【新型コロナワクチン】効果は？副反応は？医学博士がまるっと解説

こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一（医学博士 / 呼吸器専門医）です。
※当記事は文末「参考文献」を根拠としています

宮城県でも、いよいよ高齢者の方など向けの新型コロナワクチン【個別】接種の予約が始まります。仙台市などでは5月17日から予約受け付け開始。当院が位置する名取市では5月26日（水）午前9時から受付解禁ということになります。

コロナワクチンに関しては集団接種と個別接種があり、

それぞれこのような感じです。本記事では個別接種の予約受付のご案内と、

そもそもワクチンって何ぞや？
効果や副作用、打ち方は？

という疑問に対して噛み砕いた解説を行います。

ファイザー製のコロナワクチン【コミナティ®】について解説

当面の間、日本で接種が可能なのはファイザーのコミナティ®一択（いったく）ですので、こちらについての解説となります。

私も4月21日と5月12日にファイザー製ワクチンを接種ずみです
受けた感想などふくめてお話しします

体に打ち込むのは、コロナウイルスの “足” の【設計図】

今回のファイザー製新型コロナワクチン（コミナティ®）は、mRNA（メッセンジャーアールエヌエー）ワクチンという全く新しい機序（きじょ＝効き方のしくみ）の薬剤です。

これまでの生ワクチン（弱毒化ワクチン）、不活化ワクチン、トキソイドといった昔からあるワクチンの種類とは違い、新型コロナウイルスのパーツをつくる設計図（これがmRNA）を打ち込みます。以下、これまでの伝統的手法でつくられてきたワクチンたちとのざっくりとした比較です↓

ワクチン種類	何を接種するか？	代表的なワクチン
生（弱毒化）ワクチン	毒性を弱めてあるものの 【生きている細菌やウイルス】 を接種	・ロタウイルス ・BCG（結核） ・MR（はしか、風疹） ・水痘（水ぼうそう） ・ムンプス（おたふくかぜ）
不活化ワクチン	死んだ細菌やウイルスの 【破片（はへん）】 を接種	・インフルエンザ ・ヒブ ・肺炎球菌 ・B型肝炎 ・ジフテリア・百日咳・ポリオ（四種混合） ・日本脳炎
トキソイド	病原体から毒素を抽出して、その毒素を無害化し接種	・破傷風
mRNAワクチン	ウイルスの 【体を構成するパーツ】の 【設計図のみ】を接種	・新型コロナウイルス

今回接種するのは、新型コロナウイルスのS（スパイク）タンパクという、いわばウイルスの “足” の部分の【設計図のみ】です。

はしかやインフルエンザなどのワクチンとはまったく違い、弱らせたウイルスそのものやウイルスの破片を接種するのではありません。コロナのSタンパクそのものを打ち込むのではなく、Sタンパクの設計図のみ（これがmRNA）を打ち込みます。以下の3ステップでコロナに対する免疫が得られます。

マイナス80℃で保存し、常温に戻し希釈したあとは6時間で使い切る必要あり

「せっかくのワクチンが余って廃棄された。もったいない！」こんな報道がたびたびされているのを目にした方もおられることと思いますが、その原因がこれです。

RNAはとても脆く（もろく）、たやすく壊れてしまう

ために、ファイザーなどのワクチンは常温での保存が効き（きき）ません。RNAを分解してしまう酵素（RNase: アールエヌアーゼといいます）が働かなくなるマイナス80℃を保つ必要があります。

PCRを行う場合なども同様で、RNAを扱う時にはRNase不活化剤を使って実験を行う場所を清（きよ）める必要があります。RNaseという酵素はそこかしこに存在し、当然われわれの唾（つば）などにもRNaseは含まれますので、実験中はしゃべらずに黙々（もくもく）とやる必要があります。

新型コロナPCRの検体としてだ液が長時間保存できないのも、だ液の中にRNaseが多く含まれており、出したそばからコロナの遺伝子（RNA）を破壊してしまうから、というのが理由のひとつです

またPCRを行っている間も、可能な限りRNaseが活性化しないように氷上で作業をすすめます。ワクチンもこれと同じで、可能な限り冷凍の状態を保ち、接種をするために常温に戻したあとはすみやかに使い切る必要があります。

