お急ぎの方へ
- 子どもの気管支炎の咳は平均17.8日と長く続くことがあるが、多くはウイルスが原因で、対症療法が中心になる[1]
- 意識がおかしい、けいれんしている、声が出せないほど息が苦しいときは迷わず119番[2]
- 咳が10日以上続く、ゼーゼーする、百日咳のような咳は肺炎・喘息・百日咳の可能性があるので受診する[1][3]
おはようございます。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
お子さんの咳が続くと、「このままで大丈夫だろうか」「肺炎になっていないだろうか」と心配になりますよね。痰のからんだ咳が何日も続くと、なおさら不安になるものです。
結論から申し上げると、急性気管支炎は咳を主症状とする下気道(かきどう:気管や気管支など、空気の通り道)の炎症で、発熱や痰の有無は問いません[1]。原因の多くはウイルスで、咳は長く続くことがあります[1]。
本記事では、子どもの気管支炎の経過、肺炎・喘息・百日咳との見分け方、119番のサイン、家庭でのケア、抗菌薬が必要になるのはどんなときかを、呼吸器専門医の立場から解説します。
その前に、日曜・祝日の発熱外来のご案内です。インフルエンザやコロナのPCR検査(ピーシーアール検査:ウイルスの遺伝子を増やして見つける検査)は、当日中に結果が分かります。
2026年10月4日から、日曜・祝日も発熱外来を行っています
10時〜15時(昼休みなし)。予約は不要で、当日チェックインで受け付けます。PCR検査は当日中に結果をお伝えします。日曜・祝日は発熱外来のみで、一般外来と点滴は行っていません。10月25日(日)は休診で、11月からは原則として毎週日曜日と祝日です。日曜・祝日の発熱外来のお知らせ
【結論】子どもの気管支炎の咳は、どのくらい続く?
結論から申し上げると、急性気管支炎の咳は長く続くことがあります。厚生労働省の手引きでは、急性気道感染症による咳は2〜3週間続くことも少なくなく、平均17.8日間持続すると報告されています[1]。
海外のシステマティックレビュー(複数の研究をまとめた解析)では、急性の咳があった子どもの90%が25日までに咳が消えたと報告されています[4]。これは、2〜3週間の咳がめずらしくないことを裏づける数字です。
| 出典 | 咳の続き方 |
|---|---|
| 厚生労働省の手引き[1] | 平均17.8日(2〜3週間続くことも少なくない) |
| システマティックレビュー[4] | 90%の子どもが25日までに消失 |
ただし、これは「25日までは様子を見てよい」という意味ではありません。長引くときは、別の病気がかくれていないかを確かめる必要があります。
院長蒲生咳が長いこと自体はめずらしくありません。大事なのは「経過のなかで、咳の様子が変わってきたか」を見ることです。
急性気管支炎は、ふつうのかぜや肺炎とどこが違う?
急性気管支炎は、咳を主症状とする下気道の炎症で、はっきりした診断基準はなく、肺炎が除外されたものをいうことが多いです[1]。ふつうのかぜとの線引きはあいまいで、肺炎かどうかの見極めが大切になります。
原因のほとんどはウイルスですが、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳菌にも注意が必要です[1]。痰の色の変化だけでは、細菌が原因かどうかは判断できないと指摘されています[1]。
発熱が続くとき、呼吸が苦しそうなときは、肺炎や膿胸(のうきょう:肺のまわりに膿がたまる状態)、気道異物(気管に物が入ること)を考える必要があります[1]。これらは見逃したくないサインです。
肺炎・喘息・百日咳は、どう見分ける?
ひとくちに「咳が続く」といっても、見分けたい病気がいくつかあります。まずは次の表で違いをつかんでください。
| 病気 | 見分けるポイント |
|---|---|
| 肺炎 | 高熱が続き、ひどい咳や痰のからむ咳、活気と食欲の低下がみられます[3]。発熱の持続や呼吸障害があるときは、肺炎・膿胸を除外するために検査が考えられます[1] |
| 百日咳 | 発作的に短い咳が連続し、息を吸うときに笛のような音(笛声)が出ます。咳き込んだ後の嘔吐や夜間の発作も特徴です。熱はないか微熱程度です[5]。1歳以上では、こうした特徴に加えて1週間以上の咳があることが、臨床的な百日咳の条件とされています[1] |
| 喘息 | 息を吐くときにゼーゼーします[2]。咳が3週間以上続くときは、喘息や百日咳の可能性が高くなります[6] |
| 気道異物 | 突然むせて咳き込み、呼吸が苦しそうなときは、異物を誤って飲み込んだ可能性があります。すぐ救急車を要請します[7] |
百日咳は、年齢が小さいほど症状がはっきりしないことがあります。乳児期早期では特徴的な咳がなく、息を止めているような無呼吸発作から始まることもあります[5]。周りで百日咳が流行っているときは、早めに相談してください[1]。
百日咳のくわしい経過は百日咳の記事、ゼーゼーする喘息的(ぜんそくてき)な咳の管理は子どもの喘息の記事をご覧ください。一般的な咳の受診目安は子どもの咳の記事にまとめています。
【受診を急ぐサイン】どんなときに119番?その日のうちに受診するのは?
