こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
赤ちゃんに熱があり、母乳やミルクを飲む量も減っていると、RSウイルス(乳幼児の風邪や細気管支炎の主な原因となるウイルス)の感染なのか、呼吸は苦しくないのかと、心配が重なります。
本記事では、呼吸と飲み方のどこを見ればよいか、飲めないときにどう動けばよいか、受診で何を伝えればよいかを解説します。検査と治療の考え方、熱が長引くときに別の病気が重なること、重くなりやすい赤ちゃんの特徴も説明します。
赤ちゃんの発熱と哺乳量の低下は、RSウイルス感染でみられる症状?
RSウイルス感染では、発熱や哺乳の異常(母乳やミルクの飲み方の変化)が、5歳以下の子どもで多く報告されています。[1] ただし、この2つだけでRSウイルス感染と決めることはできません。
5歳以下の子どもを対象にした系統的レビュー(多くの研究をまとめて調べた報告)がありました。25件の研究で、鼻水・鼻づまり、せき、息苦しさ、哺乳や食事の異常、発熱が、子どもの40%以上に報告されていました。[1]
一方で、RSウイルス感染は、熱がほとんどない、または出ない鼻やのどの炎症として現れることもあります。[2] 熱が低くても、RSウイルス感染がないとは言えません。
| 症状 | RSウイルスに感染した5歳以下の子どもでの報告 |
|---|---|
| 鼻水・鼻づまり、せき、息苦しさ | 5歳以下の子どもを対象にした25件の研究で、子どもの40%以上に報告されていました。[1] |
| 哺乳や食事の異常、発熱 | 同じ5歳以下の子どもの研究で、哺乳や食事の異常と発熱も子どもの40%以上に報告されていました。[1] |
| 熱がほとんどない鼻やのどの炎症 | RSウイルス感染は、熱がほとんどない、または出ない鼻やのどの炎症として現れることがあると説明されています。[2] |
院長蒲生熱の高さだけで安心せず、飲み方と呼吸の様子もあわせて見てあげてください。
熱が出た時刻と、いつもより飲まなくなった時期は、受診のときに伝えられるよう覚えておいてください。
RSウイルス感染の赤ちゃんは、どんな経過をたどり、呼吸のどこを見る?
RSウイルスによる細気管支炎(肺の奥の細い気道に炎症が起きる病気)では、通常、発熱・鼻水・鼻づまりなどの風邪のような症状が2〜4日続いたあとに、せきの増加、ゼーゼー、呼吸に力が必要な様子へ進むと説明されています。[3] 初期には、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、発熱が出るとされています。[4] 小児科の総説(複数の報告をまとめた解説)でも、鼻づまり、鼻水、軽い熱が最初の1〜3日に出て、その後数日かけて症状が強くなり、日数から週単位で落ち着くとされています。[5]
RSウイルス細気管支炎で、感染が肺に近い空気の通り道(下気道)に広がったときの徴候として、せき、呼吸が速いこと、陥没呼吸(息をするたびに胸の一部がへこむ状態)、哺乳の困難、呼吸を助ける筋肉を使うことが挙げられています。[4] ゼーゼーという音は、鼻水や発熱などの症状に続く下気道の症状として説明されています。[3]
| 見るところ | 医学資料での記述 | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 呼吸の速さ | RSウイルス細気管支炎で下気道に感染が広がったときの徴候として、呼吸が速いことが挙げられています。[4] | 「静かにしているのに、息が速い状態が続いています」 |
| 胸のへこみ | RSウイルス細気管支炎で下気道に感染が広がったときの徴候として、陥没呼吸(息をするたびに胸の一部がへこむ状態)が挙げられています。[4] | 「息を吸うたびに胸がへこみます」 |
| ゼーゼー音 | RSウイルス細気管支炎では、ゼーゼーという音が下気道の症状として挙げられています。[3] | 「いつからゼーゼーしているか」を時刻で伝える |
| 飲み方 | RSウイルス細気管支炎で下気道に感染が広がったときの徴候として、哺乳の困難が挙げられています。[4] | 「1回に飲む量と、飲む回数がどう変わったか」を伝える |



