ワクチンの20価・21価・23価は何が違う?
比べるポイントは大きく二つ、対象となる菌の型と、免疫(めんえき:感染から体を守る仕組み)の作られ方です[3]。
「価(か)」は、ワクチンに含まれる血清型(けっせいがた:菌の表面の違いで分けた型)の数を表します。数字だけを比べて、効果の強さや自分への適切さを決めるものではありません[3]。
多糖体型(たとうたいがた)は、菌の表面の糖の成分を使う仕組みです。結合型とは、体に菌を覚えてもらう仕組みが異なります[3]。
| 種類・製品名 | 仕組みと位置づけ |
|---|---|
| PCV20・プレベナー20 | 20価の結合型。2026年度の成人の定期接種で使います[1][3]。 |
| PCV21(21価結合型)・キャップバックス | 21価の結合型。成人の病気の原因となる型を重視した構成で、PCV20とは含む型が異なります。任意接種の選択肢です[3]。 |
| PCV15(15価結合型)・バクニュバンス | 15価の結合型。任意接種では、その後に23価を接種する組み合わせもあります[3]。 |
| PPSV23(23価多糖体型)・ニューモバックス | 23価の多糖体型。2026年度の定期接種では使いません[1][3]。 |
| PCV13(13価結合型)・プレベナー13 | 13価の結合型。過去の接種記録に、この名前がある方もいます[3]。 |
「23のほうが20より強い」「21は20に一つ足しただけ」とは考えず、接種歴と対象条件で選びます。以前の種類を受けたことが無駄になる、という話でもありません。



名前は結構似ています。数字を暗記するより、接種済証に書かれた製品名をそのまま伝えるほうが確実です。
肺炎球菌ワクチンを前に受けたら、追加は必要?
前回受けた種類・日付・定期接種だったかどうかが、次の接種を決めるときの出発点になります[3]。
「肺炎の注射を受けた」という記憶だけでは、次の種類や時期を決めにくいことがあります。接種済証や自治体の記録、接種した医療機関への問い合わせで確認しましょう。
- 過去に定期接種で23価を受けた方は、原則として次の定期接種の対象外です[3]。
- 過去に任意接種を受けた65歳の方は、現在の定期接種を受けられるか自治体へ確認します[3]。
- 以前に肺炎球菌ワクチンを受けた方が、20価や21価などを追加する場合は、原則1年以上の間隔を含め、前回の製剤に応じて医師が計画します[3]。
学会の現在の考え方では、23価を同じ製剤で繰り返すことを原則の選択肢としていません。「5年たったから同じ注射」と自己判断せず、現在の選択肢を確認してください[3]。



接種済証やメモがあれば、きれいに書き直さなくても、そのまま見せれば伝わります。分からない点は、話すときに一緒に確かめれば大丈夫です。
肺炎球菌ワクチンはインフルエンザと同時接種できる?
医師が必要と認めれば、PCV20とインフルエンザワクチンを同じ日に受けることができます[2]。
それぞれ別の注射として接種します[2]。同時にするか別の日にするかは、持病や当日の体調をふまえて医師と決めます。
同時接種を調べた研究では
米国の65歳以上の1,796人を、無作為(むさくい:くじ引きのように偶然で決めること)に2つの組へ分けて比較しました[4]。
比較したのは、PCV20とインフルエンザワクチンを同時に受ける方法と、1か月あけて受ける方法です[4]。
抗体(菌やウイルスを見分けて防御に働くたんぱく質)の反応を比べました。その結果、肺炎球菌の20種類とインフルエンザの4種類すべてで、同時接種は事前に決めた基準を満たしました[4]。この基準は、別々に受けた場合と比べて抗体の反応が大きく劣らないことを確かめるものです[4]。
軽い疲労感は同時接種で20.0%、別々の接種では10.8〜12.6%に報告されました[4]。反応の多くは軽い〜中くらいで、最も多かったのは注射した場所の痛みでした[4]。接種と関係すると判断された重い有害事象(ゆうがいじしょう:接種のあとに起きた、体にとって好ましくない出来事)はありませんでした[4]。
つまり、免疫の反応を保ちながら通院をまとめられる可能性があります。一方で、疲れやすさなどの反応も考えて、日程を選ぶとよいですね。
研究で使ったのは、効き目を高める成分を加えた、米国の4価インフルエンザワクチンです[4]。日本のすべての製剤で同じ結果を保証するものではなく、肺炎の発症数を比べた試験でもありません[4]。
国や医療機関によって方針が異なります。国内で同じ日に受けられるかは、使う製剤をふまえて接種先に相談してください[2]。



