こんにちは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
※当記事は文末「参考文献」を根拠としています
睡眠時無呼吸症候群(SAS: サスと読みます)は、保険適用される病気の中では市場規模が比較的大きく、お金を目当てに様々な思惑の人間が集まって一大医療ビジネスになっています。
マウスピースを売ることにつなげたい医師はマウスピースを推奨し、枕がお金になると思えば枕を推奨すると言った「エビデンス(医学的根拠)そっちのけ」、つまり患者ファーストから日に日に離れていっているように思えてなりません。
別に他人の商売を邪魔したいわけではないのですが、医師たるもの常に患者ファーストでありたいものです。
SASの治療は長期に渡りますので、間違った知識で治療を続けると無駄にお金を浪費してしまいますし、快適な睡眠を取り戻すこともできません。そこで、
ガイドラインやエビデンスに則った正しいSASの治療法
について分かり易く整理してお届けしようと思っております。専門家(呼吸器専門医)として、あなたのお役に少しでも立つことができたらなと思っておりますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。
「重症度と種類」を正確に知ることが正しい治療の第一歩
当記事の目的は、最小の治療費で最大の治療効果をあげるための基礎知識をあなたとシェアすることです。「論理」という言葉はお嫌いかも知れませんが、上述の通り医師にもいろいろな思惑の者がおりますので、できるだけ論理的に正しい答えをあなた自身が導き出せるよう、以下の3つを最初に知っておいて頂きたいと思います。
- 睡眠時無呼吸症候群の種類
- 睡眠時無呼吸症候群の重症度
- 保険適用範囲
3.は治療法を決定する為の予備知識として知っておいて損はないです。
1. 睡眠時無呼吸症候群の種類
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は以下の2種類があり、患者の9割はOSASで残り1割がCSASです。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS) | 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS) |
加えて、OSASの一部 (我が国ではおよそ5%程度1) にCSASも合併している複合型 (Comp SAS) というものが存在する事が知られています2。
睡眠時無呼吸症候群は大きないびきを伴うOSAS(オーサス)の方を指すことが多いですが、もしあなたの病気がCSAS(シーサス)の方(割合としては全体の 1/10)だと、OSASで標準的とされる治療を行っても効果が不十分 (マウスピースは無効、CPAPはおよそ半数が効果なし2) な事もあるし、またCSASの背景には脳血管や心臓、腎臓の病気が隠れている可能性があり (別記事参照) そちらの検索や治療が必要となる事がありますので、OSASかCSASか、はたまた複合型のComp SASかを確定させるためにもまず呼吸器専門医の指示をあおぐのが無難です。
簡易検査で大きないびきが確認できたのでOSASの治療を行っていたのに、長年症状が改善せず精密検査してみたらCSASを併発していたというケースもあります。SASの診療を行う医師は、OSASの5%程度にCSASが併存している事に常に注意を払わなければなりません。
しかしながら多くの場合は、簡易モニターによる検査で大きないびきを伴った睡眠時無呼吸症候群はOSASであると決めつけられがちです。それで95%は正解なのですが、CSASを伴うComp SASなどのケースもあるので、OSASと言われて治療をしているのに結果が思わしくない場合は、セカンドオピニオンを求めてみるのもひとつの選択肢だと思います。
2. 睡眠時無呼吸症候群の重症度
睡眠時無呼吸症候群は簡易検査や精密検査(PSG)でAHIという数値を測定し、以下のように重症度が分けられています。
AHI | 重症度 |
5 ~ 14 | 軽度 |
15 ~ 29 | 中等度 |
30以上 | 重度 |
