お急ぎの方へ
- 溶連菌感染症のあとには、数週間後に腎炎(急性糸球体腎炎)を合併することがある。のどの感染のあと1〜2週間ごろ、皮膚のあとは2〜6週間ごろが目安[1]
- 意識がおかしい、けいれんしている、急に息が苦しいときは119番
- コーラ色の尿、まぶたのむくみ、尿が少ない、血圧が高いときは早めに受診し、尿を調べてもらう[2]
おはようございます。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
お子さんが溶連菌(A群溶血性レンサ球菌)によるのどの感染や、とびひなどの皮膚の感染にかかったあと、「腎臓に影響が出ることがあると聞いて、心配になった」というご相談をよく受けます。
「溶連菌は治ったのに、数週間あとに腎臓が悪くなることがあるの?」
結論から申し上げると、溶連菌感染症のあとには、数週間後に腎炎(急性糸球体腎炎:腎臓のろ過装置である糸球体に炎症が起きる病気)を合併することがあります[3]。のどの感染のあとは1〜2週間ごろ、皮膚の感染のあとは2〜6週間ごろが目安と報告されています[1]。気づく手がかりは、尿の色や量、まぶたのむくみといった変化です[2]。
本記事では、溶連菌のあとに腎炎が起きるしくみ、潜伏期間と症状、尿検査のフォローが必要といわれる理由、受診を急ぐサイン、抗菌薬の飲み方、そして経過と予後を、順に解説します。
その前に、日曜・祝日の発熱外来のご案内です。インフルエンザやコロナのPCR検査(ピーシーアール検査:ウイルスの遺伝子を増やして見つける検査)は、当日中に結果が分かります。
2026年10月4日から、日曜・祝日も発熱外来を行っています
10時〜15時(昼休みなし)。予約は不要で、当日チェックインで受け付けます。PCR検査は当日中に結果をお伝えします。日曜・祝日は発熱外来のみで、一般外来と点滴は行っていません。10月25日(日)は休診で、11月からは原則として毎週日曜日と祝日です。日曜・祝日の発熱外来のお知らせ
溶連菌のあとに腎炎が起きるのはなぜ?
溶連菌のあとに腎炎が起きるのは、溶連菌感染症の合併症として、腎臓の糸球体に炎症が起きることがあるためです[4]。
溶連菌(A群溶血性レンサ球菌)感染症では、急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症を呈することがあります[4]。中でも急性糸球体腎炎は、扁桃炎などが治ってから10日前後経って発症する一過性の腎炎です[2]。
日本小児腎臓病学会雑誌の総説では、溶連菌によるものでは、咽頭炎、扁桃腺炎、皮膚膿疱などの先行感染のあと、1〜2週間の潜伏期を経て、血尿、タンパク尿、浮腫(ふしゅ:むくみ)、高血圧、乏尿(ぼうにょう:尿が少ないこと)を認めると説明されています[5]。
また、治療が不十分な場合はリウマチ熱を併発しやすく、腎炎は発症数週間後に血尿で見つかることが多いとされています[3]。保育所のガイドラインでも、適切に治療すれば後遺症がなく治癒するが、治療が不十分な場合には、発症数週間後にリウマチ熱、腎炎などを合併することがあると説明されています[6]。
院長蒲生「のどが治ったからもう安心」で終わらせず、その後の数週間もお子さんの様子を見てあげてください。
潜伏期間と症状【コーラ色の尿・まぶたのむくみ・尿が少ない】
溶連菌感染症から腎炎が起きるまでの潜伏期間は、のどの感染のあとで1〜2週間、皮膚の感染のあとで2〜6週間と報告されています[1]。
日本の総説では1〜2週間[5]、日本腎臓学会は扁桃炎などが治ってから10日前後と説明しており、報告により幅があります[2]。
腎炎が起きたときにみられる主な症状は、次のとおりです[2][5]。
| 症状 | 具体例 |
|---|---|
| 尿の色が変わる(肉眼的血尿) | コーラ色・褐色の尿[2] |
| むくみ(浮腫) | まぶた・顔・足のむくみ[2] |
| 尿が少ない(乏尿) | いつもよりおしっこの回数・量が減る[2] |
| 血圧が上がる(高血圧) | 血圧上昇[2] |
血圧が高いと言われたときや、頭痛・吐き気が強いときは、早めに受診してください。
溶連菌のあとに尿検査をするのはなぜ?医師によって考え方が違う
溶連菌のあとに尿検査をするのは、腎炎は目で見える血尿がないと気づかれにくいことがあり、尿検査が役立つ最初の検査とされているからです[7]。
2007年に小児科一般診療を行う小児科医52名にアンケートをした調査では、検尿を「する」47名、「しない」4名、「症例によって個々に判断する」1名で、検査の時期は2週間後が最も多い結果でした[8]。このように、溶連菌感染後にどのように腎炎を探すかは個々の医師の判断に任されており、種々の方法がみられると報告されています[8]。
