こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
秋は健康診断の結果が届く季節です。胸のCT(エックス線で体の断面を写す検査)で影を指摘され、精密検査として気管支鏡検査を勧められる方もいらっしゃいます。「肺に内視鏡を入れるなんて、苦しそう」と、不安になるのは自然なことです。
結論から申し上げると、検査の目的と、前後の過ごし方を検査施設で具体的に確認しておくと、不安を減らす助けになります。確認しておきたいのは、何を調べるのか、麻酔や苦痛を和らげる薬をどうするのか、薬や食事はどうするのか、帰り方と検査後の連絡先です。
本記事では、気管支鏡検査の目的と、検査の前後に確認したいことを、呼吸器専門医の立場からざっくり整理します。
気管支鏡検査は何を調べる?画像に加えて組織や細胞を確かめる
この検査では、口や鼻から細い内視鏡を入れて気管支の中を観察し、必要に応じて組織や細胞を採って調べます[1]。気管支鏡は直径3〜6mm程度の細くて柔らかい管で、胃カメラよりずっと細く作られています[1]。
CTやPET(ペット:がんなどの広がりを調べる画像検査)は、影の場所や形を詳しく教えてくれます。ただし画像だけでは、その影の原因を確定できないことがあります[1]。そこで生検(せいけん:病気が疑われる部分の組織を少し採る検査)や細胞診(さいぼうしん:細胞を採って顕微鏡で調べる検査)を行います[1]。
日本呼吸器内視鏡学会は、次のようなときに気管支鏡検査が勧められると説明しています[1]。
- 痰(たん)に血液が混じるとき
- 原因の分からない咳が続くとき
- 胸部レントゲンやCTで影があり、肺がんや肺の感染症などが疑われるとき
- 痰の検査で、がん細胞を疑う所見(しょけん:検査で見つかった変化)があるとき
検体(けんたい:検査のために採った組織や細胞)の採り方には、鉗子(かんし:組織をつまむ細い器具)、ブラシ、針、洗浄などがあります[1]。生理食塩水で肺の奥を洗って細胞を集める方法は、気管支肺胞洗浄(きかんしはいほうせんじょう)と呼ばれます[1]。
影の大きさや場所によっては、十分な組織が採れず診断がつかないこともあります[1]。その場合は、CTを見ながら胸の外から針を刺す検査や、手術で組織を採る方法が検討されます[1]。
検査の説明で聞いておきたいこと
- 何の病気を確かめるための検査か、画像のどの影を調べるのか
- 観察だけか、生検や洗浄も行うのか
- 入院か、日帰りか。検査当日の集合時刻と、帰れるまでの目安
- 結果はいつ、誰から、どのように説明されるのか
2016年に全国の学会認定施設を調べた調査(回答433施設)では、74.6%の施設が診断のための気管支鏡検査を入院で行っていました[2]。ご自身の検査は入院か日帰りか、どちらなのか、早めに確認しておくと予定が立てやすくなります。
院長蒲生「何を確かめるための検査なのか」が分かると、検査を受ける意味がはっきりします。説明を聞くときは、メモを用意しておくと安心です。
気管支鏡検査は苦しい?局所麻酔と鎮静を相談する
のどの感覚を鈍くする局所麻酔を使って、検査中の苦しさを和らげます[1]。施設によっては、鎮静薬(ちんせいやく:うとうとした状態にして不安や苦痛を和らげる薬)も使います[1]。霧状の麻酔薬を吸ったり、スプレーをのどにかけたりして、不快感を和らげます[1]。
通常は検査中も呼吸できますが、咳や息苦しさが出ることがあります[1]。内視鏡が声帯のすき間を通るため、声は出しにくくなります[1]。苦しいときの合図(手でベッドをたたくなど)は、検査前に決めておきます[1]。検査時間は通常20〜30分程度で、処置の内容によってはもう少しかかります[1]。
最近は、のどの麻酔とあわせて鎮静薬の注射を行うことが多くなっています[1]。2014年11月〜2015年7月に岡山大学病院で、痛み止め(フェンタニル)と鎮静薬(ミダゾラム)を使って検査を受けた37人を調べた研究があります[3]。検査を覚えていた人は37.8%で、70.2%の人がもう一度受けてもよいと答えました[3]。重い合併症(がっぺいしょう:検査で起こる好ましくない出来事)はありませんでした[3]。
比べる相手のいない小規模な研究なので、全員が楽に受けられることや、安全性を保証する結果ではありません[3]。苦しさが心配なら、鎮静を使えるかを遠慮なく相談してください。
鎮静の前に伝えておきたいこと
- 麻酔薬や薬でアレルギーを起こしたことがある
- ぜんそくと言われたことがある
- いびきが習慣になっている、寝ているときに呼吸が止まると言われた(睡眠時無呼吸)
- 日中の強い眠気や、高血圧がある
学会の鎮静の指針では、アレルギーやぜんそくの有無を確認し、いびきや睡眠時無呼吸などから空気の通り道がふさがりやすいかを評価します[4]。鎮静薬で呼吸が弱くなったり、血圧が下がったりすることもあります[4]。医療者が呼吸や血液中の酸素の状態などを確認しながら行うため、効果と危険性の説明を受けて相談しましょう[4]。



「苦しいのが怖い」と伝えることは、わがままではありません。不安を話しておくと、検査の進め方を一緒に考えやすくなります。
気管支鏡検査の前、食事・飲水・抗血栓薬はどうする?