すぐ119番
次のどれか1つでもあれば、迷わず119番に電話してください。夜間・休日でも同じです[2]。
- 意識がおかしい、呼びかけに反応がない、ぼーっとしている
- けいれんしている
- 声が出せないほど息が苦しい、唇が紫色(チアノーゼ)
- 突然むせて咳き込み、呼吸が苦しそう(異物誤えん。すぐ救急車を要請します)[7]
早めに受診(その日のうちに)
次のようなときは、早めにかかりつけ医を受診してください[3]。
- 咳が連続して出て、治まらない
- いつもと違う、変な音の咳をしている
- 咳とともに吐いてしまい、水分や食事がとれない
- 唇や爪の色が白っぽい、青や紫色をしている
- 息を吸うと小鼻が開く、胸がペコペコへこむ
- 話すのが苦しい、歩けない、横になれない、眠れない
- 6か月以下のお子さんは、症状がなく元気そうでも一度受診する[3]
呼吸の苦しさを見るポイント
呼吸が苦しいときは、次のような様子が見られます[7]。胸やおなかが上下する回数を1分間数えると、ご家庭でも確かめられます。
- 呼吸が速い、肩を上下させる(肩呼吸)
- 胸やのどが呼吸のたびに引っ込む(陥没呼吸)
- 横になれない(起坐呼吸)、小鼻をピクピクさせる(鼻翼呼吸)
- 呼吸のたびにゼイゼイ、ヒューヒュー音がする(喘鳴)
1分間の呼吸数の目安は、新生児で40〜50回、乳児で30〜40回、幼児で20〜30回です[7]。これを大きく超えて苦しそうなときは、早めに受診してください[7]。
夜間・休日で判断に迷うときは、お住まいの地域の小児救急電話相談「#8000」を利用できます(実施自治体により利用時間が異なります)[2]。ただし、明らかに危ないサインがあるときは、相談をはさまず119番です。
家庭でできるケアは?
咳は、気道の通りをよくするための体の反応です。次のようなケアで楽にしてあげましょう[2]。
- 楽な姿勢(上体を起こす)で、落ち着かせる
- 運動は控えて安静にさせる
- 部屋の換気(タバコの煙は避ける)、加湿
- 水分補給
- 鼻の掃除(鼻水の吸引)
咳込んだときは、前かがみの姿勢にして背中をさするか、軽くタッピングします。乳児は立て抱きにして背中をさすってあげてください。午睡中は上半身を高くし、水分は少量を頻回にとるのがコツです[7]。
はちみつは咳に効果があるとされていますが、1歳未満のお子さんには絶対に与えないでください。乳児ボツリヌス症の危険があります[2]。くわしくは乳児ボツリヌス症の記事をご覧ください。
薬を使うかどうかは、診察のうえで医師が判断します。市販薬を使った場合は、受診のときにその薬を伝えてください[2]。
抗菌薬は、どんなときに必要になる?
咳の原因の多くはウイルスで、その場合は咳や熱を和らげる対症療法が中心になります[1]。一方で、抗菌薬(こうきんやく:細菌をやっつける薬)が必要になる場合もあります。
百日咳が疑われる、または診断された場合は、マクロライド系抗菌薬を投与することが推奨されています[1]。百日咳の抗菌薬は、特にカタル期(発症初期)では有効とされています[5]。マイコプラズマ肺炎でも、抗菌薬による治療が行われます[8]。
また、湿性の咳(痰のからむ咳)が10日以上続き、よくならないときは、遷延性細菌性気管支炎や副鼻腔炎を疑って、アモキシシリンの投与を考慮します[1]。
一般的な急性気管支炎では、抗菌薬の平均的な効果は小さく、副作用はやや増えるという報告もあります[9]。ただしこれは子どもに限らず、肺の持病がない人を対象とした解析です[9]。だからこそ、原因が細菌かどうかを医師が診察して見極めることが大切です。必要と判断されたときは、処方どおり最後まで飲み切り、以前の余った抗菌薬を自己判断で使うのはやめましょう。



抗菌薬は、必要なお子さんに、必要なときだけ使う薬です。使うかどうかの判断は、診察でさせてください。
受診するときは、何を伝えればいい?
