お急ぎの方へ
- 高熱がなくても、食事・元気・受け答えの変化に注意する
- 急な息苦しさや強い息苦しさ、意識の異常、突然の激しい胸や背中の痛みは119番
- 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内の開始が目安です。過ぎても受診を諦めない
こんばんは。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
冬に向けて、ご家族や施設で暮らす高齢の方のインフルエンザが気になる季節です。「咳はあるけれど、熱は高くないから大丈夫かな」と迷うこともあると思います。
結論から申し上げると、高齢者では高熱がなくても、いつもと違う様子があれば早めの受診が大切です。本記事では、肺炎(はいえん:肺に炎症が起こる病気)や持病の悪化、治療を始める時期、家族・施設での対策、ワクチンを解説します。
2026年10月4日から、日曜・祝日も発熱外来を行っています
診療は10時〜15時(昼休みなし)です。予約は不要で、当日チェックインで受け付けます。PCR検査(ウイルスの遺伝子を調べる検査)は当日中に結果をお伝えします。日曜・祝日は発熱外来のみで、一般外来と点滴は行っていません。診療日と休診日は、お知らせ内のカレンダーをご確認ください。日曜・祝日の発熱外来のお知らせ

高齢者のインフルエンザは高熱が出ないこともある?
元気や食欲の変化が、感染に気づく手がかりになることがあります。高齢の方では、インフルエンザでも高熱が出ないことがあるためです[1]。
米国疾病予防管理センター(CDC:米国の公的な保健機関)も、施設入所者では発熱や咳がない場合に注意を促しています[2]。
- 食事・水分:いつもより食べない、飲む量が減った
- 元気・動き:普段よりだるそう、身の回りのことがしづらい
- 反応:受け答えや行動が普段と違う
- 周囲の状況:家族や同じ施設でインフルエンザが出ている
これらの変化だけでインフルエンザと決まるわけではありません。ただ、「年のせい」と片づけず、かかりつけ医や発熱外来にその日のうちに相談してください。反応がおかしい、急に息苦しいときは、次の救急の目安を優先します。
院長蒲生ざっくり「昨日の普段どおり」と比べてみると、体温だけでは気づけない変化が見えてきます。
高齢者のインフルエンザで119番が必要なサインは?
- 急に息が苦しくなった、呼吸がひどく苦しい
- 呼びかけへの反応がおかしい、意識がない
- 胸や背中に突然の激しい痛みがある
- 急にふらついて立てない、片方の手足に力が入らない、ろれつが回らない
胸の痛みは、肺炎だけでなく心臓の病気などでも起こります。インフルエンザと診断された後でも、上のサインを熱のせいと決めつけないでください。上のサインがあるときは、夜間・休日でもすぐに119番へ連絡してください[3]。
水分がとれない、尿が明らかに少ない、咳やだるさが悪化しているときは、すぐに医療機関へ連絡し受診してください。夜間なら救急外来などを利用します[4]。



「熱は高くないのに様子がおかしい」という気づきは大切です。体温の数字より、呼吸や受け答えを見てください。
高齢者のインフルエンザで肺炎・持病が心配な理由
感染をきっかけに、肺炎を起こしたり、心臓や肺などの持病が悪化したりすることがあります[5][4]。
肺炎は、インフルエンザウイルスや、重なって感染した細菌で起こります[4]。こうした合併症(がっぺいしょう:もとの病気に伴って起こる別の病気)にも治療が必要です。
米国CDCは、インフルエンザで喘息(ぜんそく:空気の通り道に炎症が起こる病気)の発作や慢性の心臓病が悪化する場合も示しています[4]。熱が下がった後でも、咳が強くなる、息切れが出る、再び具合が悪くなるときは、夜間でも医療機関に相談してください。
細菌による肺炎などには、抗菌薬(こうきんやく:細菌を抑える薬)を使って治療します[4][6]。処方された薬は指示どおりに使い、残っている薬を自己判断で流用しないでください。
持病の薬も、ご自身でまとめて中止せず、飲食が難しいときの扱いを処方元へ確認しましょう。受診時にはお薬手帳と、心臓・肺・腎臓の病気や糖尿病などの情報が役立ちます。



