こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
学校で咳をしている子が増えているときに、お子さんにも熱と咳が続くと、「マイコプラズマかもしれない」「検査を受けたほうがよいのだろうか」と迷うものです。結論から言うと、学校の流行は手がかりの一つにすぎず、症状だけで原因は決まりません。検査が必要かどうかは、お子さんの経過をもとに医師が判断します。受診のときは経過を伝えてください。
本記事では、マイコプラズマを疑うときの考え方、検査の種類と結果の読み方、受診を急ぐサイン、診察で伝えること、診断後の治療と登校の確認点を解説します。
学校で咳が流行しているとき、子どもの熱はマイコプラズマ?
子どもに咳と熱が続くとき、肺炎の原因としてマイコプラズマが候補の一つになることがありますが、症状だけで決めることはできません。子どもの市中肺炎(ふだんの生活の中でかかる肺炎)をまとめた総説(これまでの研究を整理した論文)では、5歳未満ではウイルスが最も多い原因で、5歳以上では肺炎球菌に加えてマイコプラズマが重要な細菌性の原因に挙げられています。[1]同じ総説は、多くの場合、症状や診察の所見だけでは細菌による肺炎とウイルスによる肺炎を確実に見分けられないとしています。[1]
受診のときは、「クラスで咳をしている子がどのくらいいるか」と、「お子さん自身の熱と咳がいつから続いているか」を分けて伝えてください。
院長蒲生「学校で流行っています」と教えてもらえると助かります。お子さんの熱と咳がいつからかも、あわせて教えてください。
マイコプラズマの検査にはどんな種類があり、何が分かる?
子どものマイコプラズマ感染を調べる方法には、遺伝子を調べる検査、抗体検査(感染後に体が作る抗体を血液で調べる検査)、迅速抗原検査(病原体の成分を短時間で調べる検査)、培養(菌を育てて確かめる検査)があります。[2]このうちPCR(病原体の遺伝子を増やして調べる検査)は、感度(病気の人を正しく陽性と判定できる割合)と特異度(病気でない人を正しく陰性と判定できる割合)が高く、診断の基準となる検査とされています。[2]迅速抗原検査は結果が早く出て特別な設備を必要とせず、早期の診断に使えます。[2]培養は菌が育つまでに時間がかかり感度も低いため、日常の診断には勧められていません。[2]
抗体検査は感染の初期には陰性に出ることがあると、検査法を解説した報告にはまとめられています。[3]ただし、検査が使えるかどうかは医療機関によって異なります。受診のときに、そのお子さんの医療機関で使える検査を聞いてください。
| 検査 | 調べるもの | 子どものマイコプラズマ感染の診断での位置づけ |
|---|---|---|
| PCR | マイコプラズマの遺伝子 | 感度と特異度が高く、診断の基準となる検査とされています。[2] |
| 迅速抗原検査 | マイコプラズマの成分 | 結果が早く、特別な設備がいらず、早期の診断に使えます。[2] |
| 抗体検査 | 血液中の抗体 | 感染の初期には陰性に出ることがあると、検査法の解説報告にまとめられています。[3] |
| 培養 | 菌そのもの | 育つまでに時間がかかり感度も低いため、日常の診断には勧められていません。[2] |



検査は「何を調べているか」で意味が変わります。検査を受けるときは、何を調べる検査かを確かめてください。
検査で陽性なら、それがいまの熱と咳の原因と言える?
検査が陽性でも、それだけでいまの病気の原因とは言い切れないことがあります。オランダの病院と夜間の一般診療所で、3か月〜16歳の無症状の子ども405人と、呼吸器症状のある子ども321人を調べた研究があります。鼻やのどの検体からマイコプラズマの遺伝子が検出されたのは、無症状の子どもの21.2%、症状のある子どもの16.2%でした。[4]同じ研究では、PCRで菌の量を測っても、抗体検査や培養でも、無症状で菌を持っている状態と症状のある感染を区別できませんでした。[4]
この研究は、研究者自身が述べているとおり単一の研究拠点で行われ、規模も限られています。そのため、日本の子どもに同じ割合を当てはめることはできません。大切なのは、検査の結果を、熱や咳の経過、胸の音、必要に応じて画像などと合わせて医師が総合して読むということです。結果を受け取ったら、「この結果は、今の症状の原因と考えてよいですか」と確認してください。



