お急ぎの方へ
- 1歳未満の赤ちゃんには、はちみつとはちみつ入りの飲料・お菓子・離乳食を与えない
- 便秘が数日続いたあと、哺乳力が弱い、泣き声が小さい、全身がくにゃくにゃのときは急いで受診。息が苦しそう、ぐったり、けいれんは119番
- はちみつのボツリヌス菌の芽胞は加熱では消えないが、1歳を過ぎればリスクの高い食品ではなくなる
おはようございます。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
離乳食の味つけに、ほんの少しはちみつを混ぜてしまった。祖父母が「昔から食べているから」と赤ちゃんにあげてしまった。そんな経験をして、
「1歳未満にはちみつを与えてはいけない」
という言葉を思い出し、不安になった方も多いのではないでしょうか。結論から申し上げると、1歳未満の赤ちゃんには、はちみつとはちみつ入りの飲料・お菓子・離乳食を与えないでください。はちみつに混ざっていることがあるボツリヌス菌の芽胞(がほう:菌が固い殻にこもった状態)が、赤ちゃんのまだ整っていない腸の中で増えて毒素を作り、乳児ボツリヌス症を起こすことがあるからです[1]。
本記事では、1歳未満にはちみつがだめな理由、加熱しても芽胞が消えないこと、はちみつ入りの食品の見分け方、乳児ボツリヌス症の症状と受診の目安、治療と予後、日本での報告数を、呼吸器専門医の立場から解説します。
その前に、日曜・祝日の発熱外来のご案内です。インフルエンザやコロナのPCR検査(ピーシーアール検査:ウイルスの遺伝子を増やして見つける検査)は、当日中に結果が分かります。
2026年10月4日から、日曜・祝日も発熱外来を行っています
10時〜15時(昼休みなし)。予約は不要で、当日チェックインで受け付けます。PCR検査は当日中に結果をお伝えします。日曜・祝日は発熱外来のみで、一般外来と点滴は行っていません。10月25日(日)は休診で、11月からは原則として毎週日曜日と祝日です。日曜・祝日の発熱外来のお知らせ
なぜ1歳未満の赤ちゃんにはちみつをあげてはいけないの?
1歳未満の赤ちゃんは腸内環境がまだ整っておらず、はちみつに混ざっていることがあるボツリヌス菌の芽胞が腸の中で発芽・増殖し、毒素を作って乳児ボツリヌス症を起こすことがあるからです[1]。
厚生労働省は、ボツリヌス菌は土壌中などに広く存在し、大人の腸内では他の腸内細菌との競争に負けて通常は何も起こらない一方、赤ちゃんでは菌が増えて毒素を出すと説明しています[1]。同じ理由を、消費者庁も「生後1歳未満の乳児においては、腸内環境が成人とは異なり、腸管内でのボツリヌス菌の定着と増殖が起こりやすいとされます」と述べています[2]。
東京都保健医療局も、「1歳未満の乳児は腸内環境が未熟なため、はちみつにボツリヌス菌が混入していた場合、菌が腸内で増えて、『乳児ボツリヌス症』を起こすことがあります」と説明しています[3]。
院長蒲生はちみつのビンの中で菌が増えるわけではありません。問題は、赤ちゃんのまだ整っていない腸の中で芽胞が増えてしまうことです[4]。
加熱や調理をすれば、はちみつのボツリヌス菌は死ぬの?
いいえ、死にません。ボツリヌス菌は熱に強い芽胞を作るため、通常の加熱や調理では死なず、加熱したはちみつも1歳未満の赤ちゃんには与えないでください[1]。
厚生労働省は、ボツリヌス菌(芽胞)の耐熱性は120℃で4分とされており、通常の加熱や調理では死なないと説明しています[1]。厚生労働省の事務連絡でも、芽胞を死滅させるには120℃4分以上またはこれと同等の加熱殺菌が必要で、100℃程度では長い時間加熱しても殺菌できないとされています[5]。
| 加熱の条件 | ボツリヌス菌の芽胞 |
|---|---|
| ふつうの加熱・調理 | 死なない[1] |
| 100℃で長い時間 | 殺菌できない[5] |
| 120℃で4分以上 | 死滅する[1][5] |
消費者庁も、芽胞の状態では100℃数分間の加熱でも生き残ることがあるとしています[2]。東京都保健医療局も、ボツリヌス菌は熱に強いため、ふつうに加熱しただけでは死なないと注意をよびかけています[3]。
はちみつ入りの食品には、どんなものがあるの?