熱が下がると、ほっとするものです。その後も「息は楽か」「食べられるか」まで見ておくと安心です。
高齢者のインフルエンザ治療は48時間以内?
抗インフルエンザ薬(インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬)は、発症から48時間以内の開始が目安です[5]。
48時間は「抗インフルエンザ薬を始める目安」であり、「検査まで待つ時間」ではありません[5]。
発症は「検査で陽性と分かった時刻」ではなく、症状が出始めた時点から考えます。高熱を待たず、咳、だるさ、食欲の変化がいつからあったかを伝えてください。
48時間を過ぎても、受診を諦めない
米国CDCは、重症の方や重くなる危険が高い方では、遅れて治療を始めても役立つ場合があるとしています[6]。国や医療機関によって方針が異なります。日本でも、経過と病状を伝えて薬の必要性を医師に判断してもらいましょう。
米国CDCの施設向け指針では、医師の判断で検査結果が出る前に治療を始める場合も示されています[2]。症状や周囲の流行を伝え、治療を始める時期は医師に相談してください。



発熱に先立って、食欲の低下が始まっていることもあります。熱以外の変化がいつ始まったかも、治療のタイミングを考える手がかりになります。
高齢者のインフルエンザを家族・施設で広げないには?
手洗い・マスク・換気に加え、症状に気づいたら早く情報を共有することが大切です[5][2]。
- 家の中:可能なら療養する部屋を分け、近くで世話をするときはマスクと手洗いを心がける
- 換気:寒くしすぎないよう暖房を使いながら換気し、換気口をふさがない
- 面会・通所:本人や家族に症状が出たら、訪問や利用の前に施設へ連絡する
- 情報共有:症状が始まった時刻、同じような症状の人、検査結果を医師や施設へ伝える
施設では、体温だけでなく食事量や行動の変化を共有することが役立ちます[2][1]。家族だけで利用再開の日を決めず、本人の回復状況と施設の対応を確認してください。
米国CDCの施設向け指針では、集団発生時に、接触した入所者への予防投与も検討するとされています[2]。ここでいう予防投与(よぼうとうよ)は、感染者と接触した、まだ症状のない人に発病を防ぐ目的で薬を使う方法です[2]。日本では施設の担当医に適応を相談してください。
ご家族に残った薬を配るのは避けましょう。本人の治療と周囲への予防は、使い方が異なります。施設内で複数の方に症状がある場合は、施設から担当医や保健所へ早めに相談することが大切です。



ご家族と施設で「いつから、どんな変化があったか」をそろえると、次に対応する人にも伝わりやすくなります。
高齢者のインフルエンザワクチンは毎年必要?
毎年のワクチン接種で、発病と重症化(じゅうしょうか:病状が重くなること)の予防を目指します[7]。
ワクチンは、感染対策や早い治療と組み合わせて高齢の方を守る備えです。接種していてもインフルエンザを発症することがあり、その場合も受診の目安は変わりません。
研究の数字は、対象と時代をセットで見る
オランダの15の家庭医診療所で、1991〜1992年に行われた研究があります[8]。対象は60歳以上の1,838人でした[8]。当時は、重くなる危険が高い集団にワクチン接種が行われていました[8]。参加者は、その集団に該当すると把握されていなかった方です[8]。
ワクチンと偽薬(ぎやく:比較のために使う、ワクチン成分を含まない注射)を、本人にも評価者にも分からないよう無作為に割り当てて比べています[8]。血液検査で確認したインフルエンザ感染は、接種群で4%、偽薬群で9%でした[8]。
つまり、この研究では接種群のほうが感染が少なかった、ということです。古い時期の、こうした参加条件の方を対象とする研究であり、今の施設入所者の重症化率を示す数字ではありません。効果はその年の流行などでも変わりますが、現在の厚生労働省も重症化予防の意義を示しています[7]。
日本の定期接種の対象
定期接種(国の制度に基づき自治体が行う予防接種)は、65歳以上の方などが対象です[7]。60〜64歳は、心臓・腎臓・呼吸器の障害で日常生活が極度に制限される方も対象です[7]。同年代で、HIV(エイチアイブイ:体を感染から守る働きを弱めるウイルス)による免疫障害で日常生活がほとんど不可能な方も含まれます[7]。この制度では毎年度1回接種します[7]。
実施期間や助成、使うワクチンの案内は、自治体や年度で異なります。お住まいの自治体の最新案内を確認し、接種歴や持病をかかりつけ医に伝えて相談してください。



