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睡眠時無呼吸症候群で致命を避ける為に検査とチェック法を徹底解説

睡眠時無呼吸症候群のPSG検査

こんにちは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
※当記事は文末「参考文献」を根拠としています

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を診断するための検査方法について詳しく解説する記事になります。

SAS(サス)は、大きないびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が9割を占めますが、いびきをあまりしないタイプの中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)というものもあり、一緒に寝ている家族ですら気づかないことがあります。

また、家族から「寝ている時に呼吸が止まっているよ」と指摘されてSASの疑いに気づいたとしても、風邪やケガなどと違って発熱や強い痛みなどの自覚症状がないため、「検査してみよう」と医療機関に足を運ぶ人はむしろ少数派かも知れません。

そういった理由もあってか、SASの潜在的な患者数は日本国内に200万人程度と推定されているものの、実にその85%が未診断・未治療のまま暮らしていると言われています​1,2​

しかし、SASになると睡眠の質が大幅に低下し、日中に強烈な眠気や集中力の欠如などを招いてしまうため、居眠り運転によって他人を巻き込んだ事故を起こしてしまうこともありますし、最も恐ろしいのは夜間に呼吸が停止し、低酸素によるストレスが毎晩かかり続ける事で全身の血管がいたみ、心筋梗塞や脳梗塞で突然死してしまうリスクすらある事です。

したがって、

  • 睡眠時間は十分とっているのに日中耐えがたい眠気がある
  • 集中力が欠けぎみ
  • 寝起きに頭痛がする
  • 一緒に寝ている家族の呼吸が止まっている気がする

などの症状や家族からの指摘があった場合は、できるだけ早く検査を受ける事をおすすめします。SASは主に呼吸器内科の専門分野です。まずは呼吸器内科を標ぼうしている町のクリニックを探してみてください。

目次

スマホでセルフチェック → 町の呼吸器内科 → 総合病院の順に検査

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断には、当院では大きく分けて下記の3段階をお勧めします

  1. スマホ無料アプリでセルフチェック
  2. 呼吸器内科クリニックで簡易モニター機器を借りて自宅で検査する
  3. 精密検査が必要な場合は、病院に一泊入院してPSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)を行う

この中で①はあくまで「まずは手軽にご自身のスマホでチェックしてみてはいかがでしょうか」という紹介です。②と③についてはSASのガイドラインで定められている標準的な検査方法で、これらをもとにSASの診断と重症度、および治療方法の決定を行います。

① スマホ無料アプリでセルフチェック

私は呼吸器専門医ですので、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合は、

すぐにお近くの呼吸器内科系クリニックで診てもらってください

とアドバイスいたしますが、SASは風邪などと違って「日中眠い」「集中力が欠け気味」「明け方の頭痛」と、自覚症状があいまいなものなので、患者さん自身が「医療機関に行ってみよう!」と前向きに行動する動機がなかなか生まれてきません。

そんなときは、スマホアプリで一度自分のいびきを録音すると良いと思います。iPhoneならApp Store、アンドロイドならGoogle Playストアの検索窓に「睡眠時無呼吸症候群」と入れて検索してみてください。

App Store
iPhone
Google Play Store
アンドロイド
  • いびきラボ
  • SnoreClock
  • 睡眠時無呼吸症候群チェック
  • SAS予兆チェック

上記のような無料アプリがヒットすると思います。どれでも構いませんので気になったものをスマホにインストールして、就寝前にアプリを起動して寝ている間にどれくらいのイビキが出ているかを録音してみてください。
※有料アプリもありますが無料アプリで十分です

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)という特殊なものを除いて、大きないびきが出る事が多いですので、スマホアプリの録音によってある程度「あたり」がつきます。

特に、無呼吸状態から呼吸が再開する瞬間に「ボガッ!!」と大きないびき音が確認できますので、「もしかして睡眠時無呼吸症候群かも」と気づくことが出来るかもしれません。

ただし、しょせんは「アプリ」ですので、SASの確定診断に使えるわけではなく、あくまで「気づき」のための手段です。前述したCSASはいびきがまったく出ない人も多いし、SASではないのにいびきが大きい人はいくらでもいます。