検査前の過ごし方で迷ったら、検査施設から渡された指示に従い、自己判断で変えないことが大切です。食事や飲み物を控える時間は、検査や鎮静の方法、体の状態によって異なります[4][5]。
| 確認すること | 検査施設に聞く内容 |
|---|---|
| 食事 | 最後に食べてよい時刻。指示を守れなかったときの連絡方法 |
| 飲水 | 飲んでよい飲み物の種類と、最後に飲んでよい時刻 |
| いつもの薬 | 当日の朝に飲む薬と休む薬。飲む場合の水の量 |
食事を控えるのは、吐いた物が気管に入り込む誤嚥(ごえん)を防ぐためです[4][5]。「何時から食べない」「水はいつまで飲める」「朝の薬は飲むか」を、紙に書いてもらうと間違えにくくなります。
抗血栓薬(血をサラサラにする薬)は、必ず事前に伝える
抗血栓薬(こうけっせんやく)は、抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)と抗凝固薬(こうぎょうこやく)を合わせた呼び名です[5]。どちらも血を固まりにくくする薬で、脳梗塞や心臓の病気、不整脈の治療などで使われます。
生検では、少量であっても必ず出血が起こります[1]。学会の手引き書は、多くの気管支鏡の手技を出血の危険が高いものとし、薬の中止や減量などを施設の決まりに沿って行うよう勧めています[5]。
2016年の全国調査では、96.8%の施設が生検の前に抗血栓薬を調整していました[2]。一方で、薬を休むと血栓(けっせん:血のかたまり)による病気が起こる危険もあります[5]。休むかどうか、いつから休むかは、検査医と薬を出している医師が相談して決めます[5]。
- お薬手帳を持参し、血をサラサラにする薬を飲んでいることを、検査を予約するときに伝える
- 何のために飲んでいる薬か、どこの医療機関で処方されているかを伝える
- 休むよう指示された薬は、休み始める日と、飲み始めてよい日をメモする
- 休むよう指示されていない薬を、自己判断で止めない



薬の話は、検査の日が決まった時点で確認するのが安心です。薬の名前が分からなくても、お薬手帳があれば大丈夫です。
鎮静を受けた気管支鏡検査の日、運転と帰り方は?
当日は自分で運転して帰らない前提で、送迎などの帰り方を前もって決めておきましょう。鎮静薬の影響が残るため、運転を再開してよい時期も検査施設に確認してください[4][5]。
学会の手引き書でも、鎮静後の一定時間は、車の運転や重要な判断を要する仕事を避けるよう書面で説明するとしています[5]。付き添いが必要かも確認し、ご家族の送迎など、施設の指示に合った帰り方を決めておきます。自転車やバイクに乗ってよい時期も、検査施設に確認しておくと安心です。
検査室を出たあとも、鎮静から十分に回復するまで休んで様子を見ます[4]。めまいやふらつきがないこと、出血や吐き気がないことなどを確かめてから帰宅になります[4]。
のどの麻酔が残る間はむせやすいため、食事や飲水の再開は検査施設の指示に従います[1][4]。時間がたっただけで飲食を再開せず、十分に目が覚め、施設から許可を受けたことを確認します[1][4]。指示に沿って少量の水から試し、むせる場合は中止して医療者に相談してください[1]。
- 送迎してくれる人、または運転しない帰り方
- 検査当日と翌日の仕事・家事・介護の予定の調整
- 検査後に食事や水分を再開してよい条件と時刻
- 夜間・休日にもつながる、検査施設の連絡先



「意識ははっきりしているから大丈夫」と感じても、鎮静薬の影響は残ることがあります。帰り道まで含めて、検査の一部と考えておきましょう。
気管支鏡検査のあと、発熱・血痰・息苦しさはどこに連絡する?
