お急ぎの方へ
- 扁桃炎を繰り返すお子さんの手術適応に、日本で一つに決まった基準はない。発熱やのどの症状の回数を記録し、耳鼻咽喉科の専門医と相談して決める
- けいれんしている、呼びかけに答えない、急に息が苦しいときは119番
- つばが飲み込めない、口が開きにくい、食事がとれないほどのどの痛みは、その日のうちに受診を。扁桃周囲膿瘍(のうよう)のおそれがある
おはようございます。仙台空港北クリニック院長の蒲生俊一(医学博士 / 呼吸器専門医)です。
お子さんが扁桃炎を繰り返すと、「このままずっと続くのだろうか」「手術を考えたほうがよいのだろうか」と心配になりますよね。高熱と強いのどの痛みで食事がとれず、看病する親御さんも疲れがたまります。
結論から申し上げると、扁桃炎を繰り返すお子さんの手術の適応に、日本で一つに決まった回数の基準があるわけではありません。回数の目安は複数あり、資料によって少しずつ違います[1]。大切なのは、発熱やのどの症状の回数を記録し、耳鼻咽喉科の専門医と相談して決めることです。
本記事では、代表的な回数の基準を並べて比べ、溶連菌とウイルスの違い、手術でどのくらいよくなるのかとリスク、そして受診を急ぐサインを、呼吸器専門医の立場から解説します。
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【結論】扁桃炎を繰り返すとき、手術の適応は一つに決まっている?
結論から言うと、扁桃炎を繰り返すお子さんの手術(扁桃摘出術)の適応は、回数の目安を参考にしながら、症状の重さや日常生活への支障をあわせて、耳鼻咽喉科の専門医と相談して決めるものです[1]。
- 【回数の目安】
複数ある。Paradise基準・日本耳鼻咽喉科学会会報の総説・学会の一般向けQ&Aで少しずつ違う[1][2][3] - 【症状の中身】
発熱38.3℃以上、頸部リンパ節腫脹、扁桃の白苔(はくたい)、溶連菌陽性の有無が判断の材料になる[1][2] - 【記録と相談】
発症日・体温・受診したときの診断を記録しておくと、専門医との相談が進めやすい[2]
つまり、「何回繰り返したら手術」と一律に決めるのではなく、回数と症状の重さを組み合わせて考える、ということです。
「繰り返す扁桃炎」は何回から?回数基準は資料によって違う
扁桃炎を繰り返すお子さんの手術適応として、代表的な回数の目安を並べると次のようになります。それぞれ少しずつ違い、日本で一つに定まった基準はありません[1][3]。
| 基準(出典) | 回数の目安 | あわせて必要なこと |
|---|---|---|
| Paradise基準(1984年の研究がもと。米国2019年ガイドラインなどに採用)[1][2][4] | 1年に7回以上/2年続けて1年5回以上/3年続けて1年3回以上 | 各回に発熱38.3℃以上・頸部リンパ節腫脹・扁桃の白苔(滲出性扁桃炎)・溶連菌陽性のいずれか1つ以上[1][2] |
| 日本耳鼻咽喉科学会会報の総説・本文(2016)[1] | 1年3〜4回、2年で5〜6回以上(目安として) | 本文と表で数字が異なる |
| 同じ総説の表2(日本)[1] | 1年4〜5回以上、2年5〜6回以上、または扁桃炎インデックス(TI)8以上 | 「ほかの報告あり」として示されている |
| 学会の一般向けQ&A(2022)[3] | この1〜2年に4〜5回/年の発熱 | 扁桃が大きく呼吸が苦しくなる場合や、抗菌薬で熱が下がりにくい場合も |
Paradise基準は、もともと1984年に報告された研究がもとになっています[4]。この基準は英国(2002年)や米国(2011年)などのガイドラインに採用されましたが、欧米諸国がすべて採用しているわけではなく、世界共通の基準があるわけでもありません[1]。
院長蒲生同じ総説の中でも、本文は「1年3〜4回」、表2は「1年4〜5回」と数字が食い違っています。それくらい、回数だけで線を引くのは難しいのです。
回数だけでなく「中身」も見る