よってアプリは、「睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるのに医療機関に行くのをためらっている人の背中を押すためのツール」だと思っていただければ、手段と目的を見失わずに済むと思います。

繰り返しますがCSASの場合などはいびきが必ずしも出ませんので、アプリの録音を聞いて大丈夫そうだったとしても、日中耐え難く眠いなどの疑わしい症状がある場合は、やはり一度は医療機関で相談してみる事を強くお勧めいたします。

② 呼吸器内科クリニックで簡易モニター機器を借りて自宅で検査する

ここから先がエビデンス(医学的根拠)に基づいた検査の話になり、当院でも以下の方法で睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断を行います。

SASは睡眠時にしか診断ができないため、問診などでSASの疑いがあった場合、簡易モニター装置をレンタルで貸出しして、就寝前にセットしてもらって自宅で計測してもらいます。

睡眠時無呼吸症候群簡易モニター装置
簡易モニター装置

簡易モニターでは、無呼吸 (Apnea) および低呼吸 (Hypopnea) の回数を一晩の睡眠時間で割り戻して、1時間あたりの回数を数値化したAHI (Apnea Hypopnea Index) 指数と、就寝中の血液の酸素量(動脈酸素飽和度)の2つを主に計測します。

AHIの目安

睡眠中の無呼吸(10秒以上の呼吸停止)および低呼吸の回数を1時間あたりで割り戻した数値(AHI)が5以上でかつ冒頭で列挙したような睡眠障害の症状を伴う場合、または睡眠障害の症状がなくともAHIが15以上の場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断が確定します。その上で、SASの重症度分類は以下のようになります​1,2​

5 ~ 14回: 軽症
15 ~29回: 中等症
30回以上: 重症

ただし、自宅で簡易モニターによる検査を行う場合、多くの場合脳波や眼球運動のセンサーがついておらず、正確な睡眠時間が計測出来ない為、測定されたAHIが厳密ではない(実際よりも数値が良く出てしまう)ことがある点に注意が必要です。簡易検査の結果でそういった可能性が排除出来ない場合などは、後述するPSGという精密検査を追加します。

血液の酸素濃度

自宅での簡易モニター検査では、指先にパルスオキシメーターという機器を取り付けて一晩の動脈血酸素飽和度(SpO2)を計測します。

パルスオキシメーター
パルスオキシメーター

血液に流れる酸素量が通常の状態(SpO2が90~100%)から3%以上低下した回数を総睡眠時間で割り戻して1時間あたりの数値(3%ODI)を出し、3%ODIが5以上、あるいはSpO2が90%以下の状態が5分以上持続する場合は、睡眠時無呼吸症候群である疑いが深まります。それでかつ②の簡易検査で十分に診断が確定しない場合や、より厳密な重症度の判定を行いたい場合、入院での精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査: PSG)を受けていただく流れとなります。

ちなみに、日中にSpO2が3%低下すると、階段を上り下りするだけでゼイゼイして膝に手を置くほど息苦しいです。就寝中とはいえ3%低下が1時間に15回以上あると、まともな睡眠とは言えないのが直感的にお分かりいただけると思います。

血中の酸素飽和度が低下すると、低い酸素濃度の血液で全身の臓器をまかなわなければならなくなります。たとえば心臓は低い酸素濃度でも血液が全身を循環する回転数を上げて(頻脈にして)カバーしようとします。そうする為に交感神経系が興奮し、血圧が上昇するなどして心臓や全身の血管にストレスがかかり続ける事が、最悪の場合は心筋梗塞などで突然死してしまうような結果を招き得る理由です。
※ものすごくざっくりとした説明になってしまいますが、大筋ではこのようなところです

③ 必要な場合は入院でのPSG(終夜睡眠ポリグラフ)で精密検査を追加

簡易モニターは自宅で検査が可能である事が利点ですが、脳波や眼球運動をもとにした睡眠時間の厳密な計測が出来なかったり、体位変換の影響などでどうしても検査結果が甘めに出てしまう傾向にあります。その為、簡易モニターで明らかにAHIが高い場合(40位上)などであればその時点で後述するCPAPという機械を用いた治療の対象になるのですが、簡易検査でそこまでAHIが高くない場合などは精密検査を改めて行います。