急性糸球体腎炎は、症状がはっきり出ない(潜在性の)こともあります[9]。また米国の研究では、目で見える血尿がないと診断が遅れやすく、尿検査は役立つ最初の検査とされています[7]。
ただし、症状のないお子さんの尿検査をどうするかは、かかりつけの医師と相談して決めましょう。むくみ・赤茶色の尿・尿が少ない・血圧が高いといった変化があれば、早めに受診して尿を調べてもらうことが大切です[2]。
溶連菌そのものの検査については【溶連菌】発熱とのどの痛み、検査はどんなときに?を、とびひなどの皮膚の感染については【小児のとびひ】夏に増える皮膚感染症を参考にしてください。
【受診を急ぐサイン】119番・救急外来・その日のうちに
すぐ119番
次のどれか1つでもあれば、迷わず119番に電話してください。夜間・休日でも同じです。
- 呼びかけに返事がない、もうろうとしている(意識がおかしい)
- けいれんしている
- 急に息が苦しい、肩で息をしている、唇が紫っぽい
- 胸の痛みとともに意識を失って倒れた
夜間・休日でも、その日のうちに救急外来へ
次のようなときは朝まで待たず、夜間・休日でも救急外来を受診してください。苦しそうで動かせないときは119番です。
- 水分がほとんどとれない、半日以上おしっこが出ていない
- まぶたや顔のむくみが強い、急に体がむくんできた[2]
- 安静にしていても呼吸がいつもより明らかに速い、苦しそう
- 顔色が青白い・土気色(つちけいろ)でぐったりしている
その日のうち(夜なら翌朝)に、小児科・内科などを受診
呼吸・意識・水分は保たれているけれど、次のようなときは様子を見すぎず受診してください。
- コーラ色・褐色の尿が出た[2]
- 尿の量がいつもより少ない[2]
- まぶたや顔・足がむくんでいる[2]
- 溶連菌の感染から1〜2週間(皮膚の感染なら数週間)たって、なんとなく元気がない[1]
夜のあいだに様子が変わったら、その時点で上の「119番」「救急外来」の目安にもどって判断し直してください。
抗菌薬は指示どおり最後まで飲みきる【腎炎の予防は確実とは言えないが】
溶連菌と診断されたら、処方された抗菌薬は医師の指示どおり最後まで飲みきることが大切です。
保育所のガイドラインでは、適切な抗菌薬で治療すれば多くの場合は後遺症もなく治癒するとされています。ただし、合併症を予防するため、症状が治まってからも決められた期間は抗菌薬を飲み続けることが必要です[6]。
ただし、腎炎についてだけを見ると、抗菌薬で確実に予防できるかどうかはまだはっきりしていません。2021年のコクランレビュー(複数の研究をまとめて評価した総説)では、急性糸球体腎炎の症例が少なすぎて、抗菌薬に予防効果があるかどうかを決められなかったと報告されています(Peto OR 0.07、95%信頼区間 0.00〜1.32、エビデンスの確実性は低い)[10]。一方で、リウマチ熱は抗菌薬で減らせたと報告されています(Peto OR 0.36、95%信頼区間 0.26〜0.50)[10]。
小児科医へのアンケートでも、抗菌薬が腎炎の予防に有効と考える医師が35名(67.3%)、無効と考える医師が9名(17.3%)と意見が分かれていました[8]。
まとめると、腎炎が確実に防げるとまでは言えないが、処方された抗菌薬を最後まで飲みきることが推奨されている、ということです[6][10]。出された分は最後まで飲み切り、以前の余った薬を自己判断で使うのはやめましょう。



症状が治まっても、決められた期間は飲み続けてください。「もう治ったから」と途中でやめないことが大切です。
溶連菌のあとの腎炎の経過と予後
溶連菌のあとの急性糸球体腎炎は、多くは時間の経過とともに改善する予後良好な疾患です[2]。
日本腎臓学会は、発症後、時間の経過にともない、血尿、蛋白尿、腎機能は自然に改善する予後良好な疾患だが、時に尿所見異常が持続し腎機能障害が残ることもあると説明しています[2]。
米国の総説では、長期予後も良好で、小児の糸球体腎炎の中で最も多いにもかかわらず慢性腎臓病を起こすことは少ないが、持続する顕微鏡的血尿と蛋白尿が10%未満にみられるとされています[1]。
別の総説でも、多くは予後良好で、持続する尿所見異常や高血圧、慢性腎臓病を残すのはごく一部とされています[9]。そのため、腎炎が疑われたときや、症状が治まったあとも、医師が経過を確認することが大切です[2]。
よくある質問(FAQ)
- 溶連菌が治ったら、腎炎の心配はないですか?