重症度が高くなる程、心臓や脳血管系の合併症リスクが高くなる事や、高血圧や糖尿病、脂質異常症(コレステロール)や高尿酸血症(痛風)といったいわゆるメタボリックシンドローム関連疾患を合併しやすい、またはそのコントロールが悪化しやすい事が知られております2,3が、治療法の決定に際しては重症度そのものの数値とは少しずれがあり、AHIが20を超えるか否かが判断の分かれ目になります。
3. 保険適用範囲
その分かれ目というのが、治療法の保険適用についてです。簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)で
- AHIが5以上かつ睡眠障害の症状がある場合
- 症状がなくともAHIが15以上の場合
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断が確定します。診断確定時点でマウスピースが保険適用(保険が使える)になり、PSGのAHIが20以上(簡易検査であれば40以上)で持続陽圧呼吸療法(CPAP)が保険適用になります。
PSGでAHIが20を(簡易検査では40を) | 保険適用になる治療 |
超えない | マウスピース |
超える | CPAP(持続陽圧呼吸療法) |
ややこしいことこの上ないのですが、
・重症度=医学的な知見にもとづき決定されたもの(医学サイド)
・医療保険の適用範囲=法律や制度の話(行政サイド)
との間にズレが生じている為に起きている問題です。実際にはPSGでのAHI 15以上で死亡率が有意に増悪する報告4も存在するため、本来であればAHI 15以上をCPAPの保険適用基準とすべきという旨の記述もガイドラインに見られますが2、残念ながら現状はそうなっておりません。
「閉塞性」睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の重症度別治療法
まずは、「閉塞(へいそく)」という名の通り、鼻と喉が合流する上気道(じょうきどう)と呼ばれる場所が狭くなって、呼吸するたびに大きなびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療法を紹介します。

なお、OSASの主な原因は「肥満」ですが、小児などで扁桃腺肥大など肥満以外の原因によってOSASになる患者さんもいます。痩せているからSASにならない、とは言えないのが難しいところです。
軽度のOSASの治療法
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)でAHIという数値が19未満の患者さんは、マウスピースでの治療になります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の診断確定があればマウスピースの制作は保険適用になります。
マウスピースは内科では製作できませんので、連携している歯科を紹介することになります。

OSASは眠りが深くなって舌などの筋肉の緊張が緩み、重力で落ちてきて上気道が閉塞して(=ふさがって)しまうことが原因で呼吸ができなくなる病気ですが、マウスピースを使うといわゆる「受け口」のような状態になって上気道が少し開き、閉塞しにくくなります。
AHIが20以上の場合の治療法
SASの診療ガイドライン2では、AHIが15以上になると「中等度」という区分になりますが、さらにAHIが20を超えると、CPAP(シーパップ: 持続陽圧呼吸療法)という治療が保険適用になります。
基本的には月に1回、かかりつけ医に通えば保険適用になり、月5,000円を切るくらいで治療を受けることができます。鼻マスクなどから少しだけ空気を入れ陽圧をかけて、上気道に隙間を開けておき閉塞しにくくすることで、呼吸ができるようになります。

ご覧↑のとおり、寝ている時に酸素マスクのようなものを付けるので、どうしてもCPAPが合わない方はやむなくマウスピースなど他の治療法を行う事になりますが、マウスピースよりCPAPのほうが治療効果が高いとされています2,5。使用している間に徐々に慣れてくる事が多いので、最初に違和感があってもまずはCPAPでの治療を続けてみることをおすすめします。
慣れてくれば本当にぐっすりと眠れるようになり、日中の眠気も改善してきますのでQOL(生活の質)が激変します。
重症患者の治療法
AHIが30を超えると「重症」という区分になります。
重症度が高くなる程、心臓や脳血管系の合併症リスクが高くなる事や、高血圧や糖尿病、脂質異常症(コレステロール)や高尿酸血症(痛風)といったいわゆるメタボリックシンドローム関連疾患のコントロールが悪化しやすくなる事5が知られており、SASの治療ではこれら合併症の治療を並行していく事がとても重要です。