終夜睡眠ポリグラフ(PSG)という検査で、簡易検査よりももっと沢山のセンサーをつけて眠って頂きます。検査に使う機械が仰々しいものになるので、基本的には1泊入院する必要があり、検査が可能な病院に紹介して検査を受けていただきます。

PSG(終夜睡眠ポリグラフ)

サッカー通がPSGと聞くと「ムバッペやネイマールがいるパリサンジェルマンのこと?」からの「ムバッペじゃなくてエムバペだろ!」とエムバペ・ムバッペ論争に脱線する向きもあるかと思いますが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を確定診断するためにPSG(終夜睡眠ポリグラフ)という検査を行います。

医学は小難しくなかなか頭に入っていかないと思います。よって、「睡眠時無呼吸症候群の精密検査の為にパリサンジェルマン(PSG)をするんだ」と覚えるのは案外とアリかも知れません。

PSGのネイマールとムバッペ

一言でいえば、「全身にいろんな管(くだ)を巻いて一晩寝る」のがPSGです。いくつものセンサーで寝ている時の体の状態を事細かに記録し、主に以下の項目を参考にしてSASの確定診断および重症度を測ります。痛みなどは一切ありません。

  1. 呼吸状態の評価
  2. 睡眠状態の評価(脳波や眼球運動など)
  3. 循環器検査
  4. その他(てんかん・歯ぎしりの判定など)
Polysomnography
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)

1. 呼吸状態の評価

PSGでは、体位センサーも含め体の状態を詳細にモニター出来、より厳密なAHIの計測が可能です。

鼻の気流・胸部の動き・腹部の動き、の3点から1時間あたりにどれくらいの頻度で無呼吸(および低呼吸)が起きているか、および呼吸努力があるかどうかを評価します。

特に注意するのが、レアなSASである中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)でみられる事がある、チェーンストークス呼吸がないかどうかです。

チェーンストークス呼吸は、脳血管疾患や心不全、腎不全が原因で起こるものとされており、チェーンストークス呼吸を伴う心不全はこれを伴わない心不全より2倍以上も死亡率が高くなってしまうとされております​3​

2. 睡眠状態の評価(脳波や眼球運動など)

PSG(終夜睡眠ポリグラフ)では就寝中の脳波や眼球運動、筋電図なども測定して眠りの状態を評価します。

レム睡眠やノンレム睡眠という言葉を聞いたことがありますでしょうか。簡単に説明すると、脳が活発に動いているのがレム睡眠(夢を見るのはこの時とされます)で脳が休んでいるのがノンレム睡眠です。また、ノンレム睡眠は3段階に分かれており、stageN1 → stageN3の順に眠りが深まります。レム睡眠→ノンレム睡眠 (stageN1 → stageN3) →レム睡眠とおよそ90分程度の間隔で睡眠の段階が推移するのが良質な睡眠とされます。

正常成人の睡眠経過図
文献​1,2​より、正常成人の睡眠経過図
W: 覚醒、 R: レム睡眠、N1 – 3: ノンレム睡眠

ノンレム睡眠が深くなる程(=眠りが深くなる程)筋肉の緊張が解け、舌が落ちて閉塞しやすい為、無呼吸が現れやすくなります。無呼吸が起こると低酸素の刺激で眠りが浅くなり、深いノンレム睡眠(stageN3)の割合が低下します。また睡眠経過の規則性も失われてしまいます。

8時間以上睡眠時間を確保できたとしても、最も脳が休息できるはずのノンレム睡眠で脳が休めていない状態になってしまうので、その結果として日中に脳が休息を欲しくなって眠くなったり、集中力が欠如したりする事になります。

3. 心電図検査

睡眠時無呼吸症候群(SAS)になると、心臓や脳をはじめとした全身の血管に障害が出やすくなります。実際、無呼吸による低酸素によって心臓に負担がかかっている事を示す心電図変化(ST低下や不整脈)が出現する事が知られており​2​、PSGでは心電図も同時にモニターします。