胸がペコペコへこむ、息が速くて苦しそうというときは、様子見にせず受診してください。
赤ちゃんが落ち着いているときに、服をゆるめて胸とおなかの動きを見ておくと、呼吸の様子を医師に具体的に伝えられます。
哺乳量が減ったとき、水分について何を医療者に伝える?
哺乳量が減ったときは、いつもと比べた飲む量・回数、おしっこの回数、機嫌や反応の変化を記録して、医療者に伝えてください。飲もうとするとすぐ息が苦しそうになる様子も、あわせて伝えてください。
RSウイルスによる細気管支炎では、酸素を保つことに加えて、水分と栄養を保つことが治療の柱の一つとされています。口から飲んで水分を保てない乳児には、必要に応じて、鼻から胃へ入れる管(経鼻胃管)や点滴で水分を補うことがあります。[3][4]
管や点滴が必要かどうかは、診察を受けて医療者が判断します。
| 家庭で見るサイン | 受診の考え方 |
|---|---|
| いつもより飲む量や回数が明らかに減っている赤ちゃん | 飲む量や回数の減り方を医療者に伝え、早めに医療機関へ相談してください。 |
| おしっこの回数が減っている赤ちゃん | 回数の変化を記録して医師に伝え、早めに相談してください。 |
| ぐったりして反応が弱い赤ちゃん | 夜間でも受診をためらわないでください。 |
| 飲もうとすると息が苦しそうになる赤ちゃん | 息が苦しそうになって飲めないときは、飲み方と呼吸の様子を伝えて、受診してください。 |



飲む量が減ったときは、おしっこの回数と機嫌もあわせて見ておいてくださいね。
RSウイルス感染の診断に検査は必要?
米国小児科学会の指針を紹介した総説では、細気管支炎は症状と診察の所見で診断するのが基本とされています。[3] 別の総説(迅速レビュー)でも、胸部エックス線検査やウイルス検査を日常的に行うことは勧められていません。[4]
ここで紹介した米国の指針や総説の方針は、日本の国や医療機関によって異なる場合があります。検査の必要性と目的は、診察で医師に確認してください。



検査のことは、診察でご相談しましょうね。
RSウイルスの治療は何をする?
RSウイルス細気管支炎の治療は、体を支える支持療法が中心です。迅速レビュー(短期間でまとめた文献調査)では、酸素飽和度(血液中の酸素の割合)を90%超に保つこと、必要なら経鼻胃管や点滴で水分と栄養を保つことが挙げられています。[4] 気管支拡張薬、アドレナリン、高張食塩水の吸入、ステロイド、胸部の理学療法は勧められていません。[4]
小児科の総説でも、鼻の吸引、酸素(低酸素のとき)、水分補給が支持療法として挙げられています。気管支拡張薬や全身ステロイドは、1〜23か月の乳幼児で勧められていません。[5]
熱が続くときは、中耳炎や肺炎のような別の病気が重なっていないか確かめるため、受診して相談してください。
| 治療の内容 | RSウイルス細気管支炎の乳幼児での位置づけ(総説・指針) |
|---|---|
| 酸素、水分、栄養を保つ支持療法 | 酸素・水分・栄養を保つ支持療法を行うことが挙げられています(迅速レビュー)。[4] |
| 気管支拡張薬、全身ステロイド(飲み薬・注射) | RSウイルス細気管支炎の1〜23か月の乳幼児では勧められていません(小児科の総説)。[5] |



治療の中心は、呼吸と水分を支えることです。飲めないときは早めに相談してくださいね。
乳児に市販薬や家にある薬を使う前には、必ず医師や薬剤師に相談してください。自己判断で飲ませないでください。
熱が長引くとき、RSウイルス感染の合併症は心配ですか?
RSウイルス感染でいちばん多い合併症(もとの病気に重なって起こる別の病気)は、急性中耳炎だという指摘があります。[2] 熱がなかなか下がらないときは、中耳炎や肺炎が重なっていないか確かめるため、受診して相談してください。



熱が長引いたり、耳をしきりに触って機嫌が悪かったりするときは、受診して相談してください。
月齢の低い赤ちゃんや早産の赤ちゃんは、重くなりやすい?
月齢の低い赤ちゃんや早産の赤ちゃんは、入院した子どもを対象にした研究で、重い経過と関連していました。月齢3か月以下、早産、無呼吸(呼吸が止まること)が重い経過の危険因子とされています。[6]
ただし、米国の小児病院で行われた研究では、RSウイルスによる急性呼吸器感染症で入院した子どもの多くは、もともと健康な子どもだったと指摘されています。同じ研究で、RSウイルス陽性の子どもでは、月齢が低いことが入院と関連していました。[7] 背景に心配がない赤ちゃんでも、飲み方や呼吸に変化があれば受診してください。
| 赤ちゃんの背景 | 受診のときの考え方 |
|---|---|
| 月齢が3か月以下の赤ちゃん | 飲み方や呼吸にいつもと違う様子があれば、早めに受診してください。受診のときに月齢を伝えてください。 |
| 早産で生まれた赤ちゃん | 飲み方や呼吸にいつもと違う様子があれば、早めに受診してください。受診のときに、早産で生まれたことを伝えてください。 |
| 呼吸が止まるように見えた赤ちゃん | 呼吸が止まるように見えたときは、すぐに救急車を呼んでください。 |