陽性か陰性かだけでなく、症状の経過とあわせて意味を考えるのが大切です。
マイコプラズマの検査を相談するタイミングと、受診を急ぐサインは?
熱と咳が続くときは、検査が必要かどうかを医師に相談してください。学校でマイコプラズマが流行していると聞いたときは、その情報も伝えてください。
| 受診の目安 | お子さんの様子 |
|---|---|
| 今すぐ受診(夜間・休日でも) | 呼吸が速い、肩で息をする、息を吸うときに胸がへこむ、唇や顔色が青紫色または白っぽい、ぐったりして水分がとれない、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんを起こした |
| 早めに医療機関へ相談 | 熱と咳が続いていて心配なとき、咳が日ごとに強くなっているとき、薬を始めても熱が続くときは、かかりつけ医に相談してください。学校や家庭でマイコプラズマが流行しているときは、その情報もあわせて伝えてください |
| 様子を見ながら受診を検討 | 元気があり水分がとれていて、熱は下がってきたが咳が残っている。咳が強くなる、再び熱が出るといった変化があれば、早めに受診してください。息苦しそうなときは、この欄ではなく「今すぐ受診」の様子に当てはまります |
息が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりして水分がとれないときは、夜間や休日でも、朝や診療時間を待たずに受診してください。



「まだ様子を見ていいのかな」と迷ったら、その迷いごと相談に来てもらって大丈夫ですよ。
診察でマイコプラズマの検査を相談するとき、何を伝える?
子どもの肺炎は、症状や診察の所見だけでは細菌によるものかウイルスによるものかを確実に見分けられないと総説にまとめられています。[1]
診察で役立つのは、「学校で流行している」という情報に加えて、お子さん自身の経過を時間の順に伝えることです。検査をするかどうか、どの検査にするかは、年齢、症状の経過、すでに飲んだ薬、周囲の流行状況を合わせて判断されます。次の表を参考に、受診前にメモを作っておくと伝え漏れが減ります。
| 伝えること | メモの例 |
|---|---|
| 熱と咳が始まった日 | 咳は月曜から、熱は水曜の夜から |
| 咳の性質と変化 | 乾いた咳が夜にひどい、日ごとに強くなっている |
| 周囲の流行 | クラスで咳の子が数人、きょうだいも咳をしている |
| 飲んでいる薬 | 薬の名前、飲み始めた日、飲めているかどうか |
| 食事・水分・睡眠 | 水分はとれている、食欲は半分くらい |
| 持病・アレルギー | ぜんそくの有無、薬のアレルギー |
診察室で聞いておきたい質問は、次の4つです。
- この経過で、肺炎やマイコプラズマを考えますか。
- 検査をするなら、どの検査で、結果はいつ分かりますか。
- 結果によって、治療はどう変わりますか。
- どんな変化があれば、次はいつ受診すればよいですか。



「いつから」「どう変わったか」のメモがあると、検査が要るかどうかをその場で判断しやすくなります。
マイコプラズマと診断されたら、治療はどう進む?熱が下がらないときは?
子どものマイコプラズマ肺炎では、抗菌薬(いわゆる抗生物質)のうち、マクロライド系(マイコプラズマに最初に使われる種類の抗菌薬)が第一選択とされています。[5]ただし、マクロライド系抗菌薬が効きにくくなったマイコプラズマ(耐性菌)では、熱が長引くことがあります。系統的レビュー・メタ解析(複数の研究を統計的にまとめた研究)の結果もあります。マクロライド系抗菌薬が効きにくいマイコプラズマに感染した子どもは、薬が効く場合より、発熱期間が1.71日長いという結果です。[6]
耐性菌の割合は国や地域で大きく異なり、東アジアでは大多数が耐性である一方、欧州や北米では割合がかなり低いと総説にまとめられています。[5]ですから、他の国や地域の割合を、そのまま日本のお子さんに当てはめることはできません。日本の状況は、医療機関で確認してください。薬を始めても熱が下がらないときは、そのまま待たずに再受診して、治療を見直してもらってください。再受診のときは、薬の名前と飲み始めた日、きちんと飲めているか、熱の推移をメモにして見せてください。
マクロライドが効かない場合の代わりの薬としてテトラサイクリン系(別の種類の抗菌薬)がありますが、8歳未満の子どもには勧められていません。[2]薬の選択は年齢と経過をみて医師が判断します。家庭の判断で薬をやめたり、以前の残り薬を使ったりしないでください。



薬を飲んでも熱が続いて心配なときは、我慢せずに戻ってきてください。
マイコプラズマと診断されたら、学校はいつから行ける?
マイコプラズマ肺炎には、インフルエンザのように規則で決まった出席停止の日数はありません。学校保健安全法施行規則で出席停止の期間が種類ごとに定められている第二種の感染症に、マイコプラズマは含まれていないためです。「その他の感染症」を含む第三種の感染症については、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」が出席停止の基準とされています。
文部科学省のページから案内されている日本学校保健会の「学校において予防すべき感染症の解説」には、マイコプラズマ感染症の登校の基準が載っています。その文言は「症状が改善し、全身状態の良い者は登校(園)可能である」です。同じ解説によると、「その他の感染症」は特定の病気をあらかじめ定めたものではありません。学校で重大な流行が起きたときに、学校医の意見を聞いたうえで、校長が緊急的に措置をとれる仕組みです。また、マイコプラズマで出席停止の指示を出すかどうかは、地域や学校での流行の状況を考えて判断されます。
登校を再開するときは、症状が改善して全身状態が良いかを医師に確認してください。出席停止の扱いは学校によって異なるので、学校から指示がある場合は、その指示に従ってください。登校許可の書類を求められている場合は、受診のときにその旨を伝えてください。