通院をまとめたい方も、別の日に分けたい方もいると思います。どちらの希望も先に伝えておくと、体調に合わせて予定を立てやすくなります。
持病がある人は65歳前でも肺炎球菌ワクチンを考える?
持病や治療の内容によって、肺炎球菌の感染症へのかかりやすさは高まります[2][3]。次のような方は、年齢に関係なく主治医に相談してみてください。
- 慢性的な肺・心臓・腎臓・肝臓の病気がある方[2]。
- 糖尿病がある方[2]。
- 病気や治療のために感染への抵抗力が低下している方[2]。
- 脾臓(ひぞう:血液中の菌を取り除く働きもある臓器)を摘出した方など[2]。
たとえばCOPD(シーオーピーディー:主にたばこの影響で空気の通り道や肺が傷み、息を吐きにくくなる病気)は、慢性的な肺の病気に含まれます[2]。接種の相談では病名と治療内容を伝えてください。
接種の必要性と、定期接種の対象かどうかは別の判断です。65歳未満でも接種が勧められる場合がありますが、公費の対象になるかは年齢と障害の条件を確認します[1][2]。
免疫を抑える薬や、血液を固まりにくくする薬は、自己判断で中止しないでください。治療の日程や、注射した場所の出血への配慮が必要なこともあるため、お薬手帳を持って相談してください[2]。



「持病があるから打てない」と決めつけなくて大丈夫です。守りたい病気と、いま受けている治療を一緒に考えることが大切です。
肺炎球菌ワクチンの副反応、どんなときに相談する?
接種後には、腕の痛みや腫れ、疲労感などの反応が知られています。こうした望ましくない反応を副反応と呼びます[2]。
接種当日は激しい運動を避け、注射した場所を清潔にして過ごします。症状が強いときや、いつもと違う変化があるときは、早めに接種先へ連絡してください[2]。
明らかな発熱や重い急性の病気がある日は、接種を見合わせます[2]。成分によるアナフィラキシー(急激に起こる重いアレルギー反応)の経験は、必ず事前に伝えてください[2]。
- 急な息苦しさ、呼びかけへの反応がない場合は119番。接種後でも、様子を見て待たないでください[5]。
- 突然の激しい胸の痛み、締めつけられるような胸の痛みも119番。心臓などの病気も考える必要があります[5]。
医療機関にいる間に異変が起きたときは、その場で職員に知らせてください。帰宅後に連絡するときは、接種した種類と時刻、症状が始まった時刻を伝えます。