はちみつそのものだけでなく、はちみつ入りの飲料・お菓子・離乳食も、1歳未満の赤ちゃんには与えません[1]。
厚生労働省は「1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう」としています[1]。また、ハチミツおよびハチミツを含む食品には「1歳未満の乳児には与えないで下さい。」という表示が必要です[1][2]。
- はちみつそのもの[1]
- はちみつ入りの飲料(ジュースなど)[1]
- はちみつ入りのお菓子などの食品[1][3]
- ジュースなどにはちみつを混ぜた離乳食[5]
2017年に東京都足立区で亡くなった事例では、市販のジュースにはちみつを混ぜたものを、離乳食として約1か月与えていました[5]。このとき、製品には1歳未満の乳児に与えない旨の表示がなされていました[5]。表示があっても事故は起きているので、味つけや飲み物の材料は、ご家族みんなで確認しましょう。
乳児ボツリヌス症では、どんな症状が出るの?
便秘が数日続いたあとに、哺乳力(ほにゅうりょく:おっぱいやミルクを飲む力)の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなるなどが出ます[1][4]。
厚生労働省は、便秘、ほ乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなるといった症状を挙げています[1]。消費者庁は、便秘が数日間続き、全身の筋力低下、脱力状態、哺乳力の低下、泣き声が小さくなる、特に顔面は無表情となり、頸部筋肉の弛緩により頭部を支えられなくなる、としています[2]。
| 時期 | 出てくる症状 |
|---|---|
| はじめ | 便秘が数日続く(多くは3日以上)[4]、哺乳力の低下、元気がない[1] |
| 進むと | 泣き声が小さい、まぶたが下がる、首のすわりが悪い、顔が無表情[2][4] |
| さらに進むと | 全身がくにゃくにゃする、左右対称の麻痺、呼吸する筋肉が麻痺して人工呼吸器が必要になることがある[4] |
乳児ボツリヌス症では、便秘で気づくことが多く、多くは3日以上持続します[4]。眼瞼下垂(がんけいかすい:まぶたが下がること)や咽頭反射(いんとうはんしゃ)の減弱などの脳神経麻痺から、頸部・体幹部・上下肢へ、左右対称の弛緩性の麻痺と筋緊張低下が進み、くにゃくにゃしたようす(floppy baby)になります[4]。発熱やけいれんはありません[4]。ただし、けいれんがあるときは別の病気も考えられるため、119番に電話してください。日本小児科学会の関連委員会も、便秘に引き続き、筋力が低下して脱力・哺乳力の低下・泣き声が小さくなる神経症状が出るのが特徴としています[6]。
【受診を急ぐサイン】どんなときに急いで受診し、119番を呼ぶの?
便秘が数日続いたあと、飲みが弱い・泣き声が小さい・全身がくにゃくにゃ・まぶたが下がる・首がすわらないといったサインが出たら、急いで受診してください。呼吸が苦しそうなときは、ためらわず119番に電話してください。夜間・休日でも同じです。
呼吸をするために必要な筋肉が麻痺すると、人工呼吸器による治療が必要になることがあります[4]。2017年の死亡事例でも、けいれんや呼吸不全の症状が出て、救急搬送されています[5]。呼吸のようすは、いちばん注意して見てください。
- 呼吸が苦しそう、息が弱い、息が止まりそう
- 全身がぐったりして、呼びかけへの反応が弱い
- 顔色が悪く、哺乳がまったくできない
- けいれんがある
これらのどれかがあれば、迷わず119番です。119番に迷うときは、宮城県の小児救急電話相談(#8000)に相談できます。ただし、明らかに呼吸が苦しそうなときは、相談をはさまず119番にしてください。
呼吸が苦しそうではないけれど、次のような変化があるときは、その日のうちに受診してください。夜なら翌朝まで待たず、救急外来を受診してください。
- 便秘がいつもより長く続いている(多くは3日以上)[4]
- 哺乳力が落ちた、飲む量が減った[1][2]
- 泣き声が小さい、元気がない[1]
- まぶたが下がる、首のすわりが悪くなった、顔が無表情[2][4]
- 全身がくにゃくにゃしている[4]
乳児ボツリヌス症は治るの?治療はどうするの?