「もう学校に行って大丈夫?」と迷ったら、診察のときに遠慮なく聞いてください。
まとめ
- 学校で咳が流行しているときの子どもの熱では、肺炎の原因としてマイコプラズマも候補になりますが、症状だけでは原因を決められません。
- 検査にはPCR、抗体検査、迅速抗原検査などがあります。陽性でも、それだけで原因とは言い切れないことがあるため、経過とあわせて医師が読みます。
- 息苦しさや顔色の悪さがあるときは、夜間や休日でも受診してください。熱と咳が続くときは、流行の情報と本人の経過を持って早めに相談してください。
- 抗菌薬を始めても熱が続くときは、耐性菌の可能性も含めて、再受診で治療を見直してもらってください。
- 登校の再開は規則で決まった日数ではなく、症状の改善と全身状態、そして学校の判断で決まります。
よくある質問
- 学校でマイコプラズマが流行しています。熱が出たらすぐに検査を受けるべきですか?
熱が出た当日から必ず検査が必要というわけではありません。5歳以上の子どもの肺炎ではマイコプラズマが重要な原因の一つですが、症状だけで細菌によるものかウイルスによるものかを見分けることは難しいとされています。[1]熱と咳が続くとき、または呼吸が苦しそうなときは、流行の情報と一緒に経過を伝えて、検査が必要かどうかを診察で確認してください。
- マイコプラズマの検査が陽性なら、必ず原因はマイコプラズマですか?
必ずしもそうとは言えません。オランダの研究では、無症状の子どもの21.2%、症状のある子どもの16.2%で、鼻やのどからマイコプラズマの遺伝子が検出されました。[4]検査の結果は、熱や咳の経過と合わせて医師が読みます。結果を受け取ったときは、症状の原因と考えてよいかを確認してください。
- マイコプラズマの薬を飲んでいるのに熱が下がりません。すぐに薬を替えるべきですか?
家庭の判断で薬を替えたりやめたりせず、再受診して医師に経過を見てもらってください。マクロライド系抗菌薬が効きにくいマイコプラズマでは、効く場合より発熱期間が長くなるという解析があります。[6]再受診のときは、薬の名前、飲み始めた日、熱の推移を伝えてください。
【免責事項】
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、個々の患者さまの病態や背景によって適切な対応は異なります。
症状にご不安がある場合は、かかりつけ医や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
- Leung AKC, Wong AHC, Hon KL. “Community-Acquired Pneumonia in Children.” Recent Pat Inflamm Allergy Drug Discov, 2018; 12(2): 136-144. DOI: 10.2174/1872213X12666180621163821 PMID: 29932038
- Gao L, Sun Y. “Laboratory diagnosis and treatment of Mycoplasma pneumoniae infection in children: a review.” Ann Med, 2024 Dec; 56(1): 2386636. DOI: 10.1080/07853890.2024.2386636 PMID: 39097794
- Wang Y, Xue C, Luo Q, Ma J, Zeng X. “Detection of Mycoplasma pneumoniae Nucleic Acid and Drug Resistance Gene.” J Vis Exp, 2025 Sep 19(223). DOI: 10.3791/68500 PMID: 41051998
- Spuesens EB, Fraaij PL, Visser EG, Hoogenboezem T, Hop WC, van Adrichem LN, et al. “Carriage of Mycoplasma pneumoniae in the upper respiratory tract of symptomatic and asymptomatic children: an observational study.” PLoS Med, 2013; 10(5): e1001444. DOI: 10.1371/journal.pmed.1001444 PMID: 23690754
- Ding G, Zhang X, Vinturache A, van Rossum AMC, Yin Y, Zhang Y. “Challenges in the treatment of pediatric Mycoplasma pneumoniae pneumonia.” Eur J Pediatr, 2024 Jul; 183(7): 3001-3011. DOI: 10.1007/s00431-024-05519-1 PMID: 38634891
- Chen YC, Hsu WY, Chang TH. “Macrolide-Resistant Mycoplasma pneumoniae Infections in Pediatric Community-Acquired Pneumonia.” Emerg Infect Dis, 2020 Jul; 26(7): 1382-1391. DOI: 10.3201/eid2607.200017 PMID: 32568052