回数に加えて、その1回1回がどんな症状だったかも見ます。Paradise基準では、のどの痛みに加えて、発熱38.3℃以上、頸部リンパ節腫脹(圧痛を伴うか2cm以上)、滲出性扁桃炎(扁桃に白い苔がつく)、培養での溶連菌陽性、のいずれか1つ以上を伴うことが条件です[1][2]。米国ガイドラインも、各回についての記録を求めています[2]。
扁桃炎インデックス(TI)という考え方
年間の罹患回数×罹患年数で計算する簡易な指標を扁桃炎インデックス(TI)といい、これが8以上(例:年4回×2年)だと自然には軽快しにくいとされています[1]。ただし、これは2016年の総説が教科書や文献を引用して紹介したもので、国の定めた基準ではありません[1]。
溶連菌とウイルスはどう違う?検査と抗菌薬の考え方
のどの痛みと発熱の原因はウイルスが多い一方、溶連菌(A群β溶血性レンサ球菌、GAS)のこともあり、この見分け方が治療を左右します。診察所見と、迅速抗原検査(じんそくこうげんけんさ:のどをぬぐって調べる検査)や培養検査の結果をあわせて診断します[5]。
| 溶連菌(GAS)咽頭炎の特徴[5] | ウイルス性咽頭炎の特徴[5] |
|---|---|
| 突然発症、発熱、頭痛、悪心・嘔吐、腹痛、圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、猩紅熱様皮疹 | 結膜炎、咳嗽、嗄声(させい)、鼻汁、筋肉痛、下痢 |
日本の報告では、急性咽頭炎と診断された小児のうち溶連菌陽性は16.3%でした(海外では27%)[5]。溶連菌による急性咽頭炎は5歳から12歳で頻度が高く、3歳未満ではまれです[5]。また、無症状の小児でも10〜30%に溶連菌を保菌していることがあり、見つかった菌がすべて原因とは限りません[5]。
抗菌薬の考え方です。溶連菌が検出されたときは、抗菌薬(アモキシシリンなど)を処方どおり最後まで飲み切ります[5]。のどの痛みが消えても一定期間飲む必要があり、リウマチ熱や腎炎などの合併症を防ぐためと説明されています[3]。ウイルスが原因のときは、症状を和らげる治療が中心になります[5]。
溶連菌のとき、保育園に戻る目安は「抗菌薬内服後24〜48時間が経過していること」とされています[6]。のどの症状が続くときは、溶連菌の検査の記事や溶連菌後の腎炎の記事も参考にしてください。
扁桃摘出術でどのくらいよくなる?メリットとリスク
手術の利益は報告されていますが、効果は術後1年でみるとごく控えめとまとめられており、リスクとのバランスで考えます[7]。
2014年のコクランレビュー(複数の臨床試験をまとめた研究)では、小児5試験・987人を検討しています。術後1年で、手術を受けた群は平均3回(うち1回は手術直後に起こるもの)、手術をしなかった群は3.6回で、差は0.6回でした[7]。のどの痛みの日数は、中等度に症状のあったお子さんで18日対23日(差5.1日)でした。手術側の18日には、術後直後の5〜7日が含まれます[7]。一方、もともと重症だったお子さんで中等度〜重度の咽頭炎の回数をみると、1.1回対1.2回で有意な差はありませんでした(エビデンスの質は低い)。それでも著者らは、より重症なお子さんほど利益を得やすいとまとめています[7]。
- 【利益】
術後1年で、のどの痛みの回数と日数が減る。重症のお子さんほど利益が期待できる[7] - 【リスク】
手術後の出血は、直近のメタ解析(複数の観察研究をまとめた解析)で約3%と報告されている。ただし研究ごとのばらつきが非常に大きく、この数字は目安として見る[8] - 【昔の報告】
1984年の研究では、手術を受けた95人のうち13人(14%)に手術関連の合併症があり、いずれもすぐ対処できるか、自然に軽快するものだった[4]
扁桃を取ると免疫が弱くなるのではと心配されますが、学会は「扁桃があってもなくても免疫力にはほとんど差がない」と説明しています[3]。2016年の総説でも、一時的に免疫の指標の変化はみられるが臨床的には問題にならないとされています[1]。耳鼻咽喉科医は合併症として特に後出血(手術後の出血)を問題視する、という指摘もあります[1]。
手術を考えるのは、回数だけで決まる?