ワクチンを済ませても、普段との違いを見ることは続けましょう。予防と早い気づきは、両方あると心強いです。
高齢者のインフルエンザが心配なときの当院の受診案内
当院の呼吸器科では、インフルエンザや発熱の診療を行っています。当院は、発熱外来の受診をお断りしない方針です。
| 曜日 | 時間 |
|---|---|
| 月・火・水・金・土 | 9:00〜12:00/14:00〜18:00 |
| 日曜・祝日(2026年10月4日から) | 10:00〜15:00(昼休みなし・発熱外来のみ) |
| 木曜 | 休診 |
一般外来の診療日は月・火・水・金・土です。日曜・祝日の最新日程は日曜・祝日の発熱外来のお知らせをご確認ください。
来院前の事前問診は任意です。発熱外来入口のQRコード(スマホのカメラで読み取る四角い印)から当日チェックインを行います。平日はチェックイン後、車内でお待ちいただきます。日曜・祝日はチェックイン後、一般外来入口で保険証を確認します。


呼び出しはSMS(携帯電話の短いメッセージ)またはお電話です。手順の詳細は発熱外来の事前問診・当日チェックインについてをご覧ください。
- 保険資格を確認できるものと、お薬手帳
- 最初に変化があった日時と、普段の食事量・受け答えとの違い
- 持病、水分制限の有無、飲めている量、尿の変化
- 家族・施設での流行状況、検査日時と結果、ワクチン接種歴
水分がとれないときは、すぐに医療機関へ連絡し受診してください。夜間なら救急外来などを利用します。
高齢者のインフルエンザでよくある質問
熱が高くなくても、普段と違う様子があれば早めに相談することが大切です。
- 熱が高くなくても受診したほうがよいですか?
-
はい。高齢の方では、食欲や元気の低下が最初の変化になることがあります。周囲で流行があり、普段と違う様子なら、その日のうちにかかりつけ医や発熱外来に相談してください。
- 48時間を過ぎたら、もう治療はできませんか?
-
48時間を過ぎたことだけで治療を諦める必要はありません。米国CDCは、重症の方などでは遅れて薬を始めても役立つ場合があるとしています[6]。肺炎や持病の悪化への治療も大切です。症状が始まった日時と現在の状態を伝え、受診してください。
- 熱が下がったのに咳や息切れが悪化しています。
-
熱が下がっていても、肺炎や持病の悪化を調べる必要があります。すぐに医療機関へ連絡し、夜間なら救急外来などを利用してください。
- 家族がインフルエンザなら、高齢者も予防の薬を飲みますか?
-
予防投与の必要性は、接触状況や本人の持病などをもとに医師が判断します。家族の薬を分けて飲ませず、かかりつけ医や施設の担当医へ相談してください。すでに症状があるなら、予防ではなく診察と治療の相談が必要です。
- ワクチンを打った年もインフルエンザになりますか?
-
接種した年でもかかることはあります。ワクチンは発病と重症化の予防を目指すもので、接種済みという理由だけで症状を見過ごさないことが大切です。手洗いや換気を続け、普段との変化があれば早めに相談しましょう。
まとめ:高齢者のインフルエンザは普段との違いを見る
体温だけでなく食事・元気・受け答えの変化に気づくことが、早い受診につながります。
- 高熱がなくても、食事・元気・受け答えの変化に注意する
- 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内の開始が目安です。過ぎても受診を諦めない
- 肺炎や持病の悪化に注意し、解熱後に具合が悪くなったら夜間でも医療機関に相談する
- 家族・施設で早く情報を共有し、ワクチンと日々の感染対策を組み合わせる
ご家族が気づいた小さな変化も、診察の大切な手がかりです。「何が普段と違うか」を私達に伝えていただければと思います。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
以上
参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention. Clinical Signs and Symptoms of Influenza. CDC. 2026. https://www.cdc.gov/flu/hcp/clinical-signs/index.html
- Centers for Disease Control and Prevention. Viral Respiratory Pathogens Toolkit for Nursing Homes. CDC. 2026. https://www.cdc.gov/long-term-care-facilities/hcp/respiratory-virus-toolkit/
- 厚生労働省. こんな時は迷わず119へ. 上手な医療のかかり方. 参照 2026年10月28日. https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/urgency.html
- Centers for Disease Control and Prevention. Signs and Symptoms of Flu. CDC. 参照 2026年10月28日. https://www.cdc.gov/flu/signs-symptoms/index.html
- 厚生労働省. 令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A. 厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月28日. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2026.html
- Centers for Disease Control and Prevention. Treatment of Flu. CDC. 2025. https://www.cdc.gov/flu/treatment/
- 厚生労働省. インフルエンザワクチン(季節性). 厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月28日. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html
- Govaert TM, Thijs CT, Masurel N, Sprenger MJ, Dinant GJ, Knottnerus JA. The efficacy of influenza vaccination in elderly individuals. A randomized double-blind placebo-controlled trial. JAMA. 1994. PMID: 7966893
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