診断を早めるために、次のことを伝えてください。メモにしてお持ちいただくと、診察がスムーズです[3]。
- いつから咳が出ているか、長く続いているか
- どんな薬を飲んでいるか、他にかかった医師はいるか
- 咳の特徴(どんなふうに出るか、どの時間帯に出やすいか)
- 熱があるか、ゼイゼイするか、苦しそうか
- 食欲、ミルクの回数
- 今まで喘息と言われたことがあるか
よくある質問(FAQ)
- 子どもの咳が1週間続いています。受診したほうがいいですか?
-
1週間続く咳でも、受診して相談して構いません。急性気管支炎の咳は平均17.8日続くこともありますが[1]、10日以上続いてよくならない、ゼイゼイする、夜眠れないときは、特に受診してください[1][7]。声が出せないほど息が苦しい、意識がおかしい、けいれんしているときは119番です[2]。
- 痰の色が黄色や緑なら、抗菌薬が必要ですか?
-
痰の色では、細菌かどうかは判断できないとされています[1]。抗菌薬が必要かどうかは診察で決まります。百日咳やマイコプラズマ、遷延性細菌性気管支炎などが疑われたときに検討されます[1]。
- 百日咳かもしれないと思ったら、どうすればいいですか?
-
発作的に短い咳が連続する、息を吸うときに笛のような音が出る、咳き込んだ後に吐く、夜間に発作が出る、といった特徴があります。熱はないか微熱です[5]。早めに受診し、周りの赤ちゃんにうつさないよう注意してください[5]。
- 夜に咳がひどくなります。どうすればいいですか?
-
夜間は気道が敏感になり、寝てから早朝にかけて咳が出やすくなります[3]。上体を起こす、加湿する、水分をとるなどのケアを試してください[2]。眠れないほど続くときは受診してください[7]。
- 1歳未満です。はちみつをあげてもいいですか?
-
いいえ。はちみつは1歳未満のお子さんには絶対に与えないでください。乳児ボツリヌス症の危険があります[2]。
- けいれんしました。どうすればいいですか?
-
けいれんしているときは、迷わず119番に電話してください[2]。意識がおかしい、声が出せないほど息が苦しいときも同じです[2]。
まとめ【咳が続くときは、変化と受診のサインを見る】
- 子どもの気管支炎の咳は平均17.8日と長く続くことがあるが、多くはウイルスが原因で、対症療法が中心になる[1]
- 意識がおかしい、けいれんしている、声が出せないほど息が苦しいときは迷わず119番[2]
- 咳が10日以上続く、ゼーゼーする、百日咳のような咳は肺炎・喘息・百日咳の可能性があるので受診する[1][3]
- 夜眠れない咳、水分がとれない、呼吸が速いときも、その日のうちに受診する[3][7]
- 抗菌薬は、百日咳やマイコプラズマ、遷延性細菌性気管支炎などが疑われたときに必要になることがある[1]
お子さんの咳が続くと心配なものですが、咳の様子の変化や受診のサインに気づいたら、どうぞそのまま私達に伝えてください。医療は私達におまかせください。
以上
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課. 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編. 厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001630903.pdf
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方」プロジェクト. 上手な医療のかかり方(子ども編). 上手な医療のかかり方.jp. 参照 2026年10月. https://kakarikata.mhlw.go.jp/assets/pdf/slide.pdf
- 東京都. せきが出る ゼイゼイする-解説-. 東京都こども医療ガイド. 参照 2026年10月. https://www.guide.metro.tokyo.lg.jp/symptom/seki/index.html; 東京都. 熱が出た-解説-. 東京都こども医療ガイド. 参照 2026年10月. https://www.guide.metro.tokyo.lg.jp/symptom/netsu/index.html
- Thompson M, Vodicka TA, Blair PS, Buckley DI, Heneghan C, Hay AD; TARGET Programme Team. Duration of symptoms of respiratory tract infections in children: systematic review. BMJ. 2013 Dec;347:f7027. doi:10.1136/bmj.f7027 PMID: 24335668
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS). 百日咳(詳細版). 感染症情報提供サイト. 参照 2026年10月. https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/pertussis/detail/index.html
- Bergmann M, Haasenritter J, Beidatsch D, Schwarm S, Hörner K, Bösner S, et al. Coughing children in family practice and primary care: a systematic review of prevalence, aetiology and prognosis. BMC Pediatr. 2021 Jun;21(1):260. doi:10.1186/s12887-021-02739-4 PMID: 34088294
- こども家庭庁. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)別添3 ⑤咳の時の対応. こども家庭庁ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cd6e454e/20231010_policies_hoiku_25.pdf
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS). マイコプラズマ肺炎. 感染症情報提供サイト. 参照 2026年10月. https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/mycoplasma-pneumoniae-infection/index.html
- Smith SM, Fahey T, Smucny J, Becker LA. Antibiotics for acute bronchitis. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jun;6(6):CD000245. doi:10.1002/14651858.CD000245.pub4 PMID: 28626858
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