心配な背景があるときほど、ためらわずに相談してくださいね。
飲み方や呼吸にいつもと違う様子があれば、早めに受診してください。早産で生まれたことや月齢の低さは、受診のときに伝えてください。
赤ちゃんの発熱と哺乳量の低下で受診するとき、伝えると役立つことは?
受診では、症状の始まりと経過、呼吸の様子、哺乳量、おしっこの回数、赤ちゃんの生まれ方を伝えてください。細気管支炎は症状と診察の所見で診断するのが基本とされているため、見たままの様子が診断の手がかりになります。[3]
| 伝えること | 具体的な内容 |
|---|---|
| 症状の経過 | 熱が出た時刻、鼻水やせきが始まった日、熱の変化を書き留めてください。 |
| 呼吸の様子 | 呼吸が速い、胸がへこむ、ゼーゼーする、息が止まるように見えたことがあれば伝えてください。 |
| 哺乳と水分 | いつもと比べた哺乳量、授乳の回数、おしっこの回数を伝えてください。 |
| 赤ちゃんの背景 | 月齢、早産で生まれたか、持病があるかを伝えてください。 |
| 家族や周囲の状況 | 家族や園に、せきや鼻水のある人がいるかを伝えてください。 |



メモやスマートフォンで撮った呼吸の動画があると、診察がずっと分かりやすくなります。
呼吸が苦しそう、ぐったりして反応が弱い、水分がほとんどとれないときは、夜間でも受診してください。
まとめ
- 発熱や、母乳やミルクを飲む量の減りはRSウイルス感染でよくみられますが、熱が目立たないこともあり、症状だけで決めることはできません。
- 呼吸の速さ、胸のへこみ、ゼーゼーという音に加えて、飲み方の変化(哺乳の困難)も、確認して医療者に伝えたい点です。
- 治療は水分・栄養・酸素を支えることが中心です。
- 月齢の低い赤ちゃんや早産の赤ちゃんは、入院した子どもの研究で重い経過と関連していました。
- 水分がとれない、呼吸が苦しそう、ぐったりしているときは、夜間でも受診してください。
よくある質問
- 赤ちゃんに熱がなくても、RSウイルス感染の可能性はありますか?
あります。RSウイルス感染は、熱がほとんどない、または出ない鼻やのどの炎症として現れることがあると説明されています。[2] 熱がなくても、呼吸の速さや哺乳量の低下があれば、受診して相談してください。
- RSウイルス感染かどうかを調べる検査は、必ず受けるものですか?
必ず受けるものではありません。米国の指針を紹介した総説では、細気管支炎は症状と診察で診断し、診断のための検査は日常的には勧められないとされています。[3] 検査が必要かどうかは診察で医師が判断しますので、気になる症状があれば受診してください。
- 赤ちゃんが飲めないとき、点滴や管が必要になることはありますか?
あります。口から飲んで水分を保てない乳児には、鼻から胃へ入れる管や点滴で水分を補うことがあります。[3] 必要かどうかは診察で医療者が判断するため、飲む量がいつもより明らかに減ったら受診してください。
- 早産で生まれた赤ちゃんは、特に注意が必要ですか?
入院した子どもを対象にした研究では、早産は酸素投与や呼吸不全と関連していました。[6] 早産で生まれたことは、受診のときに必ず伝えてください。
【免責事項】
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、個々の患者さまの病態や背景によって適切な対応は異なります。
症状にご不安がある場合は、かかりつけ医や専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
- Colosia A, Costello J, McQuarrie K, Kato K, Bertzos K. “Systematic literature review of the signs and symptoms of respiratory syncytial virus.” Influenza Other Respir Viruses, 2023 Feb; 17(2): e13100. DOI: 10.1111/irv.13100 PMID: 36824394
- Casalegno JS. “[RSV and associated diseases].” Rev Prat, 2022 Oct; 72(8): S5-S7. PMID: 36512000
- Smith DK, Seales S, Budzik C. “Respiratory Syncytial Virus Bronchiolitis in Children.” Am Fam Physician, 2017 Jan 15; 95(2): 94-99. PMID: 28084708
- Oppenlander KE, Chung AA, Clabaugh D. “Respiratory Syncytial Virus Bronchiolitis: Rapid Evidence Review.” Am Fam Physician, 2023 Jul; 108(1): 52-57. PMID: 37440737
- Lowe MC. “Childhood Respiratory Conditions: Lower Respiratory Tract Infection.” FP Essent, 2022 Feb; 513: 20-24. PMID: 35143151
- Kobiałka M, Jackowska T, Wrotek A. “Risk Factors for Severe Respiratory Syncytial Virus Infection in Hospitalized Children.” Viruses, 2023 Aug 09; 15(8): 1713. DOI: 10.3390/v15081713 PMID: 37632055
- Haddadin Z, Beveridge S, Fernandez K, Rankin DA, Probst V, Spieker AJ, et al. “Respiratory Syncytial Virus Disease Severity in Young Children.” Clin Infect Dis, 2021 Dec 06; 73(11): e4384-e4391. DOI: 10.1093/cid/ciaa1612 PMID: 33095882