扁桃炎の回数が基準に届かなくても、手術を考えやすくする要因があります[2]。次のような場合です。
- 抗菌薬にアレルギーがあり、内服が難しい[1][2]
- 扁桃炎が重く、全身症状を伴う[1]
- PFAPA(周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭扁桃炎)のような特殊な病態[1][2]
- 扁桃周囲膿瘍(のうよう)を繰り返す[1][2]
- 扁桃そのものが大きく、扁桃炎のたびに呼吸が苦しくなる[3]
いびきや睡眠時無呼吸も、扁桃摘出術の別の適応になります[1][2][3]。睡眠時無呼吸のくわしい基準は、この記事で扱った回数の基準とは分けて考えます[1][2]。
受診を急ぐサインは?つばが飲めない・口が開かない
つばを飲み込めない、口が開きにくい、食事がとれないほどのどの痛みは、扁桃周囲膿瘍など重い病気のサインかもしれません[9]。
まず、次のどれか1つでもあれば、熱の高さにかかわらず、迷わず119番に電話してください。夜間・休日でも同じです。
- けいれんしている
- 呼びかけに答えない、またはもうろうとしている
- 急に息が苦しい、肩で息をしている、唇が紫っぽい
- 息を吸うときのゼーゼー(喘鳴)が目立つ、いつもと違う姿勢で息をしている、よだれが止まらない[5]
そのうえで、次のようなときは朝まで待たず、その日のうちに、耳鼻咽喉科のある医療機関を受診してください。
- つばを飲み込むのがとても痛い、飲み込めない[9]
- 口が開きにくい、耳も痛く感じる[9]
- 食事がとれないほどのどの痛み[9]
扁桃周囲膿瘍は、扁桃のまわりに膿がたまる状態です。腫れたところを切開して膿を出し、抗菌薬の点滴や内服を行い、しばしば入院が必要になります[9]。これらのサインがあるときは、扁桃周囲膿瘍の記事もあわせてご覧ください。
手術を迷ったら、何を記録して誰に相談する?
手術を受けるかどうかを迷ったら、まず発熱やのどの症状の回数を記録し、耳鼻咽喉科の専門医に相談してください[1][2][9]。
記録するときは、次の点をメモしておくと役立ちます[1][2]。
- 発症した日
- いちばん高かった体温
- 受診したときの診断(溶連菌が陽性だったかどうか)[2]
- 抗菌薬を飲んだか、その後の経過[3]
扁桃炎かなと思ったら、我慢せず耳鼻咽喉科でご相談ください[9]。手術の判断は、耳鼻咽喉科の専門医と相談して進めていきます。



「何回あったか」を親御さんが記録しているだけで、専門医との相談がずっと具体的になります。
よくある質問(FAQ)
- 扁桃炎は年に何回繰り返したら手術を考えますか?
-
一つに決まった基準はありません。Paradise基準では1年に7回以上など、日本耳鼻咽喉科学会会報の総説では1年3〜4回(表では4〜5回)、学会の一般向けQ&Aではこの1〜2年に4〜5回/年と、資料によって違います[1][2][3]。回数は目安なので、記録をもとに耳鼻咽喉科の専門医と相談して決めます。
- 溶連菌が原因だと、手術になりやすいですか?
-
溶連菌かどうかだけで手術が決まるわけではありません。Paradise基準では、各回の所見の一つとして溶連菌陽性が数えられます[1][2]。治療の面では、溶連菌かどうかは回数とは別に内容を左右します。溶連菌が検出されたときは、抗菌薬を処方どおり最後まで飲み切ることが大切です[5]。のどの痛みが消えても一定期間飲む必要があり、リウマチ熱や腎炎などの合併症を防ぐためとされています[3]。
- 扁桃を取ると、免疫が弱くなりませんか?
-
学会は「扁桃があってもなくても免疫力にはほとんど差がない」と説明しています[3]。総説でも、一時的に免疫の指標の変化はみられるが臨床的には問題にならないとされています[1]。
- 手術をすれば、のどの痛みはなくなりますか?
-
手術すると「扁桃炎」は防げますが、のどの痛み全般への影響は予測しづらいとされています[7]。術後1年での効果はごく控えめとされ、重症のお子さんほど利益が期待できると報告されています[7]。利益とリスクをあわせて、専門医と相談して決めます。
- 口が開きにくく、つばが飲み込めません。どうすればよいですか?
