仙台空港北クリニック(仮)院長の蒲生俊一です。
前の記事で、医療事務の方たちも我々医師や看護師と同じく立派な医療従事者ですということを書かせていただきましたが、医師や看護師以外の医療従事者は病院内に他にもおりますので是非紹介させてください。
警備員さんは病院の守護神
新型コロナウイルスの混乱により、病院に来院される患者さんは気が立っていることが少なくありません。
声を荒げる患者さんに対しては、受付スタッフが一次対応していますが、どうにもならなかった場合は警備員さんの出番になります。
患者さんの怒りが頂点に達している状態ですので、当然飛沫による感染リスクがありますが、皆さんご存じのとおり、飛沫に対するマスクの予防効果は限定的ですし、目はマスクで隠せませんので警備員さんは感染のリスクに曝されざるを得ません。
駐車場でのトラブルの際にも、同様に駐車場にいる警備員さんが感染リスクに曝される事になり得ます。
警備員さんが病院で体を張ってくださっているからこそ我々医師は治療に専念できますので、彼らの奮戦にはいつも頭が下がる思いです。
清掃員さんは医師と遜色ないくらいウイルスに接近する
私は決して「掃除のおばちゃん」とは呼びません。一発で名前を覚えることはできないのは申し訳ないのですが、名前で呼ぶようにしています。
清掃員さん (男性清掃員さんももちろんいらっしゃいます) は、病院内のあらゆるところを掃除しますので、医師と遜色ないくらい新型コロナウイルスに接近します。
確かなエビデンスがないので断言はできませんが、アメリカで「#コロナチャレンジ」というのが流行っていて、インフルエンサーが公衆トイレの便器などを舐めるというとんでもない事が行われています。
飛沫は室内であれば2 m以内の場所に落下します。よって、便器に新型コロナウイルスが付着していても不思議ではありません。待合室のソファにも新型コロナウイルスは付着しています。
で、そのコロナチャレンジを行った一人が新型コロナウイルスに感染してしまったようで少し前にニュースになっていました。
というか、清掃員さんが綺麗に掃除してくださる場所にはほぼ全て新型コロナウイルスが付着している可能性があり、感染リスクをを抱えながら彼ら彼女たちは仕事してくださっているのです。
職場放棄して逃げ出しても責めることは出来ませんが、私が知る限り仕事を辞めたという清掃員さんは聞いたことがありません。頭が下がります。いつも本当にありがとうございます。
病院調理師さんと栄養士さんはノロウイルスとも戦っています
入院患者さんや我々を含めて病院職員は病院調理師と呼ばれる厨房の方が作った食事を食べています。献立を考えるのが栄養士さんです。
私は産業医として病院の厨房の巡視を行う事もあるのですが、厨房では毎日どれくらい掃除しているか皆さんご存知でしょうか?
新型コロナウイルスに関係なく、毎日ピカピカになるまで掃除しまくっています。「ここまでやるの?」というくらい徹底的に。もともと食中毒防止への意識が高い職場ですので、そうしないと新型コロナウイルスはもちろんのこと、ノロウイルスなどを防げないからです。
厨房はとても狭く三密に近い過酷な環境です。ガス厨房であれば夏は恐ろしいくらい暑いですし、電化厨房であれば冬は凍てつくように寒いです。誰かが感染すれば厨房はストップしてしまいますので誰よりも新型コロナウイルスへの予防は欠かせません。
人間の体は食事から作られますので、栄養士さんや調理師さんがいてくれないと新型コロナウイルスで入院している患者さんを回復させることは出来ません。いくら医療が発達しても一番大事なのは食事なのです。
いつも食堂でおいしくいただいております。本当にありがとうございます。
電気・ボイラー・各種設備担当さん
病院では多くの電気とお湯を使います。数えたことはありませんが、それこそ星の数ほどの照明がありますし、空調の調整、陽圧陰圧の調整などなど、全てが完璧に作動していないと治療に大きな影響が出てしまいます。
これらの設備を整備しコントロールしている彼らは病院の地下室にいます。中央監視室やボイラー室などで彼らは働き、トラブルがあると呼び出されて即時対応しなければなりません。
電気とボイラーのことを少し調べたことがあるのですが、例えば大都市にある巨大なビルは1年に1回全館停電させて1日かけて設備点検を行っています。停電になった場合に非常用発電機がちゃんと動作するのかとか、ガス設備にピンホールと呼ばれる小さな穴が開いていないかとか、細部に渡って点検することで向こう1年に備えるのです。
でも、病院は入院している患者さんがいますし、ICU (集中治療室) や人工呼吸器をつけている患者さんもいるので24時間365日電気やボイラーを止めるわけにはいかないので、全館停電させて点検することはできません。だから内心ヒヤヒヤなはずなんです。
特に今は新型コロナウイルスの影響で設備トラブルは絶対に許されない状況です。ハイプレッシャーの中で仕事をしている彼らは、私の目から見れば戦士であり立派な医療従事者です。
まとめ
病院は患者さんがいる以上、停電しないのは当たり前だしお湯が使えないと困るし、食事は出てきて当然のように感じてしまいます。
でも、当たり前の影に彼ら彼女たちのプロフェッショナリズムがあります。
我々医師のようにウイルスについて専門的に勉強していないのに院内のウイルスの大半を除去しているのは清掃員さんですし、患者さんと何かトラブルがあった際に飛沫を浴びながら対応するのが警備員さんです。
前回の記事では医療事務の方たちを医療従事者だと紹介させていただきましたが、この記事で紹介した彼ら彼女たちも立派な医療従事者です。
もしあなたが病院に来院された際、設備の方が照明を換えていたり、廊下や待合室のイスを綺麗に拭いていたりする清掃員さんなどを見かけたなら「この人たちのおかげで病院は運営できているのか。たしかに医療従事者だな」と少し違った目線で見ていただけたらありがたく思います。
そして、あなたの身内の方で病院の裏方として働いている人がいるのなら、「私のお母さんは医療従事者なんだ」「僕のお父さんは医者の先生と一緒にコロナと戦っている医療従事者なんだ!」と胸を張ってください。彼ら彼女たちはあなたにとっても私にとってもコロナと戦う英雄なのだから。
以上