検査のあとの体調に不安があるときは、まず検査を受けた施設の連絡先に電話して指示を受けましょう。ただし、急な強い息苦しさなどがあるときは、迷わず119番です[6]。
血痰(けったん)は、血の混じった痰のことです。検査後に注意する合併症には、次のようなものがあります[1][5]。
| 合併症 | 注意したい症状 |
|---|---|
| 気胸(ききょう:肺から空気がもれて肺が縮む状態) | 胸の痛み、息苦しさ。帰宅後に起こることもあります[5] |
| 発熱・肺炎 | 熱や咳、息苦しさ。発熱が一時的かどうかは自分では判断できません[1][5] |
| 肺・気管支からの出血 | 血痰、血液を吐き出す喀血。出血が多い場合は緊急の対応が必要です[1][7] |
検査後の発熱
2006年に日本の大学病院から報告された、70歳以上が358人中165人(46.1%)を占める研究では、検査後の発熱は全体で6.7%、肺炎は5.6%でした[8]。70歳以上に限ると、発熱3.6%、肺炎4.2%でした[8]。対象者や検査内容で頻度は変わるため、この数値をご自身の検査の危険性にそのまま当てはめることはできません[5][8]。
検査後の発熱には一時的なものもありますが、熱の高さや経過時間だけで安全とは判断できません[5]。肺炎のこともあり、その場合は抗菌薬(こうきんやく:細菌をおさえる薬)でしっかり治療します[1]。熱が出たら自己判断で様子を見続けず、検査施設に連絡して指示を受けてください。
検査後の血痰と、遅れて起こる気胸
生検をした後は、痰に少し血が混じることがあります[1]。どのくらいの量なら様子を見てよいか、どうなったら連絡するかは、帰る前に確認しておきましょう。
学会の手引き書は、生検から2時間以上たってから起こる気胸もまれではないとしています[5]。帰宅後に胸の痛みや息苦しさが出たら、検査から時間がたっていても連絡してください。胸の痛みは気胸だけでなく、心臓の病気で起こることもあります。
- 119番:急な息切れ・呼吸困難、胸や背中の突然の激しい痛み、呼びかけに返事がない[6]
- 夜間でもすぐ救急病院へ:血液を多く吐き出す、または出血が続く喀血(かっけつ)は、窒息の危険があります[7]。息苦しさを伴えば119番です[6][7]
- 検査施設へ電話:熱が出た、血痰が増える・続く、新しく咳・息切れ・胸の痛みが出たとき。強い症状は上の救急対応を優先します
検査施設に電話がつながらず、救急車を呼ぶか迷うときは、お住まいの地域の救急相談窓口(#7119など)も使えます[6]。電話では「何日に気管支鏡検査を受け、生検をしたか」を最初に伝えると、話が早く進みます。



検査後の連絡先は、スマホの電話帳と紙のメモの両方に残しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
気管支鏡検査の結果を待つ間に、相談したいとき【当院の診療時間】
気管支鏡検査の結果を待つ間に、咳や息切れ、持病の薬について相談したいときは、当院の一般外来の診療日をご確認ください。仙台空港北クリニックの院長は、呼吸器・アレルギー専門医です。
| 曜日 | 時間 |
|---|---|
| 月・火・水・金・土 | 9:00〜12:00/14:00〜18:00 |
| 日曜・祝日(2026年10月4日から) | 10:00〜15:00(昼休みなし・発熱外来のみ) |
| 木曜 | 休診 |
一般外来の診療日は月・火・水・金・土で、木曜・日曜・祝日は一般外来休診です。気管支鏡検査そのもの、検査前の薬の休み方、検査後の症状は、まず検査を受ける施設の指示を優先してください。
日曜・祝日は発熱外来のみで、10時〜15時、予約不要・当日チェックイン、点滴は行っていません。診療日と休診日はカレンダーでご確認ください。くわしくは日曜・祝日の発熱外来のお知らせと発熱外来の事前問診・当日チェックインをご覧ください。
気管支鏡検査でよくある質問
- 気管支鏡検査で、息ができなくなることはありませんか?