腕の痛みと、急な息苦しさは分けて考えましょう。「接種のあとだから」と、強い症状をひとまとめにしないことが大切です。
当院の診療時間と肺炎球菌ワクチンの相談準備
当院の一般外来の診療日は月・火・水・金・土です。肺炎球菌ワクチンの接種を希望するときは、来院前に実施の可否と手続きを確認してください。
| 曜日 | 時間 |
|---|---|
| 月・火・水・金・土 | 9:00〜12:00/14:00〜18:00 |
| 日曜・祝日(2026年10月4日から) | 10:00〜15:00(昼休みなし・発熱外来のみ) |
| 木曜 | 休診 |
日曜・祝日は発熱外来のみで、一般外来と点滴は行っていません。診療日と休診日は、カレンダーをご確認ください。
日曜・祝日の発熱外来は予約不要・当日チェックインですが、これは予防接種の受付案内ではありません。詳しくは日曜・祝日の発熱外来の案内と当日チェックインの方法をご覧ください。
- 自治体からの案内と接種期限
- 以前受けた肺炎球菌ワクチンの名前・日付・定期か任意かの記録
- お薬手帳、持病の名前、治療中の医療機関
- 過去の予防接種で起きた反応と、今回一緒に受けたいワクチン
定期接種の指定医療機関や助成の扱いは、お住まいの自治体へ確認してください。私達が診療で状況を把握する際にも、こうした記録が役立ちます。
肺炎球菌ワクチンのよくある質問
迷ったときは、以前の病気と予防接種の記録を分けて整理すると、確認すべき点が見えてきます。
- 以前、肺炎にかかった人にも必要ですか?
-
肺炎を経験していても、接種を検討できます。肺炎にはさまざまな原因があり、肺炎球菌にも異なる型があります。過去の病気だけで接種不要と決めず、年齢や持病と合わせて相談してください。
- 65歳を過ぎたら、もう受けられませんか?
-
65歳を過ぎても、任意接種として受ける選択肢があります。定期接種の年齢枠とは分けて考えてください。長期療養の特例や独自の助成に該当するかは、主治医と自治体で確認しましょう[1][3]。
- 21価を定期接種で選べますか?
-
2026年10月22日時点で、成人の定期接種に使うのは20価のPCV20です。21価は任意接種の選択肢として、過去の接種内容も踏まえて相談します。数字の大きさだけで選ぶものではありません[1][3]。
- インフルエンザと同時に打つと、注射は一つですか?
-
同日に受けても、ワクチンはそれぞれ別に注射します[2]。薬液を一つに混ぜる方法ではありません。同時接種するか別日にするかは、持病や当日の体調、使用する製剤をふまえて医師と決めます。
- 前の接種日が分からないときはどうしますか?
-
接種済証を探し、以前の医療機関や自治体に記録を確認してください。見つからない場合は、そのことを医師に伝えます。「たぶん何年か前」と推測だけで次の接種日を決めず、確認できた情報を整理しましょう。
まとめ【肺炎球菌ワクチンは年齢・持病・接種歴から】
いまの年齢、かかえている病気、これまでの接種記録。この三つをそろえると、自分に必要な相談が見えてきます。
- 65歳の方は自治体の案内と期限を確認しましょう。2026年度の定期接種はPCV20です[1]。
- 種類の数字は菌の型の数。自分に合う選択は接種歴や持病と合わせて考えます[3]。
- インフルエンザとの同時接種は、医師の判断で可能です[2]。
- 持病がある方は65歳前でも相談し、薬を自己判断で止めないでください。
- 急な息苦しさ、呼びかけへの反応がない、突然の激しい胸の痛みは、接種後でも119番です[5]。
まずは、年齢と接種記録、お薬手帳をそろえるところからでOKです。自分の体と予定に合った予防を考えていきましょう。
以上
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省. 高齢者の肺炎球菌ワクチン. 厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月22日. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/pneumococcus-senior/index.html
- ファイザー株式会社. プレベナー20水性懸濁注 電子添文(2026年8月改訂・第3版). PMDA. 2026. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/672212_631140LC1023_1_05
- 日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版・2026年6月15日一部修正). 学会合同見解. 2026. https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/65yrs_vaccine_ver8_20260615.pdf
- Cannon K, Cardona JF, Yacisin K, et al. Safety and immunogenicity of a 20-valent pneumococcal conjugate vaccine coadministered with quadrivalent influenza vaccine: A phase 3 randomized trial. Vaccine. 2023. doi:10.1016/j.vaccine.2022.11.046 PMID: 36828719
- 総務省消防庁. 救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~. 救急車利用マニュアル. 2025. https://www.fdma.go.jp/publication/portal/items/portal002_japanese.pdf
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