SASと心臓や脳血管の疾患が併発すると、

  1. 心臓や脳血管の疾患によってSASが悪化(OSASにCSASが加わるなど)
  2. SASによって心臓や脳血管疾患が悪化

この①と②の悪循環が止まらなくなってしまうリスクがあります。よって、SASを疑ったり診断が確定したりした場合は、こういった心臓や脳血管の病気が隠れていないかを必ず頭に入れて診療していく必要があります。

4. その他(てんかん・歯ぎしりの判定など)

病院に一泊して行うPSG(標準・睡眠ポリグラフ検査)では、その他にも様々な検査を行います。

  • 覚醒反応
  • 周期性四肢運動の判定
  • 歯ぎしりの判定
  • 異常所見の有無(てんかん・睡眠随伴症の有無)
  • 動脈血中酸素飽和度(パルスオキシメーター)

ここで気づいていただきたいのは、細かな検査の内容ではなく、

「睡眠一つとってもこれだけ精密に検査しないといけない場合がある」

ということです。別な観点でお話しすると、

「今は眠い以外特に痛いとか苦しいなどの症状がないのにも関わらず、どうしてわざわざ入院までして仰々しい機械をつけて検査をしなければならないか?」

「そんな大がかりな検査を行う価値がどうしてあるのか?」

という事です。

確かに多くのSASは、いますぐどうこうなってしまうというような緊急性のある疾患という訳ではありません。しかしながら、治療が必要な程度のSASを放置してしまうと8年間で死亡率が37%にも及ぶという報告​4​があるとおり、中長期的に見て決して甘く見て良い病気でもありません。

加えて、SASに適切な治療介入を行い、問題ないレベルまで無呼吸の程度を抑える事が出来れば、SASが無い人と同じ程度まで心血管疾患による死亡率を下げる事が可能な病気でもあります​5​

このように死亡率が比較的高く、かつ治療によってそのリスクをほぼゼロまで下げられる病気というのは、現代医学の水準をもってしても決して多くあるわけではありません。リスクをきちんと認識し、早期から適切に治療を行う事で将来のリスクをきちんと下げられる病気である、という点で、大がかりな検査をしてまで診断をつける価値は十分にあるのだという事が少しでも伝われば幸いです。

まずは呼吸器専門医に相談してください(まとめ)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合は、なるだけ早く呼吸器専門医がいるクリニックに行って簡易モニター検査を受ける事が大切です。

SASをセルフチェックするためのスマホアプリは、たとえ有料版のものであっても参考程度にしかなりませんので、足が重いかも知れませんが、

“睡眠時無呼吸症候群 クリニック”
“呼吸器専門医 最寄り駅名”

などの検索キーワードでググってお近くの医療機関を受診してほしいのです。

google検索

簡易検査だけで判断がつかない場合などは、地域の中核病院に入院しての一泊二日の精密検査(PSG)を追加しなければならない事があります。その場合はPSGが可能な病院に適宜紹介致します。

以上

参考文献

  1. 1.
    日本呼吸器学会 睡眠呼吸障害研究会. 成人の睡眠時無呼吸症候群 診断と治療のためのガイドライン. 日本呼吸器学会; 2005.
  2. 2.
    日本循環器学会, 日本呼吸器学会, 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会. 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン. 日本循環器学会; 2012. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2010momomura.h.pdf
  3. 3.
    Javaheri S, Shukla R, Zeigler H, Wexler L. Central Sleep Apnea, Right Ventricular Dysfunction, and Low Diastolic Blood Pressure Are Predictors of Mortality in Systolic Heart Failure. Journal of the American College of Cardiology. Published online May 2007:2028-2034. doi:10.1016/j.jacc.2007.01.084
  4. 4.
    He J, Kryger M, Zorick F, Conway W, Roth T. Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea. Experience in 385 male patients. Chest. 1988;94(1):9-14. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3289839
  5. 5.
    Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AG. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. The Lancet. Published online March 2005:1046-1053. doi:10.1016/s0140-6736(05)71141-7
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