SAS専門のクリニックというのも世の中にはあるようですが、SASを診療する医師はSASそのものだけでなくこういった全身の合併症を広く取り扱えるだけの知見と経験が必要です。
いわゆる「突然死」というのは、睡眠時に呼吸が止まって窒息死するというよりは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって心筋梗塞や心室細動などの致死的な不整脈、脳出血や脳梗塞などになってしまうリスクが上昇する事が原因で起こってしまいます。
実際、心筋梗塞など心臓突然死を来した112例を解析した結果、そのうちSASありの症例が夜間に突然死を迎えたのは46%で、夜間における心臓突然死の相対危険度はSASあり症例がSASなし症例に比較して2.57倍になったとする報告2,6があります。
SASと心血管や脳血管の疾患は以下のように深い関係があります。
- OSAS(閉塞性)が悪化して心血管や脳血管の疾患になる
- 心血管や脳血管の疾患が原因でCSAS(中枢性)も併発し、SASがより重症化
①②が負のスパイラルのように続き、SASそのものおよび心血管や脳血管の疾患が悪化していくと、睡眠の質が悪くなるだけにとどまらず、突然死をはじめとした命の危機が近づきます。
しかし、CPAPを使用するなどしてAHIを5未満まで下げる事が出来れば、心血管疾患による重篤な結果を招くリスクをSASが無い人と同程度まで下げられる事が知られております7。合併症のコントロールとともにSASの治療をしっかり行う事で、負の連鎖を断ち切りましょう。
最も効果が高く「安い」治療法は「ダイエット」、だけど。。。
身も蓋(ふた)もない話になってしまいますが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)で最も効果がある治療法は「痩せる(やせる)こと」です。
我が国では、OSASの7割は肥満が原因とされております。肥満を伴うOSASであれば、痩せさえすれば多くの場合は改善します。
具体的には、10%の体重減少でAHIが26%改善したとする報告8が存在します。
もちろん治療費もかかりません。ダイエットは摂取する量を抑えるなどして消費カロリーとの収支をマイナスにするだけですので、何も難しくありません。。。。っと言いたいのですが、ダイエットは一番難しいですよね。
SAS治療目的でいったんダイエットに成功してもリバウンドしてしまう事も多く、ダイエットを開始してからSASが改善しだすまでの期間というのもまちまちなので(ダイエット成功までにかかる時間は人それぞれで異なるので)、SASがダイエットのみで改善する割合というのは多くないとされています。
肥満を伴うSASの方はダイエットは常に行っていただきたいですが、ダイエット一辺倒でなく他の有効な治療法であるCPAPやマウスピースを並行すべき2,9とガイドラインにも記述があります。
禁煙
喫煙者と非喫煙者を比較した場合、喫煙者の方が有意にOSASを来す割合が高い10事が知られており、かつ禁煙によってOSASがある程度改善する11事が報告されております。
OSASは上気道(鼻と喉が合流する付近)が睡眠中にふさがることで無呼吸になってしまう病気ですが、タバコの煙によって気道の粘膜に炎症が起きて腫れやすくなるため、上気道閉塞の誘引となる事が原因と考えられております。
また、喫煙習慣はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)という大変怖い病気と常に背中合わせになってしまいますので、OSASが発覚したら、これを機会にして禁煙をすることをおすすめします。
自力での禁煙が難しい場合は、医学の助けを借りるのも一つです。チャンピックスという禁煙治療薬を3ヶ月内服する事で、およそ65.4%の成功率で禁煙できる事が知られています12(”禁煙外来 地名” などで検索してみましょう)。
体位療法(横向きまたは腹ばいに寝る)
簡便な対策として知られるのが、「横向きまたは腹ばいで寝る」です。
どうしても重力の関係で、仰向けで寝る方が舌根が落ちてきやすく、上気道が閉塞しやすいです。仰向けを避け横向きや腹ばいで寝る事で、単純ですが舌根沈下がしにくくなります。