長時間放置してしまうと、薬効成分であるmRNAが破壊され、ワクチンが効かなくなってしまいます。

そのため、ワクチン接種では

・事前の予約で確実に人数を把握（はあく）し、必要な分だけ薬剤を用意すること

・可能な限り皆さまには予定通りいらして頂き、すみやかに、確実に接種を受けていただくこと

が重要です

多い副反応は、接種部位の痛み、腫れ、関節痛や倦怠感（けんたいかん）、頭痛、熱発など
アナフィラキシーショックは20万分の1

日本よりも接種が進む諸外国でのデータがかなり揃ってきており、その安全性については、以下のようにイスラエルの病院で癌患者170人に対して行われたワクチン接種の報告^​1​が参考になるかと思います。

1回目接種後の副反応
・接種部位の痛み 21％
・倦怠感 4％
・頭痛 2％
・筋肉痛 3％
・悪寒 1％

2回目接種後の副反応
・接種部位の痛み 63％
・関節痛 34％
・倦怠感 34％
・頭痛 16％
・接種部位の腫れ 12％
・熱発 10％
・悪寒 10％
・消化器症状 10％

よく言われているとおり、2回目の方が副反応が多く出るようです。

また全米での9,943,247回にのぼるコミナティ®接種の副反応の分析では、アナフィラキシーショックはおよそ1,000万回接種あたり47回の頻度で出現した^​2​との報告があり、またアナフィラキシーを起こした人の30％程度が、過去に何がしかの薬剤にアレルギー歴があったとのことでした。

これらおよそ1000万回のワクチン接種で、アナフィラキシーショックによる死亡はありませんでした。

ワクチンのアナフィラキシーは女性が多い。化粧のせい？

インフルエンザなどの予防接種とも共通なのが、アナフィラキシーを起こした人の割合は女性が多いということです（上記の文献^​2​でも、コミナティ®でアナフィラキシーを起こした47人中、女性が44人）。これには、化粧品などに含まれるポリエチレングリコールという成分が、今回のファイザー製ワクチンにも含まれているためでは？と推察されております^​3​。

ファイザー製ワクチン、実際の効果は？

コミナティ®の大規模臨床試験で、新型コロナウイルスの発症を95%抑えたという報告^​4​が出されたのは報道などでご存知の方もおられるかと思います。

ではリアルワールドでの実際の効果はどうか？、先行して接種が進む国々での状況と併せて論文を紹介します。

接種が進む国の状況（イスラエル、イギリス、アメリカ）

まずは国民の多くがすでに2回の接種を終えているイスラエルの状況から。

2020年12月20日に全国接種を開始し、そのおよそ1ヶ月後の2021年1月21日に新規感染者のピークとなる10,117人を記録。その後は減少に転じ、5月18日現在1日43人の新規感染にとどまっております。

またテルアビブの病院での医療従事職員への定期的PCRスクリーニングの結果、ワクチン2回接種済みの職員は受けていない職員に対して、症状のある新型コロナ感染率が0.03倍、無症状での感染率が0.14倍と、ワクチン接種による感染リスクの劇的な減少が認められたという報告^​5​がなされております。

イギリスの状況

イギリスは世界に先がけてワクチンの接種を開始した国ですが、こちらもだいたい接種を開始して1ヶ月ほどで新規感染者数のピークをむかえ、その後減少しております。

またイギリスの医療従事者を対象とした臨床研究では、ワクチン1回接種後21日経過以降でコロナ感染の抑制率70％、2回接種後7日経過以降で85％の感染抑制率であったという報告^​6​があります。治験やイスラエルの報告に対して感染抑制率がやや低いのは、変異株の影響があるのではと論文では考察されています。

アメリカの状況

アメリカでも接種開始後1ヶ月でピークアウトしております。日本でも同様に、接種開始から1ヶ月でピークを迎え減少に転じることを期待したいですね。

アメリカでの臨床研究でも、病院職員5217名の解析で、ワクチン1回目接種で症状ありのコロナ感染を58％抑制、無症状での感染を42％抑制、また2回接種後7日以降で症状ありの感染を96％、無症状での感染を90％抑制したという論文^​7​がでております。