-
溶連菌が治ってから数週間後に腎炎を起こすことがあります[3]。のどの感染のあと1〜2週間、皮膚のあとは2〜6週間ごろが目安です[1]。尿の色や量、むくみの変化に気をつけて、気になる変化があれば受診してください。
- 尿検査は全員受けたほうがよいですか?
-
溶連菌のあとに尿検査をするかどうかは、医師によって考え方が異なります[8]。症状がないお子さんの尿検査をどうするかは、かかりつけの医師と相談してください。むくみ・コーラ色の尿・尿が少ない・血圧が高いなどの変化があれば、早めに受診して尿を調べてもらいましょう[2]。
- 抗菌薬を飲みきれば腎炎は防げますか?
-
抗菌薬が腎炎を確実に防ぐかどうかは、まだはっきり決められていません[10]。ただ、合併症を予防するため、症状が治まってからも決められた期間、抗菌薬を飲み続けることが必要とされています[6]。処方された分は、医師の指示どおり最後まで飲みきりましょう。
- どんな尿の変化に気をつければよいですか?
-
コーラ色・褐色の尿(肉眼的血尿)、尿の量が減る、まぶたや顔・足のむくみなどです[2]。血圧が上がることもあります[2]。
- けいれんや意識がおかしいときはどうすればよいですか?
-
けいれんしている、呼びかけに返事がない、もうろうとしているときは、迷わず119番に電話してください。夜間・休日でも同じです。
- とびひ(皮膚の感染)でも腎炎になりますか?
-
皮膚の感染のあとの腎炎は、のどの感染より遅れて、2〜6週間後ごろに起きると報告されています[1]。とびひの受診の目安は関連記事を参考にしてください。
まとめ【溶連菌のあとは尿の変化に気を配る】
- 溶連菌感染症のあとには、数週間後に腎炎(急性糸球体腎炎)を合併することがある。のどの感染のあと1〜2週間ごろ、皮膚のあとは2〜6週間ごろが目安[1]
- 意識がおかしい、けいれんしている、急に息が苦しいときは119番
- コーラ色の尿、まぶたのむくみ、尿が少ない、血圧が高いときは早めに受診し、尿を調べてもらう[2]
- 溶連菌のあとに尿検査をするかは医師によって考え方が異なる。症状があれば早めに受診する[8]
- 抗菌薬は医師の指示どおり最後まで飲みきる。腎炎の予防が確実とは言えないが、飲みきることが推奨されている[6][10]
- 多くは予後良好だが、尿所見が持続することがあるので、医師が経過を確認する[2]
溶連菌のあとの「なんとなく元気がない」「尿の色がいつもと違う」といった小さな変化は、ご家族がいちばん早く気づけます。気になる変化があれば、どうぞ早めにご相談ください。医療は私達におまかせください。
以上
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- VanDeVoorde RG. Acute poststreptococcal glomerulonephritis: the most common acute glomerulonephritis. Pediatr Rev. 2015 Jan;36(1):3-12. doi:10.1542/pir.36-1-3 PMID: 25554106
- 日本腎臓学会. 5.糸球体腎炎 — 一般のみなさまへ. 日本腎臓学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms05.php
- 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説(2025年4月改訂版)溶連菌感染症. 日本小児科学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.jpeds.or.jp/general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-07.html
- 国立健康危機管理研究機構. A群溶血性レンサ球菌感染症. 感染症情報提供サイト. 参照 2026年10月. https://id-info.jihs.go.jp/diseases/alphabet/agun/index.html
- 中西浩一. 教育委員会企画小児腎臓病初歩コース1「あなたは急性糸球体腎炎と急性腎炎症候群の違いを説明できますか?」. 日児腎誌. 2018;31(2):109-113. doi:10.3165/jjpn.rv.2018.0003
- こども家庭庁. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版). 厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/20231010_policies_hoiku_25.pdf
- Pais PJ, Kump T, Greenbaum LA. Delay in diagnosis in poststreptococcal glomerulonephritis. J Pediatr. 2008 Oct;153(4):560-4. doi:10.1016/j.jpeds.2008.04.021 PMID: 18534213
- 辻祐一郎, 阿部祥英, 三川武志, 板橋家頭夫, 酒井糾. A群β溶血性連鎖球菌感染症後の検尿についてのアンケート調査結果. 日児腎誌. 2007;20(2):105-110. doi:10.3165/jjpn.20.105
- Ong LT. Management and outcomes of acute post-streptococcal glomerulonephritis in children. World J Nephrol. 2022 Sep;11(5):139-145. doi:10.5527/wjn.v11.i5.139 PMID: 36187464
- Spinks A, Glasziou PP, Del Mar CB. Antibiotics for treatment of sore throat in children and adults. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Dec;12(12):CD000023. doi:10.1002/14651858.CD000023.pub5 PMID: 34881426
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