-
扁桃周囲膿瘍などの重い病気のおそれがあります。その日のうちに、耳鼻咽喉科のある医療機関を受診してください[9]。よだれが止まらない、息を吸うときのゼーゼーや姿勢の異常が目立つときは、短時間で窒息にいたる可能性があるとされています[5]。これらのときや、けいれんしている、呼びかけに答えない、急に息が苦しいときは、迷わず119番です。
- 日曜・祝日でも、子どもの発熱を診てもらえますか?
-
はい。日曜・祝日も10時〜15時(昼休みなし)に発熱外来を行っています。予約は不要で、当日チェックインで受け付けます。10月25日(日)は休診です。日曜・祝日は一般外来と点滴は行っていません。
まとめ【回数と症状を記録し、専門医と相談を】
- 扁桃炎を繰り返すお子さんの手術適応に、日本で一つに決まった基準はない。発熱やのどの症状の回数を記録し、耳鼻咽喉科の専門医と相談して決める
- けいれんしている、呼びかけに答えない、急に息が苦しいときは119番
- つばが飲み込めない、口が開きにくい、食事がとれないほどのどの痛みは、その日のうちに受診を。扁桃周囲膿瘍(のうよう)のおそれがある
- 回数の目安はParadise基準(1年7回など)・日耳鼻の総説(1年3〜4回など)・学会Q&A(1〜2年に4〜5回/年)で異なる[1][2][3]
- 手術の効果は術後1年でごく控えめだが、重症のお子さんほど利益が期待できる。出血などのリスクとのバランスで専門医と相談する[7][8]
扁桃炎を繰り返すお子さんの手術適応は、回数だけで決められるものではありません。記録をもとに、耳鼻咽喉科の専門医と一緒に考えていきましょう。医療は私達におまかせください。
以上
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、医師による診察・診断・治療に代わるものではありません。記載内容は公開時点の医学的知見に基づいていますが、お一人おひとりの状態によって適切な対応は異なります。症状にご不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
参考文献
- 氷見徹夫, 高野賢一, 亀倉隆太, 山下恵司, 小笠原徳子, 坪松ちえ子. 扁桃・アデノイドの基礎知識と手術治療に関連する問題点 [第116回日本耳鼻咽喉科学会総会モーニングセミナー]. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2016;119(5):701-712. 参照 2026年10月. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/119/5/119_701/_pdf
- Mitchell RB, Archer SM, Ishman SL, Rosenfeld RM, Coles S, Finestone SA, et al. Clinical Practice Guideline: Tonsillectomy in Children (Update). Otolaryngol Head Neck Surg. 2019 Feb;160(1_suppl):S1-S42. doi:10.1177/0194599818801757 PMID: 30798778
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会. 慢性扁桃炎. 子どものみみ・はな・のどの病気. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=21
- Paradise JL, Bluestone CD, Bachman RZ, Colborn DK, Bernard BS, Taylor FH, et al. Efficacy of tonsillectomy for recurrent throat infection in severely affected children. Results of parallel randomized and nonrandomized clinical trials. N Engl J Med. 1984 Mar;310(11):674-83. doi:10.1056/NEJM198403153101102 PMID: 6700642
- 厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課. 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編. 厚生労働省ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001630903.pdf
- こども家庭庁. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)(2023年一部改訂)表9. こども家庭庁ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cd6e454e/20231010_policies_hoiku_25.pdf
- Burton MJ, Glasziou PP, Chong LY, Venekamp RP. Tonsillectomy or adenotonsillectomy versus non-surgical treatment for chronic/recurrent acute tonsillitis. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Nov;2014(11):CD001802. doi:10.1002/14651858.CD001802.pub3 PMID: 25407135
- Zhang X, Deng Q, Yang L, Yan M. Incidence and risk factors of pediatric post-tonsillectomy hemorrhage: a systematic review and meta-analysis. BMC Pediatr. 2026 Jul;26(1):1013. doi:10.1186/s12887-026-07353-w PMID: 42477597
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会. 口腔・咽頭の病気(急性扁桃炎/扁桃周囲膿瘍). 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ウェブサイト. 参照 2026年10月. https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=22
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