-
通常は呼吸を保ちながら行いますが、咳や息苦しさが出たり、鎮静薬で呼吸が弱くなったりすることがあります[1][4]。医療者が呼吸や酸素の状態を確認しながら行います。苦しいときの合図を事前に決めておきましょう[1][4]。
- CTで影がはっきり写っているのに、なぜ気管支鏡検査が必要なのですか?
-
CTなどの画像検査では、影の場所や形は分かっても、その原因を確定できないことがあります[1]。組織や細胞を調べることが、診断や治療選びに役立ちます。ただし、十分な検体が採れず診断がつかない場合もあります[1]。
- 血をサラサラにする薬は、自分の判断で何日か前から止めてもよいですか?
-
自己判断で止めないでください。薬を休むと血栓による病気の危険もあるため、休むかどうかと期間は、検査医と処方している医師が相談して決めます。お薬手帳を持って、検査を予約するときに伝えましょう[5]。
- 鎮静を受けたあと、目が覚めていれば車で帰ってもよいですか?
-
自分で車を運転して帰らないでください。目が覚めても鎮静薬の影響が残ることがあります[4]。付き添いの必要性と運転を再開してよい時期を施設に確認し、ご家族の送迎などを準備しましょう[4][5]。
- 検査の夜に熱が出ました。どうすればよいですか?
-
検査後の熱は一時的なこともありますが、肺炎のこともあります。まず検査を受けた施設の連絡先に電話し、指示を受けてください。急な強い息苦しさや胸の突然の激しい痛みがあれば、119番です[1][6]。
まとめ【気管支鏡検査は、目的と前後の準備を確認】
- 気管支鏡検査は、画像だけでは分からない影の正体を、組織や細胞で確かめる検査
- 苦しさが心配なら、局所麻酔に加えて鎮静を使えるかを相談する
- 食事・飲水・抗血栓薬は施設の指示に従い、自己判断で変えない
- 鎮静を受けた日は運転せず、付き添いの必要性と運転再開の時期を施設に確認する
- 検査後の発熱・血痰・息苦しさは検査施設へ連絡し、急な強い息苦しさや胸の激痛は119番です
気管支鏡検査は、影の正体をはっきりさせて、次の治療へ進むための大切な一歩です。分からないことは検査の前に聞いておけばOKです。私達医療者と一緒に、一つずつ準備していきましょう。
以上
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- 日本呼吸器内視鏡学会 安全対策委員会. 「気管支鏡による検査,治療について」Q&A(改訂版). 日本呼吸器内視鏡学会 一般のみなさまへ. 2023年2月7日更新. https://www.jsre.org/modules/general/index.php?content_id=1
- Horinouchi H, Asano F, Okubo K, et al. Current status of diagnostic and therapeutic bronchoscopy in Japan: 2016 national survey of bronchoscopy. Respiratory Investigation. 2019. doi:10.1016/j.resinv.2018.12.007 PMID: 30738922
- Minami D, Takigawa N, Watanabe H, et al. Safety and discomfort during bronchoscopy performed under sedation with fentanyl and midazolam: a prospective study. Japanese Journal of Clinical Oncology. 2016. doi:10.1093/jjco/hyw083 PMID: 27380809
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡診療における鎮静に関するガイドラインワーキンググループ. 呼吸器内視鏡診療における鎮静に関する安全指針. 日本呼吸器内視鏡学会. 2024年1月. https://www.jsre.org/uploads/files/info/2401_shishin.pdf
- 日本呼吸器内視鏡学会 安全対策委員会. 手引き書―呼吸器内視鏡診療を安全に行うために―第5版. 気管支学. 2025;47(2). https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsre/47/2/47_59/_article/-char/ja/
- 総務省消防庁. 救急車を上手に使いましょう〜救急車 必要なのはどんなとき?〜. 救急車利用マニュアル. 2025年12月. https://www.fdma.go.jp/publication/portal/items/portal002_japanese121.pdf
- 日本呼吸器学会. Q5. 血液を喀出(喀血)しました. 呼吸器Q&A. 参照2026年10月22日. https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q05.html
- Kanemoto K, Satoh H, Ishikawa H, et al. Prospective study of fever and pneumonia after flexible fiberoptic bronchoscopy in older people. Journal of the American Geriatrics Society. 2006. doi:10.1111/j.1532-5415.2006.00705.x PMID: 16696751
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