欧米のデータでは、若年で肥満度が低く、もともとのOSAの重症度が低い症例では体位によるOSAS改善を認める頻度が高く(50 – 60%)なる2,13とされます。
たとえば、パジャマの背中にポケットを手製してテニスボールを入れておくことで、仰向けに寝れなくなりますので自然に横向きになれます。ただし、やってみると分かりますが体位療法はあまり現実的ではありません。
なぜなら、例えば右向きのまま7時間連続で寝ることは不可能なので、途中で左向きに体位を変えようとするのですが、そのときに一瞬仰向きにならざずをえず、テニスボールが背中をゴリっと刺激するので目覚めてしまいます。
一晩の中で体位を変える回数は何十回もあり、そのたびに目覚めてしまうのでとてもじゃないですけど熟睡はできません。
また、体位療法はCPAPと比較してAHIの低下は少なく、最低酸素飽和度も低かった(CPAP使用の場合より低酸素になってしまう)という報告14があり、簡便にすぐ実施できる点こそ優れているものの、客観的な有効性はCPAPに劣る2と考えられます。
小児の場合は外科手術を行うケースも
小児の場合、太っていなくても咽頭扁桃(アデノイド)と口蓋扁桃が腫れてしまい閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)になることがあります。

突然死のリスクもさることながら、小児がOSASになると夜間にきちんと睡眠が取れない事で成長を阻害する要因となってしてしまいますので、終夜睡眠ポリグラフ検査によるAHIが30を超える場合は、外科手術で扁桃を除去するケースもあります2。
※8日前後の入院が必要になります
「中枢性」睡眠時無呼吸症候群(CSAS)の治療
CSAS(中枢性睡眠時無呼吸症候群)は、睡眠中に脳から肺そのものや呼吸をする筋肉(呼吸補助筋といいます)への指令がうまく伝達されずに無呼吸になってしまう病気ですので、上気道がふさがってしまうOSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)とは治療法が根本的に異なります。
OSAS (閉塞性) = 呼吸をしようとするが気道が閉塞してしまって呼吸ができない
CSAS (中枢性) = 呼吸をしようという脳からの命令がうまく伝わらずそもそも呼吸をしない
CSASの原因となる心不全の治療
CSASは脳の疾患や心不全、腎不全などが影響しCSASを併発することが知られています。CSASの治療としては、CPAPなどだけでは改善不十分である割合が約半数と言われており、CSASの原因となる疾患に対する治療も同時に必要です。
心不全に合併するCSASの場合は、心不全の原因となるような高血圧や体液貯留、弁膜症や心筋症、心筋梗塞などによる心臓の機能低下などに対し治療をあわせて行っていきます。
心不全に対するCRT
心臓は電気信号によって動きを制御していますが、心臓の中で電気信号の伝わり方にズレが生じてしまうことがあります。
そうすると、本来同時に収縮する左右の心室が異質な動きをすることになります(心室同期障害)。イメージ的には歩くときに緊張のあまり右手と右足が同時に出る、みたいな感じといえばいいでしょうか。あるいは大縄跳びで回し手の呼吸が合わずに縄がバラバラに動いてしまう、と例えたほうがいいかもしれませんね。
この「ズレ」によって心臓は効率的に血液を全身に送り出せなくなってしまい、同じだけの血液を送り出すのでも心臓はよりたくさん動かなければならなくなります。これで心臓が疲れ果ててしまっている状態というのがいわゆる心不全です。心室同期障害が原因で心不全をきたしている場合は、ペースメーカーを埋め込み左右の心室の動きを同期させるCRT(心臓再同期療法)という治療法が適応となる事があります。
心不全がCSASの原因となっている場合、CPAPなどCSASの治療だけ行うのでは不十分で、こういった治療も並行する必要がある場合があります。
心不全合併のCSASに対するBi-Level PAP
大きないびきをかく方の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では、CPAPによって持続的に一定の陽圧をかけて気道が塞がるのを予防し、酸素と二酸化炭素の通り道を確保しますが、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は上気道がふさがるわけではないため、一定の陽圧をかけつづけるだけでは治療効果が不十分となる場合があります。