いずれの国でもワクチン接種による新型コロナ感染抑制効果は抜群（ばつぐん）で、日本でも同じようにワクチンによる感染抑制が期待されます。

実際にワクチン接種を受けてみた結果

私の場合、一回目、二回目とも接種部位が次の日多少痛かったくらいで、あとはなんともありませんでした。
正直、拍子抜けの感はありましたが、業務に支障が出ずに済んで助かりました

ただ、従業員を見ていても元同僚などの話を聞いても、特に二回目はてきめんに腫れたりだるかったり熱発するパターンが多いのは確かなので、皆さまも接種の際にはあらかじめご承知おきください

ワクチン個別接種について、予約、料金、接種日など

個人負担はゼロ円

すべて税金でカバーされます。

予約は二通り（センター予約、個別予約）

当院が位置する名取市の場合は、市のワクチン接種コールセンターの方でまとめて予約を受けて各医療機関に割り振るパターンと、個別の医療機関で予約を受け付けるパターンのふた通りです。

当院ではワクチン接種コールセンターでの予約、直接当院での予約ともに受けつけいたします。

個別接種開始は

2021年6月7日（月）からの接種開始を予定しております。

まとめ【暗いトンネルの先に、やっと光が見えてきた】

これまで感染予防や自粛を頑張ってこられた皆さん、やっと終わりが見えてきました。ワクチン接種で先行しているイスラエル、イギリス、アメリカのように、日本でも接種開始後1ヶ月ころから感染者数の減少が見込めるのではないかと期待されます。

ほんとうにもう少しです。以下、現在のイスラエルの状況を報じた新聞社のHPから↓

屋外ではマスク着用を求められることなく、以前と同じ生活がひと足先に戻ってきているようです。ワクチンが普及さえすれば、日本でも同じように元の暮らしがきっと戻ってきます。

それまではしっかり予防をしつつ、社会経済活動との両立をなんとかお願いします。医療は私達におまかせください。

予防接種も安心安全な動線分離ずみのクリニックで

「ワクチンを受けに行って密になった結果、逆にコロナに感染した」とはならぬように、ワクチンを受ける医療機関はなるだけ院内感染予防に気をつかっているところを選択することをおすすめいたします。

皆さまのお住まいの近くに動線分離ずみのクリニックはないか、ぜひ一度Googleなどで検索してみてください。

もし動線分離がなされているクリニックなら、このご時世ですので必ずホームページなどでその旨をアピールしているはずです。そういったクリニックが見つかればそちらをワクチン接種場所に指定するのも一つの方法かと思います。

以上

参考文献

1. 1.

   Waissengrin B, Agbarya A, Safadi E, Padova H, Wolf I. Short-term safety of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in patients with cancer treated with immune checkpoint inhibitors. The Lancet Oncology. Published online May 2021:581-583. doi:10.1016/s1470-2045(21)00155-8
2. 2.

   Shimabukuro TT, Cole M, Su JR. Reports of Anaphylaxis After Receipt of mRNA COVID-19 Vaccines in the US—December 14, 2020-January 18, 2021. JAMA. Published online March 16, 2021:1101. doi:10.1001/jama.2021.1967
3. 3.

   Vrieze J. Suspicions grow that nanoparticles in Pfizer’s COVID-19 vaccine trigger rare allergic reactions. Science. Published online December 21, 2020. doi:10.1126/science.abg2359
4. 4.

   Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. Published online December 31, 2020:2603-2615. doi:10.1056/nejmoa2034577
5. 5.

   Angel Y, Spitzer A, Henig O, et al. Association Between Vaccination With BNT162b2 and Incidence of Symptomatic and Asymptomatic SARS-CoV-2 Infections Among Health Care Workers. JAMA. Published online May 6, 2021. doi:10.1001/jama.2021.7152
6. 6.

   Hall VJ, Foulkes S, Saei A, et al. COVID-19 vaccine coverage in health-care workers in England and effectiveness of BNT162b2 mRNA vaccine against infection (SIREN): a prospective, multicentre, cohort study. The Lancet. Published online May 2021:1725-1735. doi:10.1016/s0140-6736(21)00790-x
7. 7.

   Tang L, Hijano DR, Gaur AH, et al. Asymptomatic and Symptomatic SARS-CoV-2 Infections After BNT162b2 Vaccination in a Routinely Screened Workforce. JAMA. Published online May 6, 2021. doi:10.1001/jama.2021.6564