はい。乳児ボツリヌス症は、ほとんどの場合、適切な治療により治癒します。呼吸の管理などの対症療法(たいしょうりょうほう:原因そのものより、出ている症状に合わせて行う治療)がうまくいけば、予後は良好です[1][4]。
厚生労働省は、ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあるとしています[1]。詳しい情報をまとめたJIHS(国立健康危機管理研究機構の感染症情報提供サイト)によると、日本では乳児には対症療法が行われ、乾燥ボツリヌスウマ抗毒素は使用しません。呼吸の管理などに伴う合併症がなければ予後は良好で、米国では死亡率は1%未満と報告されています[4]。
米国では、A型・B型の抗毒素を含むヒトのグロブリン製剤(BIG-IV)が使われることもあります[4]。2026年の総説では、集中治療とヒト由来の免疫グロブリンによる治療を受けた場合の死亡率は1%未満とされています[7]。



乳児ボツリヌス症は、早く気づいて呼吸と栄養を支えれば、多くは回復します。疑ったら、ためらわず受診してください。
日本では、どのくらい報告されているの?
日本では、乳児ボツリヌス症は1986年に最初に報告され、2020年までに42例が報告されています[4]。
JIHSによると、42例とも1歳未満で中央値6か月齢ですが、10か月齢で3例、11か月齢で4例も発症しています[4]。ハチミツが推定原因とされる症例は、1986年から1989年までの12例に2017年の1例を加えて計13例で、1990年から2020年までに認められた29例では明らかなハチミツ摂取歴がありませんでした[4]。
日本小児科学会の関連委員会によると、乳児ボツリヌス症は1986年に千葉県で初めて確認され、厚生省(当時)は1987年10月に「1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないよう通知」を出しました[6]。2017年には、東京都足立区で、離乳食としてジュースに蜂蜜を混ぜて与えていた5か月の男児が乳児ボツリヌス症で亡くなっています[5]。JIHSによると、確認された42症例のうち、2017年の事例が唯一の死亡例です[4]。
厚生労働省の別のページでは、保健所が食中毒として報告した事例は1986年以降3例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した事例は1999年以降16例とされています(集計のしかたと期間が異なります)[1]。1976〜2006年の報告をまとめた研究では、26か国が乳児ボツリヌス症の発生を報告しており、米国、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、イタリア、日本の順に多いとされています[8]。別の総説では、症例はまれですが、はちみつが唯一一貫して確認された食品であり、各国の当局が12か月未満のはちみつ摂取を避けるよう勧めているとまとめています[7]。
はちみつは、1歳を過ぎたら食べさせてもいいの?
はい。1歳を過ぎると、離乳食などで腸内環境が整う時期になるため、はちみつを避ける必要はありません[2]。
厚生労働省は「1歳以上の方にとっては、ハチミツはリスクの高い食品ではありません」としています[1]。消費者庁も、生後1歳以上になると離乳食などにより腸内環境が整う時期となるため、ハチミツを避ける必要はなく、ハチミツは栄養価の高い食品だが生後1歳以上になってから与えましょう、としています[2]。1歳の誕生日を過ぎたら、少しずつはちみつを楽しんで大丈夫です。
よくある質問(FAQ)
- 少しだけはちみつを食べてしまいました。どうすればいいですか?
-
すぐに症状が出るとは限りませんが、乳児ボツリヌス症は便秘で気づくことが多いため、その後しばらく便の状態と元気さを見てください[4]。便秘が数日続く、哺乳力が落ちる、泣き声が小さくなる、全身がくにゃくにゃする、まぶたが下がるなどの変化があれば、早めに受診してください。呼吸が苦しそうなときは119番です。
- 加熱したはちみつなら大丈夫ですか?