心不全を伴うCSASの約半数がCPAPのみでは改善しないとされています。
Bi-Level PAPとCPAPの違いは、
- プレッシャーサポート:
一定の陽圧をかけ続けるのではなく、呼気時(息を吐くとき)には低い陽圧を、吸気時(息を吸うとき)には高い陽圧をと二層に分けてかける事で、圧較差を作って呼吸を補助します - バックアップ換気:
CSASによる無呼吸が検出された場合は、機械によって強制的に換気が行われます
この2点が主です。一定の低い陽圧をかけ気道が塞がるのを予防するだけのCPAPと違い、呼吸をサポートしてあげる機能と無呼吸に対する強制換気が入る分、より効果的と考えられています。
CSASそのものに対してのBi-Level PAPの保険適用はありませんが、CSASにBi-Level PAPが必要な心不全を伴っている場合、心不全に対して保険適用して使用します。
心不全合併のCSASに対するASV
CSASに伴う心不全に対して、Bi-Level PAPの発展版としてASVという機械を使って治療を行う場合があります。
呼吸補助の仕組みはBi-Level PAPと似ていますが、吸気時にかける陽圧の程度を、直前の呼吸を参考に自動調整する点がBi-Level PAPより進化しています。
実際、CSASを伴う心不全に対しては、CPAPよりBi-Level PAPの方が、そしてこれらより更にASVの方が治療効果は高いと考えられております。
SASに対するAHIの改善、および心不全に対する左心機能や体液貯留の改善ともASVがより有効とする報告があります。
心不全合併のCSASに対する夜間の在宅酸素療法(HOT)
心不全を伴うCSASで、CPAPやBi-Level PAP、ASVなどの装着に違和感がありうまく使えない人や効果が不十分な人などは、夜間在宅酸素療法(HOT)を行うことがあります。HOTによって、SASの改善のみならず、心機能の改善と運動耐容能の改善が得られることなどが報告されています。
その他(心臓外科手術など)
CSAS(中枢性睡眠時無呼吸症候群)の原因となっている心不全が手術適応がある場合、基本的には手術が優先です(弁膜症に対する弁置換術や冠動脈狭窄によるバイパス手術など)。
以上述べてきたように、特に心不全を伴うCSASの場合は、SASのみを治療するのでなく、その背景にある心不全のケアをしっかりと行っていく必要があります。「SAS=CPAP」と多くの場合は決め打ちされがちですが、当然ながら人間の体はすべてつながっておりますので、トータルで治療を行える医療機関をお探しください。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、
「寝てる時に時々呼吸が止まるやつでしょ?」
と軽くみられることが多いですが、無治療のままだと乳がんのステージⅢよりも生存率が低い大変怖い病気です (別記事参照)。
また、眠りが浅くなり日中の集中力が欠けるばかりか、居眠り運転や居眠り作業の原因となってしまい、他人を巻き込んだ死亡事故を引き超す原因にもなってしまいますので、
- 日中にやたら眠い
- 家族に睡眠時に無呼吸になっているのを指摘されたことがある
- 慢性心不全と診断されている
などなど、これらに思い当たる場合は、お近くの呼吸器専門医に相談してみてください。ガイドラインに則った最適な治療法を受ける事ができるはずです。ざっくり箇条書きにしてしまえば
- PSGでのAHIが20未満であればマウスピースを
- AHIが20以上(簡易検査では40以上)であればCPAPなどの機械を用いた治療を行いつつ
- 肥満が伴っていればダイエットを
- 喫煙していれば禁煙を励行し
- メタボリックシンドローム関連疾患や慢性心不全が合併している場合はこれらの治療もしっかり行い
- 特にCSASの可能性や複合型の可能性は常に考慮に入れながら、注意深く診察を進めていく
という事になります。
睡眠時無呼吸症候群はしっかりと治療を行えばきちんと改善が見込める病気です。睡眠の質が大幅に改善すると、大げさでなく「人生が変わった」「なんでもっと早く治療しなかったんだろう」との感想を持てると思いますのでお早めに。
以上


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