-
いいえ、加熱しても安全にはなりません。ボツリヌス菌の芽胞は熱に強く、120℃で4分の加熱が必要とされ、ふつうの加熱や調理では死にません[1]。100℃程度では、長い時間加熱しても殺菌できません[5]。加熱したはちみつも、1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。
- はちみつを食べていないのに、乳児ボツリヌス症になることはありますか?
-
あります。日本では、1990年から2020年までに認められた29例では、明らかなハチミツ摂取歴がありませんでした。ハチミツ摂取歴がないことを理由に、乳児ボツリヌス症の診断を否定することはできません[4]。はちみつのほか、井戸水が原因として報告されています[1][6]。
- 祖父母がはちみつをあげてしまわないか心配です。
-
東京都保健医療局は、主にお世話をするお父さん・お母さんだけでなく、祖父母や同居しているご家族にも、乳児にはちみつを与えてはいけないことを伝えるよう呼びかけています[3]。はちみつ入りの飲み物やお菓子にも気をつけることを、あわせて伝えてください。
- 1歳になったら、はちみつを食べさせてもいいですか?
-
はい。1歳を過ぎると離乳食などで腸内環境が整う時期になるため、はちみつを避ける必要はありません[2]。厚生労働省も、1歳以上の方にとっては、はちみつはリスクの高い食品ではないとしています[1]。
- 日曜・祝日でも受診できますか?
-
はい。日曜・祝日も10時〜15時(昼休みなし)に発熱外来を行っています。予約は不要で、当日チェックインで受け付けます。10月25日(日)は休診です。日曜・祝日は一般外来と点滴は行っていません。呼吸が苦しそうなときは、受診の前にまず119番に電話してください。
まとめ【はちみつは1歳未満に与えない、加熱では芽胞は消えない】
- 1歳未満の赤ちゃんには、はちみつとはちみつ入りの飲料・お菓子・離乳食を与えない
- 便秘が数日続いたあと、哺乳力が弱い、泣き声が小さい、全身がくにゃくにゃのときは急いで受診。息が苦しそう、ぐったり、けいれんは119番
- はちみつのボツリヌス菌の芽胞は加熱では消えないが、1歳を過ぎればリスクの高い食品ではなくなる
- 乳児ボツリヌス症は、ほとんどの場合、適切な治療により治癒し、呼吸の管理などの対症療法で予後は良好[1][4]
- 日本では1986年に最初に報告され、2020年までに42例。2017年に東京都で5か月男児が亡くなった事例がある[4][5]
- 受診のときは、はちみつを食べたか、便秘の日数、飲み・泣き声・筋肉の様子の変化を伝える
乳児ボツリヌス症はまれな病気ですが、はちみつという身近な食品が原因になりうる病気です。早く気づいて呼吸などを支える治療につなげれば、多くは回復します。赤ちゃんの「いつもと違う」に気づけるのは、いつもそばにいるご家族です。その気づきを、どうぞそのまま私達に伝えてください。医療は私達におまかせください。
以上
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省. ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html
- 消費者庁. ハチミツによる乳児のボツリヌス症. 消費者庁ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/contents_001/
- 東京都保健医療局. 1歳未満の乳児に、はちみつを与えてはいけないのはなぜですか?【食品安全FAQ】. 東京都保健医療局ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/chudoku/chudoku24
- 国立健康危機管理研究機構. ボツリヌス症(詳細版). 感染症情報提供サイト(JIHS). 参照 2026年10月. https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/botulism/detail/index.html
- 厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課. 蜂蜜を原因とする乳児ボツリヌス症による死亡事案について(事務連絡 平成29年4月7日). 厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000161263.pdf
- 日本小児医療保健協議会栄養委員会. 【会員向け提言】蜂蜜による乳児ボツリヌス症の発症について. 日本小児科学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.jpeds.or.jp/society-activities/column/proposals-assertions/50093.html
- Aricò MO, Caselli D, Stefanizzi P, Tafuri S, Aricò M. Infant botulism and honey exposure: global epidemiology, prevention policies, and communication strategies. Acta Paediatr. 2026 Jul;115(7):1429-33. doi:10.1111/apa.70538 PMID: 41964486
- Koepke R, Sobel J, Arnon SS. Global occurrence of infant botulism, 1976-2006. Pediatrics. 2008 Jul;122(1):e73-82. doi:10.1542/peds.2007-1827 PMID: 18595978
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